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世界の終わりを望む人たちへ……  作者: 岩戸 勇太
ほころびが見える
16/21

軋世の変化

 遼子と世夜は一緒になって歩いていた。

「最近、軋世の様子がおかしいよね」

 世夜が言う。彼女も軋世の様子がおかしい事には気づいているのだ。いままでの軋世の事を総合して考えると、何か恐ろしい事でも企んでいるのではないかと思う。

「もしかしたら、軋世の優しさかも、『これから死んでもらうんだから、死ぬ前くらいにはいいめを見せてあげよう』って感じで……」

 遼子は言う。

「それならそれでいいです。でも私達はこんなところに連れてこられても、何も楽しいとは感じません」

 こんな事をやっているヒマがあるなら、世夜は重要人物のお相手をしているほうが、何倍も有意義であると感じていた。

 こんなところで油を売って、時間を、無為にするのは世夜だって望んでいない。

 お客の相手をしている時のほうがよっぽど充実をしていると思うくらいだ。

 世夜がその事を不満に思っているところ後ろから軋世が声をかけてきた。

「二人共! ここにいたか!」

 軋世は笑顔で言う。

「口元も笑ってる……」

 遼子が言った。口元も動いているのは、軋世もこの事を楽しんでいるという事だろう。

「二人共、一緒にコーヒーカップに乗ろう」

 軋世の提案に、二人は疑問を持ちながら頷いた。


 軋世は無理をして笑っている。それは遼子にも世夜にも分かる。軋世は何度聞いても、今回遊園地に二人を誘った事に他意などはないと言うだけである。軋世のこの行動の意味は世夜と遼子にはまったく分からない。

 今も、三人でコーヒーカップに乗っているのに、軋世はニコリともしないし遼子と世夜も楽しいとは感じない。

 普通に遊園地で遊んでいるだけの様子の軋世を見て、疑わしげにしていた。


「今日は楽しかったか?」

 そろそろ日も落ちてもうすぐで夕方になろうという時に、三人は食事を取っていた。

「特に……」

「楽しくなかったです」

 二人は口々にそう言い、それに軋世は肩を落とした。

「そろそろ、私たちをここに連れてきた、本当の理由を教えてくれますか?」 

 世夜がそう言う。軋世は答えに困った。

『君らに楽しんでもらうため……と言っても二人共信用しないだろうな……?』

 そう考えて唸る軋世。だが、いまさら飾ったってしょうがない。軋世は心の底から思っている事を言う事に決めた。

「怖かった……みんながバラバラになっていきそうで……」

 当夜が死んだときから、みんなの感じが変わってきたと感じた。

 当夜の事が好きだった遼子。世夜も軋世も、その事には気づいていた。

「俺には人の心はない……なかったはずだった……」

 最近になって胸がチクリと痛むことが増えたし、当夜を殺された事に怒りを感じるようになった。

 昔の自分ならそんな事なんて考えなかっただろうと、思うような事が増えてきた。

「どうすればいいか分からない。こんな感覚は初めてだ」

 自分の中に生まれた良心の呵責に苛まれるのは初めての事だ。

「洗脳が解けてきたのかもしれんな……」

 教授が後ろからやってきて言った。

「昔、八幡のビデオを見せられた事があるよ……やはり君だったのか……」

「教授……?」

 軋世はそう言い、教授に向けて言った。

「何か、隠し事か?」

「そんな事を言えるのかね? 君が」

 教授は言う。

「伝えるべきと思ったことは伝える。だが伝えるべきでないと思った事は……」

「そんなにムキになるなんて君らしくないな」

 教授は軋世の言葉を待たずに言った。

「我々がバラバラになりそうか……それもよかろう。中核の人間がこうなってしまっては仕方がない」

「教授……俺に何を隠している?」

 軋世はいままで冷静沈着であった軋世からは考えられないような口調で言った。教授はそれを見て小さく息を吐いた。

「私だって同じだ。伝えるべきと思った事は伝えるし、伝えるべきでないと思った事は伝えない。だが……」

 そこまで言った教授はこの遊園地から出て行く方向に歩いて行った。

「知りたいだろう? ビデオテープがあるから見せてやるさ」

 教授はそう言う。軋世はその教授についていった。

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