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連塔の突入

「教授の研究所から切り離しておいて助かったな……」

 軋世は言った。

 モニターで教授のラボの様子を見ていた軋世は言った。

 禁呪の取り付けは終了。あとは発動施設の完成を待つだけだ。あと一箇所完成していない場所がある。それもあと一時間で完成をする。

 今は手の空いた者から作業を終了して『完成の記念』などといって酒をあおっているところだ。モニターを見て軋世はニヤリと笑った。

「これがとんだ自殺とも知らずに……」

 軋世は彼らの行動を見てほくそえむ。

「怖い笑い方ですね……」

 遼子は楽しげにして言う。

「軋世さんはそうでないといけません」

 世夜も同じような顔をして言った。モニターを切ると、軋世は椅子に座った。

 ここをあと一時間で洗われるとは思わない。最後の最後になって気づく人間が出てきたが、これで軋世の勝ちだ。

 禁呪の毒ガスは世界中に散布をされる。そして生き残るのは運のよい一部の連中だけである。

 少し生き残る人間は出てくるだろうがこれだけやれば『滅亡させたのと同じ』と考えてもいいはずだ。

「できれば人間は根絶やしにしたいところだが……」

 軋世は思う。当初の計画では、そのつもりだった。だが計画に狂いができたりし、この形に落ち着いたのだ。


 連塔は教授の事は呼び出したパトカーに押し込めて署に送った。

「なめるな……あいつらの居場所は分かってる……」

 連塔はずっと軋世達の事を監視していたのだ。軋世がどこに行ったのか? おおよその目星はついていた。

 連塔はそれから、ある場所を目指していった。ここからでは車で走っても一時間くらいかかる。

 だがそこまで行くしかない。パトカーに乗り込み、数人の警官も連れてその場所に向けて車を走らせた。

「これから会う奴らは世界を滅亡させようとしているテロリストだ! 容赦はするな!」

 そう熱くなっている連塔を見て、警官達は冷めた目で見ていた。

 ここにいる全員は、世界を滅亡させようとしている人間がいるなんて実感がわかないのだ。

「気づいてからじゃ遅い……」

 連塔は軋世が外国に飛ぶのの後をつけていた。アフリカに行き、ヨーロッパに行き、中国に行き、とにかく貧乏アパートで暮らす高校生の財力では到底不可能な事をやっていたのだ。

 そして、軋世達がある山奥に向かうのを見ていた。そして、何もない山奥の道から蔦や草で巧妙に隠されたドアが突然に開いたのだ。そこに入っていく軋世達を見たのは昨日の事である。

 そのドアは自動で土の中に潜っていった。そして、そこにドアがあったのが嘘みたいに何もない空間になっていった。

「おそらくあそこにいる……」

 連塔はその場所へ車を走らせた。

「全員拳銃のセーフティは外しておけ! 抵抗するなら撃ち殺してかまわん!」

『ただの高校生相手だろう?』

 そう思って連塔の指示を不思議がる者もいるなか、連塔はアクセルを強く踏み込んで目的の場所に向かった。


「ジャマーを最大出力で起動させておけ! これから突入するぞ!」

 連塔はそう言う。連塔がスコップを使って土を掘り返すと、スコップの先が何かに当たった。

「やっぱり!」

 そう言って連塔は手で土をかき分ける。

 なかから真新しいステンレス製のドアが現れてきたのだ。

「全員で掘るんだ! 急げ!」

 そう連塔が言うが、連れてきた警官達はこの状況を重要視していないようだ。

 それに業を煮やした連塔が、一番近くにいる警官の胸ぐらをつかんで言う。

「いいか! よく聞け! 相手はただの高校生じゃない。こんなものを作る力は俺たちにだってないんだ!」

 地下に秘密の基地を作ることが出来る人間のどこが普通なのか? それに、あの魔法式の麻薬を作ったのも裏で軋世が手を引いていた。

 そして、軋世が単身で黒曜組に乗り込んで、魔法麻薬の販売を依頼したのだ。

 ここまでの行動力があるというのに、まだただの高校生だと思って八幡 軋世の事を甘く見るのか?

 そうその場にいた警官達に大声で言った連塔。

 だが、警官達はそれでも軋世の事を危険な人物であるとは認識していないらしい。

 だが、連塔がどうにも本気らしい事には気づき警官達は形だけは連塔に従って、穴を掘るのを手伝った。

「君ら……巷で魔法麻薬に手を出していないか?」

 連塔が警官達に向けて聞く。

 土を掘り返しながら聞いてきた連塔の言葉に、警官達は体を固くする。

「噂を聞いた事はありますが……」

「そうそう……警官として麻薬を使うわけにはいかないだろう?」

 そう言い合っている。

「使った者は申告しろ、死ぬ事になるぞ……」

 自分と同じ寮にいる者は当然はぶいている。あの時当夜に魔法をかけられているはずだ。彼らの脳には魔法式が組み込まれているため、八幡に近づいたら間違いなく脳を吹っ飛ばされる。

「誰も使っていないんだな?」

 そう連塔が聞くと、全員頭を縦に振った。そう確認した連塔は、地面を掘るのを再開していった。

 

「ここを嗅ぎつけられたか……」

 軋世はそう言った。おそらくあの警官は連塔達だろう。あの警官は最後まで自分の邪魔をしてくる。

「だが、連塔なら……」

 軋世は、当夜に魔法をかけられたはずだと思った。今、軋世が手で弄んでいるスイッチを押せば、連塔の頭の中の術式が発動して頭蓋骨ごと吹っ飛ばされるはずだ。

 軋世はニヤリと笑った。

「私もついていきます……」

 世夜も言う。

「なら私も!」

 遼子も言うが、軋世はその遼子を止めた。

「ここに人が一人もいなくなるのはマズい。遼子は残ってくれ」

 さびしげな顔をする遼子。軋世は世夜を連れ、連塔のところに向かっていった。


「随分ぶしつけな入場じゃないか? 人のうちに来たのにノックもないどころか、土足で入ってきて……」

 連塔は軋世の声を聞いた。軋世はこの部屋のどこかから連塔に向けて言っているようだ。

 この地下室にはいくつも部屋があるわけではない。すぐ先の曲がり角に軋世がいるのが連塔には分かった。

「君だってこの山の持ち主に許可を得たのかい? こんな施設を勝手に作ってしまって……」

 連塔は言う。だがそんな言葉は何も意味のない会話だ。

「そういえば、お互いに知っているのにこうやって会うのは初めてだな」

「まだ会ってもいないだろう?」

 連塔と軋世はそう言い合う。

「こっちに来たらどうだ? それで俺たちは初めて顔を合わせる事になる」

 軋世はそう言って連塔を挑発した。連塔はカチャ……という音を立てて軋世に向けて近づいていく。その音は連塔が拳銃のセーフティを外した音である。

『顔を合わせた瞬間に、このスイッチを押してやる……』

 軋世は思った。自分と顔を合わせた瞬間に連塔は死ぬ。ここまで嗅ぎつけてこれた奴なんだ、少しくらいは相手をしてやってもいいだろう。

 そう考えた軋世はスイッチのボタンに手をかけた。

「八幡 軋世! ここまでだ!」

 そう言った連塔は曲がり角を曲がり、軋世に向けて銃口を向けた。それで笑った軋世はスイッチを押す。

 パン! と、何かがはじける音がした。

 だがそれで破裂をしたのは連塔の後ろにいた警官の頭であった。

 四人連れてきたうち二人の頭が破裂したのだ。連塔はそれを横目で見ると、拳銃の引き金を引いた。

「危ない!」

 そう言い世夜は軋世の前に出る。連塔はそれでも構わずに引き金を引いた。

 世夜は体を数箇所撃たれ、軋世も撃たれる。

「術式は研究所で解除してきたんだよ」

 連塔はそう言う。

 そうすると、連塔は一気に体の力が抜けていった。

「後は君らに任せる……」

 初めて人を撃った。

 この世界を守るためとはいえ、連塔は初めて人を殺したのだ。

 後残る軋世の仲間は一人だけであるし、軋世がいないと、一人では何もできないやつばかりだ。

 これでほとんどが終わった。後は残りの二人の警官に任せることにしようと思い、連塔は大きく息を吐いた。

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