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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
パーティ結成!
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62.もうちょっと泣きたい

「テメェよくも逃げてくれたな」

 またもや女性は鬼の形相で僕に迫ってくる。今にも胸倉掴まれそうな勢いだから、僕は思わずネニトスの後ろに隠れた。


「いや逃げるって普通、というかあんなことでなんで怒って」

「あんなことだぁ?!」

「ごめんなさいごめんなさい、でも、ホント、何でですか」


 ネニトスを挟んで言い合い、にもならずに僕が意味も分からないまま謝り倒す。未だに何でこんなブチギレられているのかさっぱりわからない。


 その時、盾にしていたネニトスが絶望的な顔をしているのに気付いた。

「ヨナハン、おまえまさか……」


 そうだった。ネニトスは女性問題でパーティ解散した経験があるのだった。二回も。

 僕の場合はぜんぜんまったく色気もへったくれもないんだけど、状況だけ見れば痴情の縺れだ。新パーティ結成直後に相方の女性問題発覚って、ネニトスの古傷を抉る案件だ。


「違う違う違う、そういうやつではない、彼女はこの前……」

「おい!!」

「言わない言わない言わない、誰にも言ってません!!」


 ネニトスに事情を説明したいのに、あの日のことを話したら殺すみたいな目で睨まれて、僕は双方に向かってブンブン首を振るしかない。


「でも、だから、本当に男女のもめごと的なのではないから!! これは、あの、そのぉ……」

 どうして、僕が二人に対して必死に弁明しているのか、僕の方が教えてほしい。事情を説明するも何も、僕がまずもって何もわかっていないのだ。もうちょっと泣きたい。


 ただ、僕の必死さはネニトスに伝わったようだ。

「あー、まあ、痴情の縺れではないんだな?」


「「違う!!」」


 そこは酔っ払い女と声が揃った。


 間に挟まっているネニトスは思わず仰け反ったけど、流石は無暗に女性問題を経験してきていない。冷静な表情で、僕と酔っ払い女を押しとどめた。


「わかった、じゃあ場所を変えよう、俺ら飯食いに行くとこだったんで、おねえさんも一緒に」

「なんであたしが……」

「目立ってるから」


 ネニトスの言う通り、ここはギルド支部の中だった。酔っ払い女の大声で注目を集めている。しかも、ネニトスもモテ過ぎるパーティクラッシャーという残念な知名度を持つ男だ。


 ついでに、周囲のヒソヒソ声を聞くと、僕と酔っ払い女がネニトスを取り合っているような構図に見られている。

 なんで? ネニトスを挟んでいるせい?

 僕にも大変不名誉な状況だ。直ちに逃げたい。


 酔っ払い女も状況がわかったようで、周囲を睨みつけてから、舌打ちをしながら場所を変えることは了承した。




 場所は変わって、第一ダンジョンから然程遠くない飲み屋に来た。

 ネニトスに案内された店は、両側にずらりと小さな飯屋が軒を連ねている狭い通りの中の一軒だった。


 初めて歩く道だから、僕はもっとキョロキョロしたかったのに、隣にめちゃくちゃ不機嫌な知らん女性がいるから、始終ビクビクするしかなかった。

 そう言えばこの酔っ払い女、名前すら知らない。


「マスター! 奥の小部屋使っていい?」

 まだ開店したばかりなのか店内に客はあまりいない。ネニトスの声に、カウンターの奥から小さいオッサンが顔を出した。たぶんここの店主だ。


「よお、ネニトスじゃねえか、まだ掃除してねえから、テメェらで掃除すんなら使っていいぜ」

 開店したばかりどころか開店前だったらしい。じゃあ何で酒飲んでるやつがいるんだと思うけど、開店時間なんてきっちりと決まっていないんだろう。


 ネニトスは店主と親しく喋って、何故かバケツと雑巾を渡されて奥に通された。

 店の奥には個室になっているところがあった。入り口はスイングドアと言うか板一枚の簡素なものだが、他のテーブルとは離れているから、盗み聞きの心配はなさそうだ。


 店長に言われた通り、ネニトスは準備されてないテーブルと椅子を拭いて座れるようにした。

「俺、料理貰ってくるから」


 料理もセルフサービスらしい。これが居酒屋の普通のスタイルなのか、個室だからなのか、この店ならではなのか、僕はわからない。まともに飯屋を利用したことも数えるほどしかない田舎者だからね。


「あ、じゃあ、僕も手伝う……」

 この世界の居酒屋のシステムが気になるのと、三人分持ってくるのは大変だろうと思い、僕も腰を上げた。


 あと、この恐い人と二人にしないでくれという目でネニトスを追いかけたけど、くるりと方向転換されて個室に戻されてしまう。


「いいからいいから、ヨナハンは俺が戻るまでに話し着けとけ、二人ともエールで良いよな」

 そう言ってネニトスは個室から出ていってしまった。


 この国には飲酒に年齢制限はない。飲み過ぎは良くないと、幼い子には飲ませるべきではない、という良識があるだけだ。


 だから僕らも飲んでもいいんだけど、僕はあんまりお酒好きじゃない。

 前世でもすごく好きってほどじゃなかったけど、今世の一般庶民の飲む酒はほとんど濁酒だから、田舎の自家製酒なんて絶対に飲まなかった。この街に来てようやくまともな酒に会った。


 僕ら、というか酔っ払い女に気を遣って個室にしてくれたのは有難い。でも、口下手人見知りの僕に、ほとんど怒鳴られた覚えしかない女性と対話して和解せよなんて、非常に困難なミッションである。

酒蔵で作られたまともな酒は街中でしか流通していないので、商店のない田舎で飲まれているのはほぼ自家製の濁酒です。お酢作りのついでにできるくらいの酒なので美味しくはないです。


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