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プロローグ:4

 「おはよう!いい朝だな。これぞグッドモーニングだ」


 曖昧などんよりとした曇りだった。ほぼ十割で当たる天気予報によると曇りのち雨になる模様。なんでやねん。関西弁になってしまったじゃないか。


 今日は学校にいくつもりはない、登校するつもりがない。何せ今は午前九時三十三分だ、間に合わない。


 それに自宅謹慎が解けてない。行くに行けないのだ、行くつもりがないけど。身体に疲労が幾分か残って気だるさがある。重力が倍に増えたみたいな気だるさだ…。


 精神方面の気だるさもあるだろう、何時ものベッドに寝れずに代わりに赤髪の幼女がすやすやと現在進行形で寝ているにだから無理もない。これで甘えてやがる、何て言われたらその人は絶対鬼だ。鬼畜だ。

 

 …


 現実に目をそららしつつある、悪い兆候だ。とりあえず、そこの幼女が起きるまで気長に待とう。幼女を無理矢理起こすようなサディスティックな趣味は持ち合わせていない。


 幼女と言うべきなのか、昨日はどちらかと問われたら少女立った気がするのだが、昨日の事案はかなり非現実的であやふやで曖昧な体験だったのでどんな可能性も否定ができない。俺だった理解を放置した、そのまま見た通りのことを飲み込むしかないようだ。


 兎にも角にも赤髪の幼女が目を醒ましたら話を聞けばいいか。話通じるのかな、まぁ、どうにでもなるか。


 うへぇ、端末に何通かメールが来ている。恐らくはじめ先生なんだろう。ほら当たった。午前九時三十九分、そろそろ休み時間か、連絡しておかないと後が怖いからなぁ。


 「おい、代々世朔佐。昨日は学校来いっつったよな、どうした返答によっては社会的に殺戮の限りを尽くすからな」

 

 怖いよはじめ先生。いきなり画面越しでメンチ切ってくるの心臓に悪いぜ。マイクから聞こえてくる吐息が若干えっちぃなとは思ってたけど、今は口から怒気が漏れてるぞ。耳が食いちぎられかねない。


 「あ、あぁいやぁ、まぁ、ほら、俺はまだ自宅謹慎じゃないですか。まだまだ自宅謹慎じゃないですか。勿論学校に行って夢の青春時代をはじめ先生と過ごしたいと思ってますよ。はじめ先生もそこまで俺に会いたいなんて嬉しいです」


 「…」


 この沈黙はなんだろう。もしかして照れてるいるのかな、もしかしなくても照れてるのかな。それは嬉しい誤算だ。呆れてものが言えないだと思いたくはない。


 「あぁ、済まない、無音の待ってもらうときの音楽を流していてな。あれこれ君に対する処罰を考えていたんだが、ぶちのめそう」

 

 「無音の音楽なんて何ですか!?名称を知らない音楽にそんな哲学みたいに拗らせるな!あと暴力反対です」


 「敬うべき先生になんて態度だ、まったく。そんな態度とるのなら更に罪が重くなるぞ。体重計でエラーが出るぞ」


 「えぇ…じゃあその、すいません」


 「ん、素直な生徒教え子は好きだぞ」


 やっべぇ…惚れちゃいそうになる。なんだろう、惜しげもなく好きだなんて言われると照れ臭いな。もしかしたら年上の教師が好みなのかもしれない。


 「それで話は変わるのだが君の自宅謹慎が早まったのだ。私が校長やら教頭やら教育委員会やらに交渉してだな、早まらしてもらったのだ。それでも事件に関わった口煩い我が子を妄信的に愛している親御さんにはバレないように、だがな」


 「うへぇ、それはもうありがたいですね。ありがとうございます」


 というより俺の為に寂しい頭の男性に頭を下げてくれたはじめ先生に惚れちゃいそう。惚れた。


 「どういたしまして。今日は仕方がないにしても、明日からは来るように。少し早めに来て職員室で待ってな」


 というわけだ。これで正々堂々と学校を休める。大義名分というか、言い訳ができるので罪悪感に押し潰されなくて済む。


 

 丁度電話が終わって何をしようか浮わついた気持ちでいると赤髪がリビングに現れた。そこそこまぁまぁ良い高校に通っているので親元を離れている子供が困らないような国設営のマンションに住んでいる。3LDKだぜ。正直広くても所持品が不釣り合いに少なくて物寂しく殺風景になっている。もう少しごちゃごちゃと散乱している方が好みなのだけれど。


 して広いリビングに赤髪が現れた。先程起きてきたらしく、意識がぼんやりとしていて寝癖も跳ねている。目を数回乱暴に擦ったあと、夢うつつな瞳が俺に焦点を合わしていく。


 「んー、人間、お前誰じゃ?ていうか此処は何処じゃ、儂を監禁するつもりかの?


 「俺に幼女を監禁するような性癖はないわ!あれだな、互いに自己紹介が必要らしいな」


 無駄に疑惑の念を抱かれているらしいしな。赤髪の疑惑の視線がとてつもなく痛い、幼女に疑われるってかなりダメージを負うんだなぁ。


 「…それもそうじゃの、そうでないと事態が進まんしの。じゃから儂が聞いておくからお前から自己紹介せい」

 

 「言動と態度が天上天下唯我独尊だな」


 さて、自己紹介を始めよう。

 自己紹介とか何年ぶりだろう、久しく久し振りだ。自己紹介、なぁ…、気が進まない。そもそも名乗るものではないし、他人に紹介するような特徴も長所も短所もあったっけな。白髪くらいしかないな。


 しかしだ、ここで自己紹介しておかないと赤髪の言う通り事態が進まないから仕方がない。


 「俺は名乗るものではない、只の通りすがりの男子高校生さ」


 「お前の戯言なんぞに興味など無いわ、戯け」


 「俺の名前は代々世朔佐。代替品に代替品を重ねて代、世迷い言の世、朔月の朔に人偏に左右の左で代々世朔佐だ。職業は男子高校生。年齢は17才になったばかりだ」


 「ふーん」


 うーん。頑張って張り切って自己紹介したが、ここまでどうでも良さそうに相槌を打たれると精神的に来るものがあるな。辛い。


 「次は儂じゃな。心して聞くがよい。儂の名はディアルーツ・オーバーキルド・ブラッドルージュ。悪魔にして悪魔殺し、竜にして竜殺し、吸血鬼にして吸血鬼殺しじゃ」


 と、彼女は決め顔でそう名乗った。すっげぇ、とてつもなくイカしてる名前だ。名は体を表しているとはいうが正しくシンクロ率100%の名前だ。

 

 「凄い、イカしてる名前だな」


 「ふふん、そうじゃろそうじゃろ!ま、少々長いかもしれぬからフルネームで呼ばなくともいいぞ」


 「そうだなあ、じゃあ…ディアルーツって呼ぶとするか。と言っても、ディアルーツ。このあとお前はどうするんだ?」


 「…好きに呼ぶがいいわ。そうじゃな、儂は何者かに襲われておったからの」


 「そこまで存在感があるお前が?」


 「存在感があるからじゃよ。お前も昨日儂を助けていたのなら見ていたじゃろ、あの惨状を」


 そう、だった。ディアルーツは死に瀕していたからこそ、俺が助けたのだ。満身創痍で血の海に浮かんでいた心を抉られた彼女を。


 「一度襲われた身としては警戒をせざるを得ないのじゃ。それに今は九割ほど力が削ぎ落とされておるからの慎重に動こうと思う」


 九割ほどってことは今は一割弱ってことなのか。とんでもないな。得体が知れない、底が知れない。


 「そうか、具体的にはどうするんだ?俺になにか出来そうなら手伝うけどさ」


 「そうじゃの、…縁もあったことだし、少しの間ここの土地を借りるぞ」


 「借りるって…必要なのか?」


 「別に何処でもいいんじゃが、言っただろ?縁があったのだからここに結界を張って拠点にするのじゃ」

 

 結界って…そんなオカルト染みたことをと言いかけたがこの状況が既にオカルトなのだ。今更だ。

 貸さない理由も二人でも住めるような広さだったので彼女の要求を飲み、俺の家は赤髪の幼女との共同生活の場となった。


 

幼女と共同生活したい

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