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待ちぼうけ。

なんだか久しぶりな気がする

………………凜のやつ、あたしを呼びつけておいてほったらかしとか、いったい何を考えてんだよ………………

お弁当をつつきながら、昨日のあいつと談笑する凛のことを眺める。………………なんだよ、楽しそうにしちゃって………………

「………………ん、これおいしい」

もぐもぐと唐揚げを頬張ると、隠れていた脂分が口の中に広がる。

(コンビニ弁当だとパッサパサかギットギトかのどっちかなのに、凛の弁当に入ってるのは冷めてもカリカリしてんな………………)

次はトマトにしようかな………………と手を伸ばすと、横からひょいっと手が伸びてきてプチトマトがさらわれる。

「あっ」

「ん〜おいしっ………………あ、アーちゃん、お弁当もらうけどいい?」

「あ、いいわよっ。………………でもシオンちゃんのことだから、許可する前にこっそり何かつまみ食いしてるんでしょ?」

「ちぇっ、バレたか」

そいつはプチトマトのヘタだけ返すと、次は玉子焼きに手を伸ばす。無論手づかみで。すかさず箸でガードしようとすると、

「ふふん、甘いよ?」

と、箸をかわされて玉子焼きを2~3切れ一気に持ってかれる。

「んっ〜、やっぱアーちゃんのつくる玉子焼き甘くておいしいっ」

………………玉子焼き全滅したんだけど? なんだこの10円玉。

「………………おい、ボクの分の玉子焼きなくなっちゃったんだけど?」

「あ、ゴメンね。いやー、アーちゃんのご飯美味しいからね。それに引き換えうちの茉莉花は………………」

ぶつぶつと何やら呟いて、更に唐揚げへと狙いを定めたらしきそいつの視線から弁当箱を取り上げる。

「あっ、ケチ」

「ケチって言うな。このまま行くとボクの弁当が無くなっちゃうじゃないか」

「え、それアーちゃんがつくったやつでしょ? ってことはアーちゃんのお弁当じゃないの?」

「そ、それは………………」

言われてみれば確かに………………で、でもこれは凛がボクのためにつくってくれたものだし………………

「ってことで、もーらいっ」

「あっ!?」

唐揚げさらわれた。しかも2つも………………

「………………よくも唐揚げ取りやがったな………………」

「別にいいじゃない、今日は茉莉花のバカがまーたどっかにナンパしに行っちゃって、お昼ご飯おごらせられなかったんだもん」

「おごらせる前提かよ………………」

なんだよこいつ………………

「………………あ、鈴芽ちゃーん、鈴芽ちゃんもこれ食べてみなよ、おいしいからっ」

今度は廊下にいた子を捕まえてきて、ボクの弁当を差し出す。

「あら、これは黒咲さんのお弁当………………じゃあこの煮豆を貰いますね。………………はむっ」

スズメちゃんとやらは、煮豆を少しだけ頬張ると、ほっぺたに手を当てて、

「お出汁も染みてておいしいですね、どうやって作ってるんでしょうか?」

「んー、そこにアーちゃん居るから聞いてみれば? 鈴芽ちゃんは将来龍一さんに料理作ってあげるんでしょ?」

「りゅ、龍一さんに、ご飯を………………/////」

一瞬でスズメちゃんが真っ赤になる。

「………………あぅぅ…………………ちょ、ちょっと作り方を聞いてきますね………………」

そう言うが早いか、その子も凛のところに話しかけに行く。

「………………凛って、人気者なんだな………………」

ぼそりと呟いたそのセリフに、ちょっとだけ胸が苦しくなる。

「そーね、アーちゃんは誰にでもやさしいし、なーんか包容力?みたいなのがすごいから、みんな集まってくるんだよねー」

「包容力、ねぇ………………」

残ったおかずをつつきながら凛のことを眺める。すると、

「あら、凛。教室に居たのね。」

ふと戸口に目を向けると、ちっこい子がぬいぐるみを抱っこして凛の方へと歩いていく。

「あ、レイちゃん。クーちゃん連れてきたの?」

「日向ぼっこの途中だったけどクーが飽きちゃったみたいなの。凛のところの子は?」

「クルミ? それともエレーナどっち?」

「どっちも。日向ぼっこしないの?」

「あの2人は大人しくしてるのニガテだからね。レイちゃんとこのほかの子は? 」

なーんて始まって、また凛の周りに人が増えていく。

「………………このままだと、お昼休み終わっちゃいそうだな」

そう呟くと、お弁当箱をまとめて凛のところに歩いていく。

「凛、ちょっといいか?」

「………………あ、ロッカ………………」

今思い出した、と言わんばかりの凛の顔を見て、なんだかふつふつと怒りが湧いてくる。

「………………あのさぁ、人を呼んでおいて放置って酷くない………………?」

「ごめんなさいね、忘れてたわ………………」

ぷちん。………………そっか、凛はボクのことなんて、どうだっていいんだね?

「………………ま、凛にはこれだけたくさんの『友達』が居るからね、ボク一人居なくたって気にならないよね。」

ふと口をついたその言葉に凛の表情が曇る。

「べ、別にそんなこと………………」

「いいよね、凛はそんなに構ってもらえて。………………ボクは凛ぐらいにしか構ってもらえないのに」

すらすらと口から出てくるその言葉に自分でも驚いてる。

「ろ、ロッカ………………?」

「………………凛のバカ」

お弁当箱を突き返すと、そのまま屋上階段の自分のアジトへと逃げ帰る。

なんでだか分からないけど、視界がさっきから歪みっぱなしで、なんだかほっぺたまで熱かった。

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