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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
パーティとは?
73/73

73.結論、何もかも足りない。

 ぜんぜんレベルアップじゃなかった。


 ダークネスで影を作りシャドウウォークで移動する、という新たな技を編み出した僕だったが、地下ダンジョンの中はどこもかしこも暗いから、影を生み出す必要性がなかった。


 第一ダンジョンの七階層以下は明るくて広いところもあるから、新技を使う機会もあるかもしれないけど、黒いモヤモヤを出した時点で、そこに出るぞ! とバレバレなのだ。

 ダークネスを発動しつつ、別の場所に出現するというブラフに使うことはできるかもしれないけど、今のところそんなことが通用する知能の高いモンスターと戦う気はない。


 せいぜい、シャドウウォーク発動中にライトで照らされても、ダークネスを使って影から脱出できるようになったくらいだ。それも、ネニトスと二人で行動していれば然程使いどころのないものだ。

 やっぱり、基礎魔法三つしか使えないというのが駄目だ。やるならフロア全体をダークネスで包み込めるくらいにならないと、レベルアップとは言えないだろう。


 魔法の実験も、ブラックホール小の効果範囲がわかっただけで力尽きてしまったから、安全な使用方法を探ることもできなかった。


 魔法の技力を上げるための魔力が足りない。魔力を鍛えるための体力が足りない。結論、何もかも足りない。


 わかっている。これはもう地道に筋トレから始めるしかない。わかってはいるが、ないない尽くしの僕に一番足りないのはヤル気だ。ヤル気のないやつにとって、地道な筋トレほど困難なものはない。


 僕は微妙にしょんぼりした気分で、第一ダンジョンの二階層に来ていた。


 自分自身は足りないものだらけなのだから、足りないものはアイテムで補えばいいじゃない。ということで、今日の目的は新アイテムの検証だ。

 煙玉の使い勝手が良ければ、今後は定期購入を考えよう。あの大きな店主夫婦なら、定期購入割引なども交渉できそうだ。


「丁度良いのが来た」

 前を歩いていたネニトスが天上を見上げて呟いた。


 僕も見上げてみれば、柱の上に猿顔の獅子がいやらしく笑っている。ライトの灯りから隠れる気もなく僕らを見下ろしていた。

 ブレインイーターやクローラビットならアイテムを使うまでもなかった。ようやく、実験に使えそうなモンスターが現れてくれた。


 最初に見た時はビビったけど、一度実物を見てしまえば気味の悪い猿顔に驚くこともない。

 楯と斧を構えたネニトスを警戒して、マンティコアは空中に跳び上がったままこちらの様子を伺っている。


「空中にいるから、当てづらいな」

 と言うか、僕の力だと何を投げても確実に届かないから、シャドウウォークで近付かなければいけないのだが、フラフラと空中を彷徨っていられては狙いも定まらない。

 それはそう。マンティコアだって馬鹿じゃないのだから、一所に留まって的になってくれるわけはなかった。


「混乱だったら効果範囲広いからいけるんじゃないか?」

「そうだな」


 道具屋の店主の話によれば、煙玉は触るだけじゃ破裂しないけど、ぶつけるなら木の葉にぶつかっても破裂するという。どういう素材で出来ているのかわからない不思議構造だ。

 だから、マンティコアの羽の先っぽにでも当たれば破裂する。効果範囲の広い混乱なら破裂さえすれば効果はあるはずだ。


 前回と同じように、ネニトスが地上でマンティコアの気を引いている隙に、僕が背後に回り込むことにする。

 僕が影の中に消えるのを見た途端、今日のマンティコアは早速ネニトスに攻撃を仕掛けてきた。先手必勝タイプのようだ。それでも、やはり戦い方は同じ。一撃離脱を繰り返し、天井付近で地上の様子を伺うことが多い。


 ネニトスは盾でマンティコアの毒尻尾を払い除けながら逃げ回っている。

 僕はシャドウウォークで天井まで登り、影の中から煙玉を投げる場所を計る。


 あまり近くでぶつけても、自分にもかかる可能性がある。煙も影の中までは入ってこないだろうが、例によって、投げる時は上半身を影から出していないと当てられる気がしない。混乱は指先にでも付けば効果が出てしまうという。影の中でフラフラになったら溺れ死ぬかもしれない。


 ある程度の距離を取って、でも遠くても当たらないかもしれないから、あ、ネニトスにも当たらない位置にしないといけない。影の中からだと距離が計りづらいし、でも外に出て投げるとマンティコアに勘付かれるかもしれないし……


 はい、わかってました。


 体力や技術が無ければアイテムを使いこなすこともできない。アイテムでヤル気のなさを補うなんて現実逃避だった。


 影から出たり入ったりを繰り返して距離を測りかねていると、地上では逃げ回っているネニトスから、早くしろという視線を向けられる。

 もうわからないので、ネニトスともマンティコアとも距離が離れたところから、黄色い煙玉を投げてみた。


 その途端、マンティコアがこちらを向いて空中に跳び上がった。

 あ、これ勘付かれてたな。と、飛び立つマンティコアを見た時に僕もわかった。


 影から出たり入ったりしていたのが拙かった。僕が何かしそうな感じを察して、マンティコアも警戒していたのだろう。

 コウモリのような羽をバサバサされた風で、投げた煙玉の軌道が変わる。


「あっ」

「やべ」


 二人の声が重なったと同時に、煙玉は見事にネニトスに命中した。


「ぶわっ……あへ、こぇ、ほんほに、ふやふやになるぅ~」

 一瞬広がった煙はすぐに消えて、泥酔したような千鳥足のネニトスが出来上がった。


「あばばば、ヤバいヤバいヤバい」

 大急ぎで影の中を泳ぎネニトスの元へ急ぐ。


 肝心のマンティコアはピンピンしている。動けるのは僕だけだ。五分程度で効き目は切れるけれど、ヘロヘロの仲間を庇いながら一人で飛行型モンスターと戦う力は、僕にはない!!


「あっち行け!!」

 ネニトスを狙って舞い降りたマンティコアを、剣を振り回して追い払う。剣術もくそもあったもんじゃない。


 黒革のベストのおかげで怪我はないけど、毒の尻尾で何度か叩かれたからだんだんと腕が痺れてきた。ベストの毒耐性では、マンティコアの麻痺毒は完全には防げないらしい。


 マンティコアがセオリー通り天井付近で様子見してくれている間に、僕はネニトスを抱えて帰還の輪を発動した。

 視界が途端に明るくなる。地上にある第一ダンジョン正面の所定の場所に放り出された。

どうでもいい設定ですが、煙玉の外側の素材は魔物素材です。破裂するというより、衝撃というか一瞬だけ触れられるとパカッと開く植物型モンスターの葉っぱを利用しています。


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