Report 1010.111.0100.0100.01.0110.000.0
とある文明についての報告。その文明では性的なものに対して規制を布いた。情操教育にとって有害性があるものは、特定の年齢未満の者に対して示してはいけないという規制。やがて規制は強化された。画像や映像など、それは実際の人物が演じているのではないイラストについて、特定の条件を満たすものを規制するというものであった。児童を想起させる登場人物に性的行為または性的に連想されるもの、近親と想起される者に性的行為または性的に連想されるもの、獣姦行為を連想されるもの。これらの登場人物はイラストである。実在の人物ではない。非実在のものであっても、実在の人物に行うことが禁じられている行為をさせることを禁じた。表現の自由の侵害を訴える創作家もいたが、児童の性被害を防止する活動によってこれらが実施された。なお、獣姦行為についてはその文明における一部の宗教という特定の集団が禁じている行為である。やがて規制は強化された。上記のようなイラストや映像を販売することを規制した。これは一部の金融機関やそれに類する業態の企業、そしてそこに働きかけた一部の活動家の手によって行われた。これらの販売に対する通貨の支払いを拒否することで、販売者がこれらを取り扱わないようにさせた。やはり表現の自由を求める創作家や利用者はこれに反対の声を上げたが、収益性を奪われた創作家たちはそれらから離れていった。やがて規制は強化された。殺人や人を傷つける行為を映像またはイラストによって示すことが禁じられた。これらについては非実在性人物の性的規制とほぼ同時期から規制はされおり、年齢制限が課されていた。これがさらに規制され、公衆での提示や販売が禁止された。さらに殺傷行為を描いたものは文字情報であっても禁止された。やはり表現の自由を守ろうとする創作家たちは抵抗したが、人道に外れていると規制派は糾弾した。その結果、それ以前にあったサスペンスや子ども向けアニメは殺傷行為を行わないもののみになっていった。やがて規制は強化された。身体的な殺傷を伴わなくても精神的に苦痛を与える行為を描いたものが禁止された。結果、あらゆる物語は登場人物が身体的・精神的苦痛を受けないもののみになっていった。歴史上の実在の人物についても、明確に本人の日記などに記載があるものを除いて、作者の意向で本人が苦悩していたなどといった不正確な記述は禁じられた。歴史年表のようなものしかなくなった。「むかしむかしあるところにお姫様と王子様がいました。その国の国民はみな健やかに幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。」人々は買うに値する物語がなくなったことに気づいた。それは規制を推進した人々も同様であったが、苦痛なき世界のために受け入れた。やがて規制は強化された。表現上のものに限らず、現実において他者を身体的・精神的に傷つける可能性のある行為が禁じられた。実際に傷つける行為は以前から規制されていたが、可能性のある行為までが禁じられた。傷つけることを意図していない行為であっても、結果的に相手が傷ついたと感じた場合は行為者が罰せられた。実際に相手が傷ついたと主張していない場合でも、その可能性があれば罰せられた。可能性の有無についての判断は、ある機械構造体によってなされていた。死や苦痛を描いたいかなる宗教も禁止されていた。倫理や正義は既に彼らの手を離れていた。いかなる身体的・精神的苦痛も禁じられていた中でその罰がどのようなものであったのか、その記録は残されていない。この規制がどのような勢力によって推進されたのか知っている人はほとんどいなかったが、反対の声を上げる危険を冒す者はいなくなった。やがて彼らは沈黙した。目を合わせることもやめた。直接的な接触は当然避けた。生殖行為は行われなくなったが、工業的に繁殖は行われた。ことばを失った彼らはやがて自らの持っていた文明の利器の原理や使い方もわからなくなった。子どもや年少者に対して語り掛けることもやめたため、世代交代を経ていく中でことばも文字も文化も失った。やがて離散した彼らは、野生の獣から逃げ回る生活を送るようになった。ことばを知らない子どもたちは、壊れた機械構造体を瓦礫の上に祀った。文明は滅んだ。




