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短編

リセット

作者: 荻雅 康一

 扉を開ける。中に入り、振り向きながら扉を閉める。簡単な蝶番で鍵をする。そして、シャツを上げながらベルトに触れた。馴れた動作でベルトを外す。ズボンのボタンを外し、ファスナーを下ろす。そして、ズボンを下ろしながら、便座の縁に汚れがないか目視。大丈夫。


 ひやりと冷たい縁が太股の裏に当たる。背筋が伸びた。膝に肘をついて前屈みの体勢になる。そして一発、屁をする。気持ちのいい屁だ。下っ腹が少し楽になった。一息吐く。顔を正面の扉に向ける。シミが一つあった。何かが飛び散った跡のようだ。続いて、鍵を見る。古びた蝶番だ。とめているねじの周りがサビで黒ずんでいた。


 そこで、溜まっていた第一陣が移動を始めたのを感じる。急いで力む。「う……」、と思わず声が出た。しかし、そのおかげか第一陣が外へ出る。水の中へ落ちる。息を潜めるように周りの音を聞く。トイレの窓の外の車の移動音が、静けさを引き立てた。良かった。誰もいない。ああいう思わず出た声というのは、恥ずかしいものだ。


 視線を下げる。タイルの床を見る。綺麗に整列されて並んでいる。タイルとタイルの間のゴムパッキンも年季が入っていた。古いなと感じた。そして、これをはめ込んだ職人たちは何をしているのかとどうでも良いことを考えた。青色のつるつるとした質感のある素材の一般的なタイルだ。足で叩いてみる。すると、第二陣の準備が出来たようだ。妙な思考を捨て、力を入れる。と同時に誰かがトイレにやってきた音がした。それに気づき、少しゆるむ。また一からになってしまった。


 入ってきた誰かは、小さい方のようだ。すぐに足音が止み、ズボンのファスナーをいじる音がした。


 そうしてから、いやな違和感を下っ腹に覚えながら力んだ。第二陣を順調に排出し始める。中々手強い。もう一回力を入れる。出掛かるのがわかる。


 しかし、うまく行かなかった。早足の大きな音を立てながら誰かがまた入ってきたのだ。あ、と思うのは遅かった。キュッと閉めてしまい一部分だけしか水の中へと落ちなかった。下腹部に不快さいっぱいの第二陣が残ってしまった。これは辛い。


 一息吐いて、仕方ないとまた力み始める。二番目の誰かは、隣の個室へと入ったようだ。慌てた音を立てながら、扉を閉める音がする。そして、ズボンを下ろし、座ったようだ。間もなく、盛大な音を立てた。おなかが緩いようだ。大変だなぁと他人事を思いながら、第二陣を負けじと出す努力する。隣は一段落ついたらしく、大きく息を吐くのが聞こえた。


 そうしてようやく第二陣のすべてが出た。大物だった。朝から貯まっていたモノが出たようだ。息をつく。そこで初めて遠ざかる音が聞こえる。小さい方の誰かはいつの間にか終わっていたようだ。手を洗ったのだろうか。世の中には、小さい方は平気だと洗わないに奴が居るらしい。迷惑な話だ。


 すっきりとした感じに第三陣がないのを確認する。屁が出た。良い音だった。壁に掛けてあるトイレットペーパー見る。斜めに大きく千切られている。前に使った奴は、ずいぶんと荒い奴だったのか。芯に近いのも確認した。足りるだろうか。


 替えのトイレットペーパーを探す。すぐに見つかった。一つ新品がある。どうやら大丈夫のようだ。


 大きく千切れたトイレットペーパーを掴み、必要な分だけ両手で巻き取る。カタカタ、とふたの部分が音を立てる。少し身がしまった。


 適当な長さで切り取り拭いた。それを幾度か繰り返す。納得したところで止めて立ち上がった。ズボンを引き上げてベルトを締める。もちろん、ファスナーも上げておく。扉と反対を向き、便座を見る。そしてレバーを引いて流した。トイレットペーパーは翻弄され、やがて吸い込まれて流された。


「さぁ、今日もやるか」と心の中で呟く。


 その後、扉へ向き鍵を開け、外へ出た。


勢いで書いた。反省はない。後悔はしている。

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― 新着の感想 ―
[一言] さて、今日の仕事も終わったし、家に帰って気分をリセットするかー的な話を漂わせる冒頭。しかし描写がズボンの方に行ったところで「おや、おやおやおや……? これは……大便だあ!」と、思わず声を上げ…
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