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とりあえず、異世界を救ってみた

作者: 碧月レンカ

誤字、脱字や変換ミスや、間違った使い方の言葉など見つけた人はお願いします。


~とりあえず、異世界を救ってみた~



「というわけなんです」じゃねぇよ…



いつもと変わらない日常。同じ日を繰り返しているようにも思える。

起きてはPCを起動させ、朝食を食べながらカタカタカタ…

そのままいつもなら夜を迎えていた。いつもなら。








パリーン!

窓ガラスが割れる音が部屋に響く。

なんだなんだ?と音がする方を向くとそこには…



天使のような羽が合計…3枚。本人から見て……左?

髪の色は黄色…?

服装は………ん?布?しかもボロボロ…まぁ、いかにも天使みたいな見た目。

でも、これでも神様だそうです。






「はぁ…」

「お願いします。」

土下座してきた。ゴツンと音がする。

いったぁ…と言いながら額を手で押さえる。

「まぁいいですけど、僕っていいことない気がするんですが…」

「わかった。願いを一つ聞くから。それでどう?」


ま、仕方ないか。僕しかできないらしいし。

このままだと宇宙消滅するらしいし。

お願い聞いてくれるらしいし。



「それで?どんな願いを叶えればいいんですか?」

「この話をなかったことにする!」

「えぇ!?」


もちろん冗談。こんな面白そうな話に乗らない手はない。

それがわかると「ほっ」と安心したようだ。


「そうだなぁ。じゃあ、『魔法を自由に使えるようにする』で」

「あっ、それは向こうならあると思いますよ?『魔法』がない世界ここだけですし…」

「アッ、ソウナンデスネ」

うーん、悩む。どうしようか。

悩んでいると、

「じゃあ一週間後にここに来ますので、その時までに考えといてくださいね」

そう言いながらそこだけ逆再生するかのように窓ガラスをなおした。

「じゃの~」と言いながら空に消えていった。


「うーん、どうしようか…」

そう言いながら、しばらく悩んでいた。









一週間後…

来てしまった、この日が。

とりあえず、部屋をきれいにしてからお茶とか冷やしておいた。

PCで何かないか見ていると、今人気のアニメが見てくれと言わんばかりに画面に出てきた。


「破壊の力…」

話は、突如、破壊の力を手にした主人公は、魔王を討伐すべく、魔王城に向かう。

その途中に出会う人たちと仲間になり、魔王を倒す。という話である。

「破壊か、ん?」

あ、これにしよう!



ピンポーン



「はーい」とドアを開ける。

「どうも。一週間ぶりですね。」

この人は神様である。突然人の窓を割る神様である。

とりあえず部屋に入れた。冷やしていたお茶をコップに注ぐ。

「決めたんですか?」

「えぇ。決めましたよ。ついさっき。」

そう言いながらお茶を注いだコップを神様の前に置く。




お茶を飲み終えると

「では、そろそろ叶えましょうか。あなたの願い。どんな願いなんです?」

「僕の願いは『創造の力』です。」

シーン…


「へ?『創造の力』?」

「あっ、無理ですか。無理ですよね。すいません。」

「いえいえいえいえ…そんなことはないですけど、能力ですか。わかりました。」


僕の頭の上に手を置くと、魔法陣らしきものが出てきた。

物凄い風が発生すると共に不思議な力が僕の中に入ってくるような感じがした。




終わった後、周りを見てみると…

「これは元に戻すのが大変そうだな…」









神様の話はこうだ。


宇宙消滅の可能性が出てきたので、それを食い止める。

なぜ俺なのかというと、別世界に行くときに体にダメージがあるらしく、耐えられるのは俺だけなんだそう。

消滅の原因を見つけ次第、止めるのだが、数えきれないほどの世界すべてに原因があるらしい。つまり、全世界に一度行く必要があるということになる。

お願いということで『創造の力』をもらったわけだが、もっと良いお願いしとけばよかったと思う。




「一応これを渡しておきますね。」

渡されたのは白…というか透明の丸い石。虹色も少し見えるこの石を三つほど手にあった。

「何ですかこれ?」

「この石を思いっきり地面に叩きつけると私がそこに呼び出される石だよ。助けが欲しいときがあるかもしれないから一応ね。」

あぁ…ま、適当にポケットの中にでも入れとくか

「いちいち私が異世界のゲート開くのも面倒だから、ついでに出来るようにしておいたし、準備できたら行ってね。」


そういって神様は、窓から出て行った。ドアから出て行ってくださいよ。






水なり食料なり集めてきた。とりあえずは一週間分。

どうすれば『「ゲート」って開くんだろ』ってあれこれやってたら開いた。

閉じるようにやっても閉じない。「アレ?」


いいや使っちゃえ。神様からもらった石、「神石」を叩きつける。

光とともに出てくる神様の姿があった。

「使うの早くない?」

「あぁ…わからないことがあって。異世界に行く『ゲート』ってどうやったら開いたり閉じたりするのかなって」

「あ、そういや忘れてたね。『ゲート』は、強く念じれば出てくるはず。逆に閉じるときは、閉じるように念じればできるよ」

試しに閉じるよう、念じてみた。

シュパッ…

おお。できた。

シュパッ…

お、開いた。慣れれば簡単だなこれ。

「じゃ、行ってきますね」

「アッハイ。イッテラッシャイ」


「ゲート」をくぐって足場があるのかわからない宇宙空間のようなところに出た。

とりあえず行くしかない。






どれぐらい歩いただろうか。もう足痛いです。はい。

「うおッ!眩しッ!」

光に飲み込まれた。もう次起きたときは着いていてほしい。そんなことを思いながら意識が飛んで行った







「んぉ?」

あれ、草?

ゴトッ

「ぁあ。ったあ」

背中が物凄い痛い。


どうやら木から落ちたみたい。

お?あれは町かな?ということはここは結構高いところになるな。

とりあえず町に行ってみるか。








町の門っぽいものが見えた。

ん?もしかして城壁みたいな壁の上に人がいる?

もしかして何かこっちに向けてる?銃じゃないよね?よね?

「誰だ?」

そんな声が町の外の平原に広がる。

両手をあげて

「旅の者です。入れてくれませんか?」

そういうと、門のシャッター|(?)が開く。|(というか上に上がっていく)

打たれることもなく町に入れた。銃だと思っていたのは杖だった。神さまが言ってた魔法を発動させる杖かな?





ん、あれは?

子ども?防具に剣やら盾やら持ってるけど、戦うのか?

ちょっと驚いたけど、ゲームとかで武器とか見てきたから普通にしていられたが…子どもが戦うのか…

ま、いっか。とりあえず宿屋探さないと…







えぇ…

宿屋、ないんですか…


どうするか……     あ、せっかくもらった力があるんなら試しに使ってみるか。










「なッ!こんなところにテントだと!誰だ!これを張ったのは!」

外がうるさい。

「はいはーい」

と、顔を出した。

すると、城壁で杖を持っていた人と同じ人が来た。でも声が違うから違う人なのか?団的な?

「貴様、こんなところでテントを張っていいと思っているのか!張るなら外で張れ!」

外。町の外。そんなとこでテントなんて張ってたら、モンスターに襲われると思うんですけど。というか、モンスターって呼び方なのかな。てか、そもそもモンスターなんていんのかな?でも城壁ってことは…


「早く出てけ!」

おっと、そうだった。えい。

とりあえず、創ったテントはうまく消えたな。しばらくは、創ったテントでいけそうかな。

城壁団|(自分で勝手に付けた)の人は消えたテントに驚いていたが、そんなことはどうでもいいと思う僕は、町の外へ歩き出した。



てくてくてくてく…




テント創って、


ベッド創って、


結界はtt…




あれ、結界はtt…


あrrrrrれええええぇぇぇぇぇeeeeeeee!?……




結界、張れない。ナンデ、ハレナイ。ナンデナンデ…


っく。結界が無理というのなら…!



周りに罠を創ったぁ

踏むとしびれるヤツ。





とりあえずはこれでいいか。



おっと、気が付けば夜だった。

ま、いいか。寝よ。ぉやすみー











朝。


起きたらとんでもねぇことになってた。

テントの外には…城壁団の皆様が。|(皆さまって言っても大勢なだけ)

「お前か、物を消したというのは。」

一周グルッと魔法使いさんがいるが、「お前王様だろ」ってヤツが一人。

「こ、コイツです。間違いありません!」

どうやっても勝てないだろうと判断した僕は仕掛けておいた罠すべてを解除した。|(消した)

「…!?」

「や、やっぱり…」

周りがざわざわと…

「えと…あなたは…」

「貴様、この方も知らんのか!?」

「ふざけているのか!この方と会えて光栄にも思わんのか!このクソが!」

クソって。どうやら『この方』は知っていて当然の人らしい。城壁があるって言っても王宮があるってぐらい町は広くないし、そこまで栄えているわけでもないし…


「この方はここら一帯を統括していらっしゃる方だ」

統括?てことはこの人のいる王都が中心だから…

「わざわざ王都からここまで来てくださったのだ。光栄に思え」

「はぁ…」

ふむ、いろんな情報を知りたければ王都に行けばだいたいわかると…

「物を消すその力は危険だ。なので王都で管理させていただく。」


そう王様は言うと拘束魔法で腕を縛られた。これさ…絶対勘違いだよね。

俺は物を消したんじゃなくて、創ったものを元に戻しただけなんだけど。



そういや神様こんなこと言ってたっけ…

「創造の力は、万物を創り出すことができる力です。神である私にでさえ、その力の使用は禁止されています。万能な力ではありますが、それゆえ、制限があります。神の私は基本、どんなものでも創れますが、人間のあなたは創れる数や能力が付与されたものなどが創れないことがあります。そんなときは今まで創ったものを消してみてください。簡単に言うなら、2Lの水をそれぞれのコップに少しずつ入れていたけど、一部戻す。そんなイメージでしょうか。」


…そんなこと言ってたっけ。






とりあえず、連れていかれるままだった。

抵抗はせず、言われた通り、グリフォンのような見た目の生き物に乗って空を飛んだ。

物凄い速度で空を飛んでいた…







「…んぁ」

気が付けば王宮らしきところに着いていた。なお、拘束魔法はまだ発動中。

そのまま直進して、王宮の…ドア?門?を開けて右の廊下をまっすぐ行って…




…牢屋らしきところに着いた。

錠がいくつもある…一つずつ開けていって…

「!?…穴!?」



驚いている暇も与えてくれず、そのまま蹴り落された。









「…ん」

あれ…家?

「僕は…落とされたはず…」

「気が付きましたか…」

そう言われた。


声がした方を見ると、痩せた女の子がいた。

身長が低い。痩せてる。ぱっと見、そう思った。

「空から落ちてきたんですよ?…大丈夫ですか?」

「空?あれは天井ですよ?」

女の子は驚いた顔をしていた。

「まさか、あれが空だと思ってたんですか?」

「ち、違うの…?」

え。マジであれ空だと思ってたの?あれってレンガだよね。窓?から見てもわかるぐらいあるからな。多分、全面にあるよね。

ついでに言うと、光源が天井から出てるライトって…


「違いますよ。…助けてもらったお礼として、いつか本当の空を見せてあげますよ。」

「ぜ、絶対ですよ?」

「はい、いつか」

そんな約束をしていたら…








ドゴオオォォォォォォオン!!

大きな轟音とともに土煙が辺り一帯に広がった。

「…なんだ?」

外をのぞくと巨大な竜がいた。


「…な、なんだ…これ…」

この時分かったが、ここは大きな村っぽいところらしい。

「グオォォォォォォォォオ!」

竜の咆哮に村の皆は耳を塞いでいる。

あいつを何とかしなければ…

「あの!……えと、名前は…」

「え?私ですか?名前は…ありま…せん。」

え。じゃあどうしよう。うーん。

「じゃあ。『ノア』!それがあなたの名前だ!」

なんとなく、勝手に決めちゃったけど、僕がつけちゃってよかったかな…

「ノア…ノア!…ありがとうございます。私に名前をくれて。私、名前が欲しかったんです!」

笑顔だった。よかった。…じゃない!

「ノア…さん?ちょっとお願い。住民の皆を非難させてほしい。できれば、あの竜から遠ざけてほしい…です。」

「りょ、了解です。でも、あなたは…?」

「僕はあいつを倒す。でも、全員を守りきれないと思います。」

当たり前だ。一人で死人を出さずになんて無理だ。

「絶対、帰ってきてくださいね。」

それに答えず、あの竜に向かって走り出した。







「…あ、名前聞くの、忘れた…」












…くッ。かなりでかい。

だいたい3~4mぐらいか。それでも、高さに余裕ありすぎる天井は……10mぐらい?


あの竜は口から火を吐いたりして村を燃やそうとしている。

? あれはなんだ?腹辺りに何かの球体が…

「グオオォォォォォォォォオオ!」

うお!?危なッ!家を手で破壊して木材をこっちまで飛ばしてきた。走りながらだったけど、反応できた。

「グオォォォァァァア!」

ん?次はなんだ?

「グルウゥゥゥゥ」

ま、魔法陣!?まさか!

「グアァァァァァァアア!」

黒紫っぽい魔法陣から、いかにも闇属性です~っていう紫の雷が打ち出された。

「くっ…!」

とりあえず逃げて作戦を立てよう。

竜を中心に走って隠れた。



……どうすれば…

「グァァァァア!」

竜の上にいくつかの赤い魔法陣…火属性!?まさか!?



ドゴォォォォォン!

爆発音とともに、周りの物はすべて吹っ飛んだ。


もうこうなれば、やるしかない。

「我が求めるは、竜を断つ大剣!我が創造するは、解放の大剣!来いっ!」

手のひらを限界まで開けて、その手を全力で高く上げて、そんなことを言っていた。

天から一瞬にして大剣は落ちてきた。

その剣の柄の部分あたりにLiberazioneと筆記体で浮かんで出てきた。


「リベラツィオーネ?」







別世界に行くのなら、敵に遭遇するだろうということで、神様が「神器」を一本やるということで、いくつかしかないところから、一本もらった。

神様だからなのか、神器はいくつでも出せるそうだが、僕は一本だけだという。


神器には番号が振られているらしい。

1~13、15~90まであり、それぞれの神器には能力がついている。


とりあえず言われた通り、神器召喚の言葉を言ったけど…




「これ、何番だ?」

「ゴグァァァァァア!」

気づいた時には、魔法陣を展開させ、今、発動させようという時だった。

このままでは、死ぬ!

もう駄目だと思った。

その魔法陣からは紫電が紫の矢に変化し、何故かスローモーションで矢は死へのゴールを運んでくる。

矢は普通の矢だ。だが、回避できない。これを喰らえば死ぬだろう。

記念すべき初戦闘で死ぬなんて…もうここまでか…


キィィィィィインッ!!

召喚した神器から、バリアが出てきて、紫電の矢を弾き返した。

「え…?」

いかんいかん。ぼーっとしとる暇はない。召喚した神器、「リベラツィオーネ」?を地面から抜き、ダッシュで竜に向かった。

「グゴアァァァァア!」

また矢を出してくるか。次もこいつが守ってくれるとは思えない。今なら避けられる。

発射された三本の矢をすべギリギリで回避し、そのまま走った。

「うおおおおおお!これでも…喰らえッ!」

ジャンプし、竜の腹辺りにある赤い球体を攻撃した。


パキン!


その球体は縦に亀裂が入り、真っ二つになった。

周りに展開していた魔法陣すべてにも亀裂が入り、砕け散った。


勝てる!

地を蹴り、竜の腹を踏み台にして…


「ゴアァァァァアアアアッ!」

高い声の断末魔の叫びが、村中に響き渡った。


竜の首を切り、頭と体の二つになったので、復活するということはないだろう。


ノアが緑色の本を持ちながら、こっちに走ってきた。

「はぁ…はぁ…。倒せたん…ですね…」

「まぁ、何とか…この剣がなかったら、死んでたけどね。」

にしても、この地下牢獄?の町に、竜が出てきて爆発やら咆哮やら騒がしかったのに、なんの反応もなし…か。これはあの王様|(笑)がやったと見てもいいかもしれないな。

「どうしたんですか?上を見上げて…?」

ハッ…!見上げてた!気が付かなかった。

「住民の人たちはどう?」

「とりあえずは大丈夫です。どうします?」

「ああ。今は安全だ。この竜をどうするかは任せるとして…」

僕は壊滅した村の方を見た。それがわかるとノアも僕と同じ方を見た。

「あー。まず、村の復興が先ですね。」

「だね。」

こうして僕の記念すべき初戦闘は、勝利に終わった。

だが、これで終わりということではない。ここに来た目的。宇宙消滅の原因を探し、消滅を止める。これが、何者かによるものであれば簡単に解決する。諸悪の根源さえ倒せば、すべて解決する。それを探すためにもまず、この世界の原因を探さねばならない。









あれから数日後…

村の皆さんで、再利用可能な木材を集めて体育館ぐらいの建物の建設を計画していた。

家が残っている人と、何一つ残らず、帰る家がない人がいる。

そんな人のためにも、寝るところぐらいは建てなきゃいけない。


神様からもらった力、「創造の力」では、そこに永久に存在することはできない。

前にも言った通り、親の器である僕から、子の器に具現化するイメージを注ぐのだが、それには限界があり、限界に達すると、具現化できなくなる。

また、神様はこんなことも言っていた。

「具現化したものを、そこに完全に存在させることができます。曖昧の存在を完全にさせるということです。ただし、具現化の上限がさらに低くなります。…そうですね、あなたの世界の「げーむ」というもので例えるなら、MP100/100ならば、90/90になるということです。いざ!という時のみ、これを使うことをお勧めします。」


こんなこと…ということでもないけど、完全具現させるようなことでもないからな。


ノアも指示班として加わっている。僕は企画班として復興の手伝いをしている。

想定外のことに対しては、こっちが指示することになっている。


「ノア。こいつはどうする?」

村の人がノアに聞いたようだ。僕は今、大きめのテントの中で企画班の皆と案を出し合っている。竜を討伐した場所を拠点にしている。聞こえるってことは、ノアもこの近くにいるな。

「えっと…それはこっちです。」

そう答えるノア。村の皆にも「ノア」という名前で伝わっていて、僕がなぜこんなところにいるのか、どこから来たのか、何があったのか、すべて話した。|(能力のことはノアも含めて話していない。)

全員が信用してくれたと思っていない。だが、少なくとも、今は僕中心に進んでいる。


全員に話したときに大変なことが分かった。

実は自分の名前がわからなかった。


皆からは「企画者さん」と呼ばれる。人によっては違う人もいるが。


この村は地上世界のゴミ、廃棄物が年に一度ここにまとめて落とされる。

だが、ここの人からしたら、貴重な資源が降ってくるということらしい。

ノアの首からはペンダントが下げられていたが、あれも前回の廃棄物の投下のときに手に入れたという。ノアが研究しているという魔法の本もその時に。


僕も魔法を使いたいと言ったのだが、どうやらその本には、その属性に対応する魔法石が必要だとのこと。僕は文字が読めなかったのでノアに翻訳してもらったが、教えてもらったということではないので合っているかは分からない。




…とまあ、こうして順調に進んでいたのだが…

「王がお呼びだ。」

こうして、あとはノアを含める皆に任せることになったのだ。

丁度、言いたいこともあるので、そいつらの言うことを聞いておいた。


~玉座の間~

「貴様は我らの黒竜、一型を倒したそうだな。」

「ええ。こいつが出なければ、きっと僕は死んでいたでしょう。」

そう言いながら、背負っている「リベラツィオーネ」を見せた。

何だこれは…と周りがつぶやき始めた。

「ほう?そのような剣はなかったはずだが?」

「それは魔法ですよ。」

「異次元に保存する魔法など聞いたことはないが?」

…静かになった。



「まぁいい。貴様が倒した黒竜は『黒竜:改一型』。召喚した黒竜に魔法石を埋め込み、暴走薬を飲ませたものだ。だが、あれは一型。あの程度だ。」

あの竜はこの国が改良した竜で、一番目に完成した竜ということだ。

あれを兵として、使うということだろう。国があるということは当然、敵国もいるはず。

「それだけか?」

「いや、君には頼みがある。あの竜は、テストだ。そして見事合格した。あれを倒せないようでは頼めんからな。」

「もし、僕が死んでいたら?」

「それはその時。こんなことで死ぬならばその程度だったということだろう。」


こいつ…っ!


…おっと。怒りに任せてはいけない。落ち着け。

「それで頼みなのだが、我が国は困っている。貴様の『消す能力』を借りたい。」

「断る…と言ったら?」

「力ずくだ。」

そういうと、周りの者が構えた。


もしかしたら、本来の目的である『宇宙消滅の原因』かもしれない。という考えが脳裏をよぎった。


「…わかったよ。…だが、いくつかの条件をのんでもらう。」

「その一、下にいるものたちを解放しろ。全員だ。」

下にいるもの。ノア達のことだ。助けてもらったのだ。それに、約束もしたしな。

「…わかった。第一牢獄にいるものを解放してこい。」

そう王が言うと、「了解しました。」と言って、二人ほど行ってしまった。

第一牢獄?つまり、あれに似たやつがいくつかあるのか?

「…その二だ、この国について詳しく教えてほしい。まずはこの国について知らないといけないからな。」

「よかろう。こちらとしても知っておいてもらう方が、よいだろうからな。」

そういうと、王は立ち上がり…


「この国の名は『プラテリア』。原野に唯一存在する大国だ。」

そして大体のことを教えてもらった。

「…なるほど」

「では、こちらの頼みも聞いてもらおう。」


王の頼みはこんな話だった。

この国『プラテリア』の隣の国、『デザルト』国がある一国の攻撃を受けた。

その国の名は、魔王国『フィーネ』。未確認生物の攻撃との噂が流れている。

で、頼みはフィーネ国への偵察・攻撃。できるのであれば、消してほしいと頼まれた。

つまりは、国王を倒せばいいわけだ。ただし、フィーネ国があるのはデザルトの向こう、

『魔領域』の中心にあるらしい。魔領域には、森の中で、魔物が多く住んでおり、魔領域特有の霧があり、先が見えない程、視界が悪く、それを吸い込むと、耐性がない者は魔法では解除できない猛毒に襲われる。

その霧を、『死の霧』と呼んでいるらしい。

魔王国『フィーネ』…長い旅になりそうだ。



ノアは解放された。そこにいた者たちも、「あの努力はなんだったんだ」と言いながらも嬉しそうにしていた。


「あの、ありがとうございます。…これが、空…」

そう言って、ノアは見上げた。

「そういや、僕は王様のお願いでこの国から出ることになったから。」

そう言うと、ノアは驚いた顔をしていた。

「じゃ、じゃぁ。私も連れてってください…。」

「えぇっ!」

『死の霧』を知らないのかな…

「行き先は『フィーネ』って国で、その前には『死の霧』っていうのがあるんだよ!?それに危険だ。」

「大丈夫です。」

そういうと、首から下げてあったペンダントを出して

「このペンダントが私を守ってくれると思います。お父さんが必死に守ってくれた、このペンダントが」

ノアはそのペンダントを抱きしめた。

そのペンダントには、いろんな思いがあるのかもしれないな。

「…わかった。でも、危ないと思ったら…どうしようもないか。」

「危なくなったら逃げます」

そういってノアは敬礼した。

その時の顔が面白かった。

「魔法も初級魔法なら使えますし、大丈夫です。」

「ん?魔法石は?」

「それがわからないんですよ。魔法石が無いのに発動できたんです。」

ふーむ。謎だな。

「じゃ、出発しようか…と言いたいところだけど…」

僕はノアの服を見た。

「へ?」





うん。これが一番似合ってるな。

動きやすい服で、なるべく軽くて可愛い服。

ベースが白色の服で、少しお嬢様っぽい服にしてみた。

「おぉ…おおぉ…!」

とても喜んでくれているようだ。よかった。

じゃあ僕も変えようかな…


あっちで着ていた服だと流石に目立つと思った。|(今更)

黒色をベースに、白色の線が入っているカッコいいマント並に長い服を買っといた。


「じゃあ、準備万端。さぁいこう!」

「えーっと…暗いですね…」

「あ…夜か…」


…そうして二人はテントで夜を過ごした。


ちなみに、代金は王様がくれた小遣いから出した。










「まずは砂漠の国『デザルト』へ向けて出発だ。」

「はーい」

「おー」


…ん?今二人返事しなかったか?気のせいか…

「デザルトまでは遠いから馬…いや、ここは…」

馬より速いもの…






「完成―!」

創ったのは車。スポーツカー。馬より断然速いよね。

「なんですか?これ?」

当たり前だけど、ここの世界の人は車なんてものは知らない。ましてや地下で育った人が知るわけがない。

「これは車って言って、馬より速いんだ。僕たちはグリフォンなんて出せないからね。」

「へぇ~」

ノアは車に興味深々だ。

「じゃあ行こう!」

免許とか無いけどいいよね。別世界だからいいよね。ね?






走って三時間…

「すごいですね…景色がこっちにくるみたい…」

確かに。僕もスポーツカーなんて乗ったこともないから、なんか慣れない。


いくつか小さな町はあったものの、基本何もない平原が続く。

そういや、牛みたいな生き物の群れが、大移動してたな。車の隣を猛スピードで走ってたな。


運転はレーシングゲームの感覚と、昔、よくやってたゴーカートの操作で何とかできてる。




走り始めて五時間……

「そろそろ休憩しませんか…?」

「う、うん…。そうだね…」

そろそろきつくなってきた。いくら一台しか走らないといっても、休憩なしではまずい。


お…。丁度町があった。小さいけど、休むには十分。



流石に車をそのまま残しとくわけにもいかないか…



「…おぉ…車って消えるんですね!」

「普通の車は消えないよ…」



「じゃぁここで待ち合わせで」

「はーい」


ノアには、一時間後に車を止めたところで待ち合わせをした。

迷子でも大丈夫なように、待ち合わせ場所の方角を指すコンパスを渡した。


これも見たことがない…どこから出したの?と聞かれたけど、まだ能力のことは明かしていない。






「さて…と」

僕は僕で情報収集しないとな…

「あの…」

果物を売っている年をとった爺さんに聞いた。

「おや…見ない顔だね。どうしたんだい?」

「デザルトっていう国まであと、どれくらいかわかりますか?」

「そうだねぇ……大体…24000lu(ルンゲッツァ)ぐらいかなぁ…


ルンゲッツァ?聞いたことないな。

とりあえず1m定規を出して聞いた。

「1luってどれぐらいですか?」

「そんなことも知らんのか?そうじゃのう…これをあと二本出してみぃ…」

言われた通り、二本、複製を出した。

「このあたりじゃ。」

そう指を指したところは

「えーと… 2.53m?」

「なんじゃ?めぇーとるというのは?」

めぇーとるじゃないですメートルです。


てことは、24000×2.53で…えーと…



、、


、、、




あーもう面倒くさい!地面に式書いちゃえ!






なぜ今まで気づかなかった?




地面が砂漠の砂だということに。







ま、そんなことは置いといて。


答は出た。60,720。

約60kmぐらいか。


「な、なんじゃ。その文字は… そういえば、先ほどの長細い板にもそんな文字がかいてあったの。」

「これは数字です。これは…リンゴ?」

売ってあった赤い果実にいつもの感覚で手を伸ばしたが、よく見るとこれはリンゴではない。

「これは『レィームド』と言っての。ここらでは採れんのだが、ここ以外の場所ならば何処でも採れるじゃろう。」

へー、レィームドっていうのか。覚えておこう。





「あ、このお金って使えますか?」

「おお。もちろんじゃよ。」

「じゃぁレィームド二つ。」

「28ワルドじゃ」


ありがとうございます。と言って僕は去った。

王様からもらったのは3000ワルド。

僕とノアの服で700ワルド払い、今ので28ワルド。

残りは…


そう計算していると…


ドッ…


「痛ッてぇなぁ!」

「おい!テメェ、どうしてくれんだよ!」

まずいのにぶつかってしまった。どんな世界にもこんなヤツっているんだな。

「こっち来いッ!」

そういうと服を引っ張られた。暗い路地裏に連れていかれた。いかにも暴力をしそうなところだな、ここ。

「どうすんだぁ。この野郎…」

ナイフを見せながら言ってくる。かといって、剣を創って殺すとなると、悪いのはこっちだ。どうするか…


「どうすんだよこの野郎!」

怒鳴って脅してくる。でも、元の世界で引きこもりだった僕は、よくいじめられていた。

だからこんなのには慣れている。慣れちゃダメなやつだけど。

「いい加減にしろよ!」

握っていたナイフをわざと外して刺してきた。壁とはいえ、若干刺さっているぐらい鋭い。こりゃ刺さったらタダじゃすまないな。

「次はねぇぜ。俺は知ってるんだよ。さっき、爺さんのとこで払ってるのを見てたんだ。そん時おまえの袋には少なくともあと、2000ワルドはあるだろ。出せよ。さぁ、出せよ!」

また怒鳴って脅してくる。

「出さねぇってんなら!」

「!?」

やばい!このルートは腹に刺さる!

こんなところで死ねるかッ!


!?

しまった!?後ろが壁でリベラツィオーネが出せない!?


|(こんなところでいいのですか?マスター。)

どこからだ?


その時には、僕のリベラツィオーネを片手に、ナイフを弾き返した女の子の姿があった。

「すいません、マスター。私の判断で守らせていただきました。」

な、なんだこの子は?

僕ですら、片手では持てないというのにこの子は、片手で?

しかも、後ろは壁だったというのに、どうやって?

「君は…誰だ?」

「マスター、まず、こいつをどうにかすべきでは?」

そういわれると、目の前で怯えている人の姿があった。

「お…覚えとけよーッ!」

お前は敵キャラかよ…




「さぁ、君のことについて詳しく聞かせてもらおうか。」

「はい。マスター。では…」

「待った。まずマスターってのはなんだ?」

あ… まずかったかな… ここは待ったを使うべきではなかった。ジト目でこっちを見てくる。


「…マスター。人の話は最後まで聞きましょう。」

「は、はい…。」

ナンデオコラレテンノ、オレ…


「私は『リベラツィオーネ』です。マスター。今まで剣としてすべて見てきています。」

「え…じゃあ、あの黒竜の時から?」

「はい。あの時呼ばれたので、召喚されました。…というより、その時創られました。」

ん?創られた?

「なぁ。君って何番なんだ?」

神器No(ナンバー)ですか?私は14番です。」

えーと…ちょっとまって?確か1~13、15~90じゃなかったか?

「14番なんて神様から聞いてないんだが…」

「おそらく、それは私が開発中止になったのが原因だと思います。私の能力、『解放(エマンシペイション)』は当時、非常に開発が困難でした。『ありとあらゆるものの解放』は対象の物へシンクロし、その物の『重力の解放』、また、それが生物であれば『魂の解放』、『力の解放』などができます。」


魂の解放は、その者の魂を奪うというか、肉体という檻から出すということだろう。

力の解放は、その者の力の上限を突破するということだな。限界突破ってことだろう。

重力の解放は、その物質に掛かる重力がなくなるということだな。でも、宇宙空間とは違って死ぬわけじゃない。酸素はそこにある。


「ふむ。使い方によっては人の命を奪いかねない能力か。」

「はい。」

おっと、聞きたいのはそっちじゃなかった。

「話を戻すけど、創られたって僕が創ったの?」

「はい。一部は…ですけど。未完成の私は、半分しかありませんでした。半分のまま保管され、今まで放置されていました。」

「その半分は僕が?でも、それだと解除できちゃうんじゃ…」

「それは私が無効化していますので」

そんなこともできるのか…

…さっきからこんな話し方だけど、僕の前にいる『リベラツィオーネ』は小さな女の子で、小学生ぐらいに見える。小さいというのも、ノアより小さい。ノアは3~4cmぐらいの差だが、リベラツィオーネとの差は…20cmぐらい?もっとある?


「マスター。何を考えているのですか?」

「あぁ。身長の差について…ていうか『マスター』っていうのやめろ。」

「では、何とお呼びすれば?」

うぐ…。確かに…。僕に名前が無いのをこいつは知ってるんだっけ…。


「では、『クレア』というのはどうでしょう?」

「えー。なんか女の子っぽい名前じゃない?」

「この『クレア』は、あなたの世界の『ふらんす語』の『クレアシオン』から来ています。『いたりあ語』の『クレアツィオーネ』の方が、男の人っぽい感じではありますが、私と同じになってしまいますので、兄妹と勘違いされると思います。」


確かに、勘違いされると面倒があるかもしれない…

でも、ノアに言う時はこっちの方が…

「じゃあもう『クレアシオン』でいいよ。でも、そのままだと『クレアシオン』全体が名前に思われるから…」

そういって僕は地面に文字を書いた。



クレア・梓煌(シオン)



「これは漢字ですか?」

「う、うん。そうだ、よ」

こっそり元の世界から携帯をとりだして検索したなんて言えない。


「リベラツィオーネって名前も長くない?」

「え?」

うーん…思いつかない…

「リベラ・ツィオーネ。リベラとツィオーネで分ければいい感じじゃない?」

「『リベラ』ですか?」

「剣の時は『リベラツィオーネ』の方がいいと思うよ?かっこよくするなら…」


自分の名前の下に書いた。



解放剣(リベラツィオーネ)



なんか…厨二っぽくなった…


「じゃ、じゃあ今の状態の時は『リベラ』で…」

「はい。まs…クレア」







「ええぇぇええええ!?」

「そんなに驚くな…」

「だ、だって… 元々剣だったんでしょ?どんな魔法を使えばこんな…」

魔法じゃないです。植物の人がいてたまるか。

「これからよろしくお願いします。ノアさん」

「うん。お願いね。リベラ!」

なんか二人だけで話してそうだな…






「あ、そうだ。僕、名前決まったから。」

「うん、アトデネー」

「えー…」








「お…見えてきた」

三人で車に乗り、砂漠の国『デザルト』が見えてきた。

「アレがデザルトかー」

そうノアが顔を出してくる。

「ノアさん。座っておかないと危険です。」

「はーい!」

ホントだよ… 段差で飛ぶかもしれないからな。




~砂漠の国『デザルト』~


門ですら砂で出来ている。砂岩かな?


少し遠いところで能力解除。不完全な存在:車の存在を完全に消去する。



「暑いー…」

「少しぐらい我慢してくださいよ…」

まったく… そういえばデザルトに住む人はこの暑さをどう乗り切ってるんだろ…


「フレッド!」

ノアの伸ばしたての先には、水色の魔法陣。

「ほー…」

「丁度いい温度になりましたね、ノアさん」

二人だけ!?ずるい!


「くそう!フレッド!フレッド!」

「クレア。魔法石なしではできませんよ。」

くっそおおおおおおおおおう!!!



「お、門がくっきり見えてきたよー」

「あー…あづぅぅぅぅいー」

「クレア。あともう少しです。頑張ってください。」

あづぅい。ずがれだ。やずまぜで。


バタッ…


「っもう。しょうがないなー。フレッド」

あぁー。よみがえるー。適温だー。

「よし。門を開けてもらおう。」

「復活早いですね…」




「すいませーん。門開けてくださーい。」

「む?敵襲―ッ!敵襲―ッ!」

ンな!?敵襲?もしかして、もしかしなくても…だな…


「一斉射撃!」

「フォーコ!」

最初のプラテリアの時とは違って攻撃してくんのかよ!

皆、前転で回避した。敵は今のところ4、5人。いけるか。いや…




「皆、両手を上げろ。」

「降参するのですか?クレア。」

「いいから。今は倒すことが目的じゃない。」

そういうと皆、ゆっくり両手を上げた。

デザルトの魔導士はお互いを見合って数名、杖をこちらに向けながら近づいてくる。

「アッフェッラーレ」

プラテリアの時と同じ拘束魔法で捕まえてきた。

今回も同じく抵抗しない。

「ついてこい」

はいはい。ついていけばいいんでしょ?分かりましたよ。





王宮とは違うけど、同じぐらいでかい建物だな。



砂で出来た椅子に座らせるデザルト魔導士。

「さぁ、お前は黒幕の手先だな?」

「いいえ。勘違いはよくないですよ。」

「嘘をつけ!国が弱ってるところを狙ってきたんだろう!」

あー、そういうこと。

「えーと、僕はプラテリアの国王に頼まれてきました。砂漠の国『デザルト』を攻撃した魔王国『フィーネ』への偵察と攻撃です。フィーネの戦力を無力化できればいいといわれました。で、今はそのフィーネに向かう途中です。」


しばらくデザルトの魔導士が黙る。


「……そうか…。すまなかった。」

「何かあったんですか?」

「ああ。フィーネの攻撃で家の妹をかばった母が重傷でな。今も病院で寝たきりだ。まったく、魔導士とあろう者が守れなかったとはな。」

そう言って拳を強く握っていた。

「他人から見たらひとりの人でも、自分からみたら命に代えても守りたい。でも、その他人だって守りたい人はいる。守りたいのは人だけではない。国を一番大事に思っていた人もいるかもしれません。だから、皆で力を合わせないといけないんです。」

「そうだな。みんなで力を合わせ、フィーネを滅ぼそう!」

滅ぼす…か。

一人の思いで国をつぶしていいのだろうか。そのフィーネにだって同じ思いだった人もいるはず。この世界にどんな歴史があったのかは知らない。知らないが、お互いに安心して暮らせる。それが本当の平和ではないだろうか。…そう思った。




「俺たちの分まで頼むぞー!」

あの魔導士さんがそういって見送ってくれた。

その思いにこたえるためにも、まずは情報収集からだ。




僕は一人で、向こうはノア・リベラで行動することになった。|(また一人かよ)


そうして、



何人にも聞いて、



集まった情報は、




「これだけか…」



『一、相手は千を超える大軍

『二、相手は人でもなく魔人でもない

『三、相手には意思を感じられない

『四、相手は空を飛ぶ種もいれば、剣を持った種もいる』

こんなもんか…




魔人とは…

フィーネの人種は100%『魔人』で、魔人といっても化物ではない。身長も人と同じで、見た目の違いは種類にもよるが、角があったり、羽があったりする。

元は、魔物で数億年前、魔物が人並みの知能を手に入れたのではないかと言われているらしい。




でも、人並みの知能があるなら、感情もあるはず…

喜び、悲しみ、驚き、感謝… わかるはずだ… それとも僕の妄想?





「クレア。千を超える相手にどう立ち向かいますか?」

「千対三か… 正直無理だな…」




ザッ…




「お前か?このデザルトまで来た『フィーネを倒す』とか言ってるやつらは?」

「誰だ?」

緑の服… カウボーイな見た目。

帽子は前後に長く、目が見えない。

年は、三十…いや四十ぐらいか?


「一度、手合わせ願えるか?」

なんだ急に?手合わせ?まあいいや。

「いいよ。おじさん。ルールは?」

「殺せる手前まで来た方の勝ちだ。」

OK。勝てるな…

「リベラ。」

「はい。」

リベラが返事すると大剣になり、僕の伸ばした左手にすっぽりはまった。

「このコインが地面に付いたら試合開始だ。」


ピーンと音をたてて、回転しながら上昇する。


サッ…


「ッ!」

地面に落ちたと同時に撃ってきた。

「遅い!」


パーン!


銃声とともに弾丸が向かってくる。

僕は砂の壁を創りあげた。

「何!?」

できた隙を逃さず、その壁を消して、リベラツィオーネで切りかかった。

「いない?」


「クレア!上!」

上を見上げると、銃口を向けたおじさんが空をいた。待っていたといわんばかりに。

「勝ったな…」


パァーン…



トン… と着地した音が聞こえた。

「『解放(エマンシペイション)』力の解放!」


砂の下にいた僕には気づかなかったようだ。

「何ぃ!」




決着がついた。

結果はドロー。引き分けだ。


こっちは相手の首の前まで剣を持ってこれた。

相手は銃口をこっちの顔まで持ってこれた。


どっちも殺せる。引き分けだ。



「ふっ…。いい試合だった。」

「すごい反応速度ですね。あの間に銃を向けられるなんて。…もしかして、気づいてました?」

「それはないさ…。君こそ、あの一瞬で隠れられたな。」

試合終わり、二人で話し合っていた。


「そうだ、俺はソルダート。『ソル』でいい。」

「クレア・梓煌です。クレアでいいですよ。」


ほんの一瞬の試合で仲良くなった。だが、この出会いは無駄ではないことを、クレアは知らない。





「そういや、クレアはフィーネに行くんだったな。」

「うん。そうだけど…」

「俺も連れてってくれないだろうか…」

うん。ソルはいいやつだと、話していてわかる。

「もちろんいいよ。…というか、こっちからお願いしたいな。」

「そうか。ありがとう。こいつは助かる。」

「ん?どういうこと?」


「なに… こっちも頼まれてね… 人数は多い方がいいからな」

そういうこと。ソルも僕らと同じってわけか。







「ここ。デザルトからフィーネまではだいたい『1530mi(ミッレ)』。1530000luぐらいだな。」

…え?153まん?


1530000×2.53…


計算中… 計算中…



3870.9km!?




「マジ…かよ…」

「そんなもんだろ。国から国に行くんだ。それに、デザルトの町はここだけじゃない。プラテリアのところだってそうだろ?あそこは町というか村だがな…」


「地下にも村があることは知ってるの?」

ノアがソルに聞いた。丁度、僕も聞きたかったところだった。

「は?地下に村?…あぁ、確かにプラテリアは人を捕まえてると聞いたことはあるが、噂では、実験の材料として使われたりって話だったな。」

どうやら他国には詳しくは知られてないらしい。…にしても実験材料か。別の道もあったから…ありえるな…




「おっと。話してる場合じゃねぇな。早く出発しようぜ。」

「そうだな。」

そういって、三人と一体の神器の旅が始まる。










|(クレア。よいのですか?この『ソルダート』という男を簡単に信用しすぎでは?)

|(大丈夫だよリベラ。もし敵なら、その時倒すさ。)

(……)


デザルトに来た時同様、『創造(クレアシオン)』で車を創った。

ソルは上級魔法、『クレアーレ』とは違うのか?と言っていたが、魔法とは少し違い、魔法石なしで発動できるから、これは僕だけの能力だろうと言っておいた。ちなみに、ノアはクレアーレを知らないと言っていた。



キエァァァァァァァァア!


ドォォォン!


「さすがソルさんですね。」

ソルが撃った弾は計算されたかのように、リザードの眼球に当たった。


キシャァァァァァァァァア!!


運転している僕は何もできないので、ノア、ソルに攻撃を任せている。



「ちなみにクレア。『死の霧』はどうするつもりだ?」

「あー。まだ考えてないなー。」

「ねぇソル。死の霧って何?」

そういやノアは知らないんだっけ?

「知らないのか?『死の霧』は魔領域という魔物が特に多く潜むところだ。フィーネはその魔領域の中にある。」

「ふーん。でもフィーネの人たちは攻撃されないんだ。」

「あぁ。何しろフィーネの国民は全員魔人だからな。知能を持った魔物。俺たちと同じ人間クラスの知能だ。それが敵なのだから、かなりの戦力が必要だと思うな。」

うーん。そうだろうか。確かやらなきゃ、やられる。でも、全員敵と思うのは違う気が…


ドゴオオォォォォォォオン!


砲撃!?どこから?


「クソッ!くるまが使い物にならなくなった!」


「あなたは…誰?」






「ふふ。僕をフィーネの国王からの使者だと思った?それとも、デザルトの途中でぶつかったヤツのボスだと思った?」

「!? なぜそれを?」

「クレア。気を付けて。」

おかしい。これを知っているのは僕かリベラだけ。周りには誰もいなかった。なぜ知っている?

「ま、確かにああいうヤツのボスって言ったらドSな女を思い浮かべるけどさ… どっちにしても答えはNOだよ。クレアさん。」


指を鳴らすと一瞬にして目の前まで来た。


「…女?」

「ム… どう見ても女でしょ…」


言われてみれば女か。

? 女なのに… ボクっ娘か?


青い髪に白の服。下はズボン。あれ?よく見れば制服みたいだな。


「…なに見てるの……」

「あわ!?ごめん!」

「クレア、変態。」

「気持ち悪いですよ、クレア。」

ぐふぅ、皆の言葉が刺さるぅ。


「さっきデザルトの時の話したら驚いたでしょ。 ふふっ!もっと驚くこと言ってあげよっか?」

「?何を!」

「君は『異世界』の人なんだよね?」

「!?」


「何?クレアが異世界から来たやつだと?」

「どういうこと?」

なぜこのことを知っている?知っているのは僕か神様だけ。こいつ、何者だ?

「何者だ?って顔してるね。僕は『フュテュール・パサッジェ』。フューテって呼んで。」

「わかった。じゃあフューテ。なぜ僕のことについて知っている?」

「そうだよね。そこから聞くよね。いいよ、教えてあげる。」

その瞬間、時間が止まった。空を流れる雲も、車から吹く火も、何もかも…

「なんだ…これ…」

「見ての通り時間を止めたのさ、僕は未来から来たんだ。…ある本にこう書かれていた。『昔、プラテリアの国王に命令された英雄『クレア』は、フィーネに向かい、フィーネの国王を倒し、世界を不安から救った。』と。」

「俺たちがいないじゃねぇか。」

「もちろんいるよ。『英雄を支えし魔法使い:ノア』『神の腕をもつ射手(ガンマン):ソルダート』『天使:リベラ・ツィオーネ』」


その話が正しければ、国王を倒したってことか。


ん?フューテがここにいる時点で、その本の話と現実の話が違うぞ?

「なぁフューテ…」

フュテュール、フューテの左目の中に歯車が二つ見えた。これが能力発動時の状態?

「ん?もしかしてこの目?僕も最初驚いたけど、どうやら左目を潰されると能力が使えなくなっちゃうんだよね。」

つまり、その目さえ守れば時間移動が可能なのか。

「僕の能力『時間(ザ・タイム)』は止める時間または、移動する時間が長ければ長いほど、目へのダメージが大きくなるんだよね。そろそろ疲れてきたし、もういいよね。」

そういうと、時が動き出し、フューテの左目も戻った。



「で、話を戻すけど、クレアさんのことについて知ってるのはそういうこと。クレアが異世界人って話をしたのはノアさんだし…あ、今から考えると未来のノアさんね。」

ということは、僕は皆に話したのか。でもここでフューテが言っちゃったってことは…

「ちなみに、僕は皆について行きまーす!」

え… また増えるのか… じゃなくて、怪しいんだよ。未来の話をするし、その話が正しかったら、未来を変えてることになる。敵の可能性はあるな。




|(クレアさん、やっぱりカッコいいな…)

















「えーと… フュテュールって言ったか。瞬間移動 (テレポート)とかは使えないのか?」

「残念ながら。攻撃系の魔法しか勉強してないし、武器も魔法系じゃないし。」


キィィィィイ


「む?向こうが騒がしいな…」

「ヴィスタ!」

フューテが魔法を使った。どういう魔法なんだ?

「五百…いや千? 千匹の翼付きスケルトンが接近してくるよ。僕がやるから見てて。」


「頭上まで来たぞ!」

「『時間(ザ・タイム)!』




絶滅(ディストラクション)!」


バキャッ!


一気にスケルトンの骨が砕けた。


「はぁ…はぁ…」

フューテ?

「意外と、魔力持ってかれる、な…」


バタッ


時間が動き出した。





クラーレ。回復魔法を詠唱し続けたが、フューテは起きなかった。

普通、この世界の人は魔力切れは起こさないという。

つまり、彼女は、普段より何倍も必要とする『時間(ザ・タイム)』発動中に使ったか、無理やり使ったか…




「魔力がないなら…… そうか!」

「ノア!フューテに魔力を送れる?」

「え?まぁ、できるけど…」

ん?どしたの…?



「や、やる…の?」

「ああ、できれば早く送れるようにやってくれ。」

とりあえずソルに運転を交代してもらった。|(もちろん、操作を教えてから)


「どうしたんだ?顔を赤くして…」

「一番効率良くしようと思うと、き…」

「き?」

何を恥ずかしがっているんだ?


「もう!自分でやってっ!」

何を怒ってるんだ?

ふと、ノアの魔法の本を見ると…







「すいませんしたっー!」

「もう、分かればいいの。」

…ということで、額に手を当てて魔力供給することにした。




三時間詠唱の末…


「……」

口をポカーンと開けたフューテがこちらを見ている▼


「大丈夫?」

「あー、うん…」

まだぼーっとしているらしい。寝起きかな?



まだ『死の霧』まで時間はたっぷりあるな。


「フューテ。話はできる?」

「う、うん。」


聞きたいことはいくつかあるからな…




「質問をいくつかさせてほしい。一つ目、なぜ能力を使ってまで会いに来た?」

「えーっと… 本で見たクレアさんが…カッコよかったから?」

なんで疑問形。

「…で?実際みた感想は?」

「本よりカッコいい!」

お、おう。


「… 二つ目、フューテが使った魔法、『絶滅(ディストラクション)』は、そんなに魔力を必要とするの?」

「ううん。ホントはそんなに使わない。けど、『時間(ザ・タイム)』を使ってるときは、その数倍使うの。これは、誰が何を使っても、消費するのは僕なんだ。だから、時間を止めてる間は魔法を使わないでくれるとうれしい、かな?」


「わかった。にしてもここに来た理由が、僕なんてな。」

「クレアー。よかったねぇ~。」

手を口に当ててノアが言う。


「そうでしょうか?私はクレアよりソルさんの方がいいと思いますが?」

おいおい…。リベラは僕の神器だろ。

















そうして僕たちは『死の霧』まで来た…

「結局どうするんだ?」

「空飛べたら行けるかな?」

そういうとフューテは魔法を唱えた。

「アンサンブル」

紫の魔法陣が五つ出てきた。

「アンヴォカシオン:ドラグーン」

すると魔法陣から、五体の竜が出てきた。まるで「乗れ」と言わんばかりにこちらを見ている。


全員乗れたところで死の霧を余裕で超えた。


「おぉ!」

「た、高けぇな、こりゃ。」

皆口々に言う。

「フィーネは魔法壁のようなもので侵入を防いでいる。だから、まず、その魔法壁に穴をあけるよ。僕とクレアで穴をあけるから、侵入後は安全確認と、二人以上で行動するように。」



フューテは指を鳴らした。その手には鎌が握られていた。

その鎌は大きく、名を『永遠(エテルネル)』というらしいが、神器でもなければ、有名な武器でもなく、自分で作った鎌で、他のと違うところがあるとすれば、刃と持ち手の棒が合わさるところに球体の魔法石があって、素材も魔法石を粉末にしたものを混ぜているらしい。



「じゃ、行くよ」

フューテが言うと、永遠(エテルネル)を魔法壁に刃の先を当てた。

すると、魔法壁の色が変わってきた。透明の紫から徐々に黒に近づいてきた。

「今だよ、クレア!」

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!」

引いた右手にドリルを創った。思いっきり殴るとドリルが回転して魔法壁に穴をあけた。


「ぅぁぁぁぁああああああああ!」

あけた穴に…





「落ちたぁぁぁぁぁぁぁあ!」










「っててぇ」

だんだんと声が聞こえてくる。


ざわざわ…


  ざわざわ…


はっ!




まっずぅい!このままだと殺される!とりあえず状況を把握しよう。

えーと?両側建物で壁。細い道だけど、もう前は歩道で、そこに人…じゃなかった魔人が多くいて、騎士の魔人とか来そうだな…。魔法壁で侵入を防いでいるのなら、人を見るのが初めての魔人がいないとも言えない。急いで逃げないと…



この両側の壁を生かして上まで登ろう。

召喚したドラグーンと、ノア達は上にいるはずだから… いや、一度撤退して策を練っているか、それとも、捜索しているか?それは無いか。


なんにせよ、無事に屋根まで来たな。

結構広いな。ん?あれは… いかにも魔王様が住んでそうなお城ですね。


人気のない場所、人気のない場所… ぐっ、無いか。


「お、いたぞー!」

げ、見つかった!


屋根を走っては飛んで、相手の火球をかわした。


「くそう。ずっとこれだと、捕まるのは時間の問題だな。」


ある屋根を飛んだ時だった。あ、あれ?体が、動かない?フューテ?



「どこー?クレアー!」


いた!フューテ!ここだー!


く、口も、動かない…


「ん?屋根を飛んでる人?クレア? …な訳ないか。クレアがあんなことするわけないからね。」


そういうと、フューテが乗ったドラグーンは上昇した。


あああああああああああああああ!


待って!ここだよ!ここ!「待って!ここだ!」


その時には時間は動き出していた。


「のわっ!?」


しまった!相手の火球を喰らった!


このままだと、また落ちる。


剣を創ってぇー。「せーのっ!」


キィィィィィイ


と、止まった。とりあえず降りて、と。


創った剣は消しておいて、創造、フックショットー!


フックショットとは、射程内のものなどに、フックを打ち込んで、自らをそれに引き寄せるのだー。


「とう!」


屋根まで戻ってきたところで、階段創って戻りますか。






よし。魔法壁まで行ったな。

あとは、猛ダッシュだぁー!


「うおおおおおおおっ!」



火球なんて気にしない、気にしない、気にしない、気にしなi…



うおおおおっ!ドリルだぁーッ!



突撃―ッ!





パリ―ン…




「え?クレア?」

上の方で聞こえた。このままだと霧まで一直線だ。



「ドラグーン!来い!」


そういうと、僕が乗っていたドラグーンが、物凄いスピードで僕の真下に移動した。



落ちずにすんだ。ホント、ドラグーンには感謝だな。















「まったく、勝手に一人で行かない。わかった?」

「はい。すいません。反省してます。」


また怒られた。フューテさん。ごめんなさい。



「で、どっちの方角に城はあったの?」

「え?」

「いや、どう考えても、王様倒せば終わるんだから、一気に終わらせればいいじゃん?で、どこ?」

「こ、ここからまっすぐ反対側です!です!」





侵入したヤツが開けた穴から、ドラグーン五体が出るなんて、誰も思わないだろうな。

僕たちは一気に城まで特攻した。


ありがとう、ドラグーン。とフューテが言って、頭を撫でた。撫でられたドラグーンは嬉しそうで、でも、それを顔には出さなかった。 そうすると、ドラグーンたちは去っていった。











「さぁ、この世界を『救済』しようか」










(き、決まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!一度カッコつけたかったから言ってみたけど、このクレア!言えましたぞぉぉぉぉ)












「さ、向こうから来てもらうために、っと。」

「どうする気ですか?クレア?」


完成―。ロケットランチャー。

これを創ったってことは、もうわかるよな?


「せーのっ!」




ジュドン!



ここでもまあまあ高い階層だけど、上があったから魔王様は上だな。きっと。

目の前の壁に撃ったけど、そろそろ来るかな?



「何事だ?」


お、来た来た。





「敵が来たよ、クレア?」

「どうするんだ?」


大丈夫、大丈夫。

敵の兵士の姿が見えてきた。


「? 何者だ?」

「おっす。 魔王様のいるところ教えてくんない?」

「ちょ!?」


もちろん相手は剣を構えるだろう。当たり前だよな。侵入者が自分の国の王様の居場所を教えろって言ったら。


「フューテ。時間」

「あ、うん。」


そういうと、能力で止めてくれた。

創ったロケランを消して、縄を創った。


兵士の方に行き、剣を奪ってから、縄で腕と足を固く結んだ。

…にしても、この角カッコいいな。




時間が動き出す…

「! 何をした!?」

「その縄解いてほしけりゃ、魔王様の居場所、教えてくれない?」

「くッ、誰がお前なんかに…」

「『解放(エマンシペイション)』忠誠心の解放。…これでよいのですか?クレア」

グッジョブ!


敵の兵士は「はっ」と言って…

「俺は…今まで何を…」

「魔王様のいる場所、教えてくれない?」

「わ、わかった。この城の一番上の部屋に玉座の間がある。そこにいるはずだが…」

「ありがとう。」

そう、僕は言って彼の肩にポンっと手をおいた。













幾度か戦闘はあったものの、無事、最上階、玉座の間と思わしき扉の前まできた。

「じゃ、開けるから、少し警戒しといてね」


ギィィィィィイ




そこは、確かに玉座の間だった。だが…






「いない…?」

「どういうこと?」

「?」


玉座の裏を覗いて見た。

「石? フューテ。この石分かる?」

「どれどれ? これは…転移石だね。多分、これを利用して、どこかに行ったんだ。」

「ノア?この石から何処に行ったかわかる? ソルとリベラは扉前で見張りね」

「わ、分かった。」



魔法陣をいくつも展開させて頑張っているノア。魔力供給をするフューテ。見張りのソルとリベラ。策を考えてる僕。皆頑張ってるな。



「わかったよ。移動先は上。天空に魔法で作った空間があるっぽいね。きっとそこだよ。」

「よし。じゃ、そこに行こうか。」


すると、フューテが変なことを言い出した。

「空間か…この時代からあったんだね。」

「どうしたフューテ?」

「僕はね、何の能力なしにカッコいい名前は付けないの。僕の鎌『永遠(エテルネル)』って、魔法石を粉末にしたり、大きな魔法石があったりで、魔法を使うにしては杖以上の効果を発揮するんだけど、もともとはある魔法をフルで使おうと思ったからそうしたの。」

「その魔法とは?」

「ここまでくれば言わなくてもわかるでしょ?『空間(エスパース)』。この魔法を鎌に『能力付与(エンチャント)』したの。」


「はい。この話はまたあとで。さ、行こ。」

「じゃあ、一人ずつ石に触って。」


石を触ると、一人ずつ消えていった。


光に包まれて…















目を開けると、外は宇宙空間、地面は魔法陣、目の前で魔王らしき人と、いかにも薬で戦いそうな人がボードゲームをしていた。


ソルは銃を構え、フューテは刃を、ノアは杖を向け、リベラは大剣となりこちらに飛んできた。





「ようやく来たようだな。我が国の敵よ。」

「イッヒッヒ。少し遅かったですな。王よ。」


「あなたがフィーネ国の魔王で間違いないか?」


立ち上がって言った。

「いかにも。私がフィーネの王だ。」

フィーネの王。予想してたけど、暗黒騎士みたいな見た目だな。黒いマントもあるし…


「お願いです。他国への攻撃をやめてください。」

必死にフューテが言う。だが、それも無駄なようだ。


「他国に攻撃した魔物というのは… これかな?」

魔王の左手から出ていた紫色の炎。右手をこちらに向けると、あのスケルトンが召喚された。

その行動は、攻撃をやめる気はない。そういうことだと思った。


「なら、力ずくで止めるしかないな。」



こうして、この世界最後の戦闘が始まった。







「では、始めるとしようか。」

魔王はそういうと、紫の炎を持った腕を横に振った。

「来るぞ…」

スケルトン。…大体十体か。十体と言っても甘く見てはならない。単純計算で一人二体を相手しなければならない。


コカカ…


剣を持っている…。元を叩くか…。

「フューテ。時間は止めずでいい。こいつらを一掃してくれ。リベラは剣になって僕と。ノアとソルは援護を頼む。」

魔王に向かって走った。


「了解しました。クレア」

僕の計算が正しければ、スケルトンを一掃して魔王の元まで一気にいって。叩く。

いけるか…


絶滅(ディストラクション)!」


バキャッ…


「今だ!来い、リベラ!」

リベラはこちらに飛んできた。走りながら握れた。リベラが計算して飛んできたのだろう。これだと、スピードを落とさず行けるからな。


「これで終わりだぁぁぁぁあッ!」

「やらせぬわぁぁぁあッ!」

頭のネジが十本は抜けたであろう、髪が真っ白薬剤師おじいちゃんが、突っ込んできた。


「ソル!」

「おう!」


パァーン… と銃声が響き、おじいちゃんが撃たれた。

「これで勝ったつもりか?『創造(クレアシオン)』よ。」

「!?」

魔王は右腕で止めた。全身鎧のあいつにはダメージなしだろう。


「ふむ… なかなかいい剣だ。よかろう。こちらも剣で挑むとしよう。」

魔王は手の炎をまっすぐ、直線になるように動かした。

動くと同時に、剣が出てきた。黒い剣。ただの剣だといいが…


「では、こちらから行くぞッ!」

「ッ!」

一撃が重い。こんなに重いなんて…ッ!


「『解放(エマンシペイション)』力の解放!お前の、攻撃力を下げた!」

「だったら、なんだというのだ。俺でなければいいのだ。そう、俺でなければ…」



「な、なんだこのジジイ…」

何度も銃声が響く。ソル?

「イッヒッヒ。貴様の攻撃など痛くもかゆくもないわ。この薬は、すべての感覚をなくす薬だ。そしてこっちは、君に使う薬だぁッ!」


グサッ…


「ぐああぁぁぁぁぁぁあッ!」

「ソル!」


ソルに何かの薬をさした。注射器に入っていた緑の液体…


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」

ソルはさされた部分から、体が結晶化していった。緑の結晶に飲み込まれたソル。

この策で、支援の二人の防御をまったく考えていなかった。クソッ。


「ソルっ!」

「ノア。いったん引くよ。このままだとノアも僕もまきこまれる。」

「じゃあ、フューテは仲間を見殺しにするの?」


そうこう言っている間に、結晶化は進んでいた。

それは、元のソルの体より大きい。竜のような…


パリ―ン



ゴギャァァァァァァァァア



翼が腕と合体している。大きな尾。長い首。前傾姿勢…ドラゴン。


ゴギャァァァァァァァァア


翼を大きく広げて威嚇してくる。四人で、倒せるのか?いや、戻せるのか?

ソルを…。仲間を…。



戻せるのか…。




「おい薬剤師!どうやったら結晶化を治せる!言えッ!」

薬剤師の胸倉をつかんで言う。だが…

「へっ。誰が言うか。そうだなぁ。薬を調べればわかるんじゃないですかねぇ。イッヒッヒッ」


「くっ。」

どうする?きっとこのままではソルは完全に竜になってしまう。早く…早くしなくては…

「!」

もしかしたらこれでっ…!

僕はソルに向かって全力で走った。

「『解放(エマンシペイション)』結晶化からの解放!戻ってこい、ソル!」

横切りは成功。当たった。


ゴウガァァァァァァァア




「な、なんで…」

「この程度、想定していなかったとでも?この薬を使った者は魔物化するとともに、状態異常の無効化の能力を得るのだ。」

クソッ!いらない能力つけやがって。


「くッ。もう一回だ!」

「いいのか?友を攻撃し続けても?」

!? 棒立ちしている魔王が聞いてきた。


「? どういう意味だ?」

「攻撃するということは、傷つけるということ。もし仮に人間に戻ったとしても、そのダメージに耐えられるかな?」

当然耐えられないだろう。僕は…友を救えないのだろうか…


「ッ…神様ッ…」

そう言って今まで持っていた神石を地面に叩きつけた。


白い煙と共に現れた神さま。

「どうしました?…ってすごい状況ですね…」

「頼む神様… あの竜は僕の友達だ。人間に戻してくれ…」


神さまは黙っている…


「…私は世界に影響することはあまりできません。この世界にあなたを行かせたのも、上の神様の許可で出来ました。ですが、今回は…」

「せめて… せめてどうすれば治せるか教えてくれ… 本当なら皆、この戦いに関係ないんだ。僕だけで戦うべきだったんだ。だからッ」


また神様は黙る…


ノア、フューテと戦っているソルの方を見て言った。

「あの竜は結晶で構成されています。その中心に彼はいます。あまり時間がありません。あなたにもう一つ力を与えましょう。…ホントはこんなことしてはいけないんですけどね。仕方ありません。」


僕の頭に手をのせて、儀式が始まった。

「あなたに力を授けましょう。決して間違った使い方をしないよう。」

神さまの手から勢いの強い風が来た。それと共に、力が流れ込んできた。


「授けた力は…『崩壊(デストリュクシオン)』。創造と破壊。神にも匹敵する力になってしまいましたね。さぁ友を、世界を救いなさい。」


ソルのところまで走って、頭に触れて使った。


「『崩壊(デストリュクシオン)』結晶をすべて…」










「破壊!」








砕け散った結晶が降りかかる。


「ゴホッ…」

「ソルッ!」



竜の中から出てきたソルは、人の姿をしているようで、していなかった。

半竜人化。もう少しで助からなかった。もう少し早ければ。その二つが脳裏をよぎる。

左腕と右足。ほかにも少しあの竜に似たところがある。


「ソル!」

僕はソルの心臓の音を聞いてみた。


良かった。生きている。あとは…


「ノア!回復魔法だ。」

「うん!クラーレ!」

ノアがかけた回復魔法。きっとこれで目を開けるはずだ。


「う、うぅ」

「ソル。大丈夫か?」

「あ、ああ。少し苦しいが…」

ソルが驚いた顔をした。


「あぶねえ!」

僕とノアを抱えて、横にジャンプした。すごい回復力だ。クラーレをかけたといっても、こんなにすぐ回復するなんて。


どうやら攻撃は魔王が召喚した杖を持ったスケルトンだ。

「ソル。薬剤師の処理は任せる。殺すも生かすも自由にしてくれ。魔王は… 僕がやる。」


「『崩壊(デストリュクシオン)』スケルトン」


スケルトンは粉々になった。だが、魔王は驚く気配はない。おかしいぐらいに冷静だ。

「殺すのか?俺を。殺すは簡単だ。だが、命は戻らんぞ?」

「ああ、殺さない。フューテ。空間魔法、使えるか?」

「う、うん。どうする気?」

フューテの方を向いて、魔王を指さして言った。」

「この魔王を向こうの宇宙空間へ。」

「わ、分かった。エスパース!」

切り裂いた部分が、向こうの宇宙空間につながった。その瞬間、魔王と切り裂いた部分だけを結界で囲んだ。これで僕たちは宇宙空間放りげ出されることはない。


「永遠に、悔やめ。王よ」

「ぐ、うぅ」

























今でもフューテの王は宇宙(そら)から僕たちのことを見ているだろう。


あれから一ヵ月。ソルはデザルトの病院で診てもらい、異常がないことが言われた。変わったといえば、脳、臓器の一部が竜人化していることだろう。医者からは、「竜人化したことにより、簡単には死なないでしょう。寿命も少しですが、伸びたでしょうし、プラスに捉えていいでしょう。」と言われた。反射神経、視力なども伸びたといわれた。


僕とノア、フューテ、リベラ、ソルでプラテリアの国王に報告しに行った。

魔王は討伐し、しばらくは問題ないでしょう。国民の魔人は、あの魔王の行動に不安を持っていたりしたそうなので、同じことは二度と起きないと考えていいでしょう。と。


神さまの報告によると、この世界の原因はあの薬剤師と魔王で、薬剤師はソルがプラテリアの地下都市に放り投げたそうで、ここの警備はしっかりしていて、実質、殺したのと変わらない。魔王は宇宙のどこかにいるだろう。よって、次の世界に行きなさいとのこと。




僕は次の世界に行くことを言うと、皆行くなという。

それでも行かなくてはならない。それが、神様との約束だから…


ノアは魔法の研究をするといっていた。いつか、クレアがいる異世界に行くと。


フューテもノアの研究を手伝うと言っていた。


ソルは、依頼者の国に報告しに行くらしい。そのあとは、クレアの代わりにこの世界を守るとかなんとか…



そうして、出発の日が来た。本当に短い日だったが、この世界も悪くなかったな。

「絶対、また会いに行くからね!」

「僕も、一緒に会いに行くから。」

「この世界はまかせろ。世界の旅人(ワールド・トラベラー)


「あぁ、また会おう。皆。…いや、この世界の英雄たち」


そうして、僕とリベラはこの世界を去った。






















次の世界…



「ぅぁぁぁぁぁぁあああああああっ!」

空からのスタートかよ!?









「う、うう…」

「大丈夫ですか?クレア」

リベラの顔。ん?家の中?

「大丈夫ですか?クレアさん?」

少女が僕の名前を言う。きっとリベラから聞いたな。

「えっと…あなたは?」

「ファタリタです。えっと。空から落ちてきたみたいですけど… も、もしかして異世界人ですか?」

な、なんか子どもみたいに聞いてくる。か、顔近い…

「お願いです!この世界を救ってください!」

「え?」

「お願いです。」

「え、あ、はい。わかりました。じゃ、」










「この世界も救うとしますか」


初めて、長い短編小説を書きました。

ミスも多いと思いますが、どうでしたでしょうか。


感想など、ありましたらお願いします。


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