表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

このおっさん、マジでツンデレ。

作者: 朝比奈和咲

 ドライブスルーがあるハンバーガー屋で長くバイトをしている大学生の私。

 ドライブスルーってメニューの看板があるところで車を停車させて注文を言ってから、お会計するところまで行って、そこでお会計を済ませて商品を貰うというのが基本の流れなんだけど、それを知らないのかいきなりお会計のところまでやってきちゃう人がたまにいるんだよね。特に夜中。

 その日もそんな客がいたんだけど、会った瞬間がものすごく感じが悪くて、イラっとしたわけ。高級車で来店、多分40代後半のメガネのおっさんでビシっとしたスーツを着た、見るからにエリートマン。声は低くて小さいから聞きづらいし、何よりムカついたのはその口調。咳払いをして、

 「携帯クーポンってこれだけ? まあいいや、メニューさっさと見せて」

 ものすごく上から目線な態度。うっわ、こいつぜってえ私のこと下に見てるし、ってすごく不快に感じた。

 イライラを隠しながらレジの前に立っていたんだけど、しばらくしても何も言わないし、メニューをただずっと見てるだけ。その間にドライブスルーのお客が一人来た。

 やっと注文を言い始めたらやっぱり声が小さいし、低いし、おまけに早口。聞き取れなかったからもう一度聞き直すと、咳払いしてめんどくさそうに言いなおすし。しかもその言い方が今度はえらくゆっくりに言ってまるで喧嘩売ってるかのよう。

 さらに氷水をMサイズでストローさしてくれとか言いだすし。マジで注文も面倒な客。

 注文するだけで時間がけっこう掛かったから、厨房ではすぐにハンバーガーとか出来上がる状態になっていたわけで、会計を済ませたら一分以内に商品が渡せるようになっていた。さっさと商品渡してこんな奴とさっさとお別れしたかったのに、その客は

 「氷水だけ先にくれ」

 とか言って、私が渡すと後ろにお客が待っているのにそこで氷水を飲み始めやがった。商品貰って車を前に動かしてから飲めばいいのにとマジで思ったら、何種類もの錠剤と粉薬(こなぐすり)をその場で飲み始めた。ああ、なるほど、この人喘息(ぜんそく)やらそういう病気を持っていたのね。無駄に多い咳払いも低く小さな声もそういうわけか、納得。

 よくよく考えてみると、お客がこっちのペースに合わせる必要は全くない訳で、お客は自分なりのペースで注文しても全く悪くないわけじゃん。店側は何秒以内に注文を受けて、何秒以内に商品を渡してとかをいつも気にしているんだけど、速さなんか全てのお客が求めているはずがないわけで、そんなのでイラっとするのも変な話なんだろうな。

 Mサイズの氷水も全ての薬を飲みきった時には空になったらしく、その空になった紙コップを私に渡してきたら、「ぬるい水を三分の一だけいれてくれ」と言ってきた。なるほど、素直に私はそれに応じた。ごめん、さっきは氷を入れすぎた、と言いたくなった。

 それを渡して、すぐに先ほど注文された商品も渡したら、そのおっさんが咳払いして

 「もう出来上がったの、なるほど。早いね、ありがとう」

 と言ってさっさと車を発進させて行った。その「ありがとう」が妙に心地よかったのは、多分、あのおっさんがマジでツンデレなのだからだと思う。


 お読み頂きありがとうございました。

 ご意見、ご感想等、何かあればどうぞお気軽に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おっさんにときめきました。ああいうのダメです、ズルイです、落ちます。 [気になる点] 「」の時一字下げるのは何かこだわりがおありなんでしょうか? 個人的な好みで申し訳ないのですが、あまりよ…
2011/05/04 20:44 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ