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連塔いさき

 軋世は、考えていた。

 帰りはタクシーを呼んだ軋世。タクシーの中で考えた。

「俺はオヤジの実験サンプルなのか……?」

 軋世に向けて、軋世には、まったく関係のない話をするワケもない。連塔がそう言うという事は、そういう事なのだろう。

 そう考える。あの連塔という男のいう事が正しいなら、そういうことになるだろう。

「だが、俺の計画には何の障害にもならない……」

 自分の出自がどうであろうといい。自分は自分の計画を進めるだけである。

「だが……少しは知っておいた方がいいだろうな、遺伝子をいじると、寿命がみじかくなるとか聞いたことがある」

 軋世はそう考えた。

「お客さん……独り言が多いですね……」

 運転手が言う。それを聞いて、軋世は、はっとした顔を作った。

「すいません……何かを考え込むとつい口に出てしまう癖が……」

 軋世は言う。それで運転手は黙った。

『こんな事じゃ、機密なんて守れないな……』

 今はただのタクシーの運転手だったからいいものの、うっかりあの連塔の前でそんな事を言い出そうものなら、計画が破綻をするところだった。

「ここでいいですか?」

 運転手が言うと、そこは、軋世の家がある、住宅街の前だった。

 そこから歩いて自宅に向かう軋世。軋世が家に入ろうとしたところ、軋世の事を待っていた遼子がいた。

「軋世さん……」

 遼子は軋世に向けて言う。耳元に口を近づけ、こう言った。

「監視されています……」

 遼子は千里眼の能力で、軋世の事を監視する男たちの様子を見つけたのだ。


 遼子は軋世と一緒に、軋世の部屋に入った。

「中肉中背で、でも体は鍛えられています。なんか、真面目な好青年といった、感じですね……」

「奴だ……連塔……」

 軋世はそう考えた。やはり連塔は軋世の事を疑っているのだ。こうやって監視まで付いてくる。

 窓から外を見ると、米粒みたいな小ささの連塔が見える。こちらがあっちの事を見ているのに気付いて、連塔は、すぐに双眼鏡をしまってその場から逃げ出した。

「せっかく気づいていないフリをしていたのに……」

 軋世が連塔の事を見つけたので、連塔が、ずらかってしまったのだ。

「すまない……」

 軋世が言う。軋世はこれから、あの男には注意をしなければならないと思った。

「あいつの事は常に気にかけておくんだ。計画の邪魔をされるかもしれないぞ……」

 軋世は遼子に向けて言う。

「あいつ……何者なんですか?」

 そう聞き返してくる遼子。それに軋世は自分の知る限りの全部を話した。だが、軋世は思い出す。そういえばあの男の素性は全く調べていなかった。

 計画の障害になりそうならば、調べておかねばならない。軋世は連塔の事をどう調べるか? を考え始めた。


 次の日、学校に行くと、いきなり校長室に呼び出された。

「八幡君……君……なにかしたか?」

 校長室に入ると、座らされる。そこで、いきなりこう言われた。

「何か……とは?」

「私の所に、警察の人が来てね。君の事を詳しく聞いていったよ。普段の君の生活態度とか……」

「もしかして、見た目はドが付くほど真面目そうで、やたらと礼儀正しく……」

「そうだ! そんな感じだった!」

 そこまで言っただけで、校長はそう答えた。

『やはり連塔か……』

 軋世はそう考える。

「うちの父の事で、何か知りたい事があったようです」

 軋世は、父が昔、科学者だったことを話す。

 その研究は危険な研究とされていて、その事について、自分も話を聞かれた事を話した。

「そんな研究は画期的だと思うが……」

 校長が言う。

 この世界が遺伝子操作で、優秀な人間ばかりになったら、この世界はどうなるだろうか?

 軋世は考えようとしてやめた。この世界が混乱するか? それともこの世界に平穏が訪れるか? の、どちらかであろう。

「ですが、細胞をいじると、人間の寿命は短くなると聞きます。いい所ばっかでもないようですよ」

 そう、適当に話をして、軋世は会話を止めた。これ以上は議論をしても仕方がない。そして、その研究の成果として、自分がその優秀な遺伝子を持って生まれてきた人間なのだという事を言われるのもあまりよくない。

 軋世は、言う。

「警察の人たちが何を探しているかはわかりませんが、ボクは警察に捕まるような事は、何もやっていませんよ」

 そう言う軋世。

「そうか……悪かったね、呼び出してしまって」

 そう校長が言うのを聞くと、軋世は立ち上がる。

「お騒がせをしました」

 そう言い、頭をペコリと下げて校長室を出て行った。


 放課後になると、軋世はすぐに帰る。いつもは、世夜のところに寄っていくのだが、それ以上に大事な用でもあるのだろうか? と、クラスメイト達は憶測をしてしまう。

 軋世は相変わらず、この世界を崩壊させる事だけを考えていた。

「遼子……頼んでいた事はできたか?」

 そう言う軋世。軋世がそう言うと、遼子は、軋世に向けて微笑んだ。

「それがそれが……相手もとことん仕事熱心なようで……」

 そこまで言うと、遼子は軋世に顔を近づけた。

「今、私達は見張られています……詳しい話は、もっと遠くに行った後で……」

 そう言う。もしかしたら、相手は自分達の話を魔法を使って聞いているかもしれないのだ。

 慎重になって言う遼子。その遼子に向けて、軋世はおもむろにキスをした。

「なっ……いきなり何をするんですか?」

 そう言い、驚く遼子。

「カモフラージュだよ……監視をされているのなら、恋人のフリくらいするべきだ」

 軋世は言う。顔がニヤついているのを見ると、軋世が本気で言っているのか、適当な事を言ってごまかそうとしているのか? が、遼子には分からない。

「ボクにキスをされるのが、そんなに嫌だったのかい?」

 軋世はそう言う。

 そう言うと、顔を赤らめた遼子はうつむいた。

「嫌なんかじゃないです。むしろ嬉しいです……」

 それを聞いて、軋世はクスクス笑った。だがその言葉には続きがあった。遼子が言う。

「……とでも言えばいいんですか?」

 いきなりキスをするのはお気に召さなかった様子だ。軋世はそう様子を見て、クスリと笑った。

 そして、その笑顔のまま言う。

「まあ、あいつらの監視の目が届かない所に行くまで、ボクらは恋人のフリだ。もしかしたら、うんざりして、監視をやめてくれるかもしれないよ」

「相手はそんな生ぬるいやつじゃないです。こんなカモフラージュで黙せるような相手では……」

 そこまで言うと、軋世は遼子の口に人差し指を当てた。

「だから、あいつらの監視の目が届かないところに行ってから、そういう話をしようね」

 そう言った軋世は、遼子に近づいていった。

「そういえば、男に触られるのはダメなんじゃなかったっけ? キスは大丈夫なのか?」

 軋世がそう言う。遼子は、俯きながら言った。

「本当は、今すぐにでも狂いだしそうになるほど辛いです……ですが、敵が見ているいじょう、そんなところを見せるわけにも……」

 遼子は歯を噛み締めながら言う。それに軋世は、笑顔で答えた。

「なら、手をつないでいこうか……恋人のフリをいしなけりゃいけないんだろう?」

 あえて、遼子を追い詰めるような事を言う軋世。遼子に向けて手を差し出すと、遼子は黙ってそれを握った。


「ほら、疑わしいところなんてどこにもないじゃないか……あの二人は、ただの高校生カップルだよ……」

 鳥実が言う。今いるのは高層マンションの一番上の階だ。ここは軋世の学校がよく見渡せる位置にあり、連塔はそこで一日中立って軋世の監視をしていた。

 その間、連塔はトイレに立つ事もなく、休みもせずに軋世の事を監視していたのだ。

「わたしも、君にはついていけない……帰らせてもらっていいか?」

 鳥実はそう言う。

 連塔に弱みを握られてしまったのが運の尽き。それから、連塔にいいように使われてしまっているのだ。

 当然連塔も、そんなカモを簡単に逃すはずもない。

「ダメです、まだそこにいてください」

 連塔は言う。

「こうしている間にも、私は仕事が溜まっているのだよ」

 鳥実がそう言うが連塔は双眼鏡を覗きながら連塔は言う。

「あなたは彼に騙されている。彼はこの世界に居てはならない危険因子です。一秒でも早く、この世界から排除しないといけない」

 連塔が言うのに、鳥実も答える。

「因果な仕事だね。ただの真面目で善良な優等生をそこまで悪し様に疑うことができるなんて、人でなしでなきゃ出来ない仕事さ」

 鳥実の嫌味に、連塔は黙ることで返した。

 鳥実はそれで、さらにストレスを貯める。

『こんな奴……いなくなればいいのに……』

 弱味を握って脅してくるような奴なのだ。真面目な顔をして、裏で何をしているか分からない。

 鳥実は、そう考えた。

「ですが、彼の事をこれ以上追っても無駄ですね……」

 連塔はそう言う。

「これで解放されるかい?」

 鳥実は言う。連塔は鳥実の事をゴミを見るような目で見た。

「今日のところは……ですよ。あなたはまだ働いてもらわないといけません」

 連塔が言う。その言葉を鳥実はうんざりしながら聞いていた。

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