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連邦総局シリーズ

明日は来るのか

作者: 尚文産商堂

世界は変わった。

住み慣れた場所は、ゴミ溜めと化してしまった。

誰もが予期できなかった、次元を超えた空間遷移は、向こうの世界のゴミを、こちらの世界に押し付けるということがきっかけだった。

高次元の生命体が、どのような物なのかというのは、空間遷移をしてから1年が経った今でも分かっていない。

分かっているのは、その時、その場所にいた人たちは、全員消息不明となっているということだ。

誰彼問わず、貧富問わず、真に平等に、ただそこにいたからという理由だけで、いなくなってしまった。

それを甘受せよと言われても、自分には到底することができない。

妻が遷移に巻き込まれた身だからだ。

ただ、良かったこともある。

娘は、その時には自分の職場見学に来ていたため、無事だったということだ。

明日も、きっと将来にわたって変わることのないこの場所に、もう未来はないだろう。


「お父さん」

「どうした」

短い会話。

「なんでもない」

自分の一人娘の声が、頭に響いてくる。

「そうか、もう朝だったのか…」

単身赴任をしていた自分だが、今は会社から許可を得て、社宅で娘との二人暮らしをしている。

朝ごはんを作るのは娘の担当だ。

「いつも通りでいい?」

「ああ、いいよ」

布団から起きあがって、時間を見る。

ちょうど6時のニュースをするところだと、耳にテレビの声が聞こえてきた。

「あそこは変わらないか…」

ニュースでは、東京閉鎖地区について話していた。

とうとう、国家主権の一部を、国連から作りかえられる連邦に移されるという時期まであと半年を切った。

東京閉鎖地区には、監視部隊として軍が置かれる予定になっている。

自分が作っているのは、その監視部隊が使う予定の武器だ。

世界の大混乱は今なお続いているが、日本国内に限っては、あまり変わっていない。

そもそもお上を当てにしないという人が多い、自分が住んでいる地域では、独立独歩で行政や司法や立法をしていた。

今や、新首都として制定された場所でもある。

だからだろうか、犯罪も増えてきていた。

「変われないんじゃないかな」

「そうだな…」

妻の写真は、まだ大事に壁にかかっている。

自分との結婚式の時に撮った写真だが、今やこれ一枚しかない。


それでも自分は、娘と時を過ごしていくだろう。

これからも一緒にいくだろう。

明日はきっと来るから。

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