60.なんで僕と同じ轍を踏んでんだ?!
「剣、剣どこ……っ」
周りを見回しても飛んでった剣が見つからないから、僕はナイフを取り出す。剣が通じなかった相手にナイフでどうにかなるとは思えないけど、他に武器がないから仕方ない。
地上では落っこちて態勢を崩したモノセロスに、ネニトスは再び斧を振り下ろしている。
「え?! 硬っ!」
だが、ネニトスの斧もモノセロスの後ろ足を少し切っただけに終わり、しかも、蹴りをくらって斧を吹っ飛ばされる。
なんで僕と同じ轍を踏んでんだ?! と思ったけど、先に失敗した僕にこのツッコミをする資格はない。
間抜けにも二人して武器を失ってしまった。やっぱり僕らにはまだ早い獲物だったのかもしれない。
「やっば……!」
ネニトスはどうにかして斧を拾いたいようだが、モノクロスもわかっていて、落ちた斧の上に立ち、角を振り回してネニトスを近づけさせない。
じゃあ、僕が影の中から斧を拾うか? いや、あの暴れっぷりでは手を踏ん付けられるのがオチだ。だったら自分の剣を探しに行く? それともベストの性能を信じて僕が盾になる?
「ど、どうすれば……」
戦闘経験の無さで決めかねる僕だが、閃いた。
「あ」
大きな声を出さなかったのは我ながら上出来だ。
モノセロスはネニトスの斧の上を陣取って暴れているが、ネニトスが背を向けたらすぐさま突進するつもりだ。
それを察しているから、ネニトスも微妙な距離で盾を構えて動けずにいる。彼も経験値が高いわけではない。
僕は察知されないよう影の中を移動して、モノセロスとの距離を慎重に測る。
森の中で練習できなかったから、ぶっつけ本番だが、このベストを着ていればできるとは思う。
位置を見極めて、僕は影から飛び出した。
「ネニトス下がって!」
「お、おお!?」
ネニトスは驚いた様子だったが、言う通り後ろに跳び退きながら、反射的に盾を大盾に変える。モノセロスの突進に備えたのだろうが、僕としても懸命な判断だ。
モノセロスは予想通り突進の構えを見せて、ぐっと首を下げた。
「ここだ!!」
僕は叫ぶと同時にブラックホール小を発動した。左手を前に突き出したけど、黒い渦が出たのはモノセロスの頭があったところだ。
バチッと一度感電するような音がして、すぐさま黒い渦は消失した。
頭を失くしたモノセロスの身体がドッと倒れる。
「よっ、いや、う~ん……」
僕はよっしゃと歓声を上げようとしたけど、モノセロスの状態を見ると、成功とは言い難い。
本当は一歩前に踏み出したところにブラックホールを出して、首だけを消し去るつもりだったけど、頭が丸ごと消えてしまった。一番高く売れる一角が半分しか残っていない。
「すごいじゃん! やったな!」
ネニトスは盾を小さくして駆け寄ってくる。ブラックホールを思った通りの場所に出せるか微妙だったから、大盾を構えてくれたおかげでネニトスを吸い込む心配をせず済んだ。
「でも、角も無くなっちゃった」
「いいよいいよ、身体も売れるし、あのままじゃ撤退する隙もできなかった」
確かに、武器もないから攻撃もできないが、逃げたところですぐに追いつかれていただろう。
帰還の輪で緊急脱出するにも多少の時間がかかる。たまにモンスターから逃げようとして帰還の輪を使い、モンスターも一緒に地上に連れて来てしまうという事故も発生するらしい。
僕らの今のレベルでは、モノセロスを倒せただけで上出来だ。
「さっきの魔法、暴走させたってやつだろ? ちゃんと使いこなしてたじゃん」
ネニトスからはよく見えなかったようだ。一瞬黒いものが出たと思ったら、モノセロスの頭が無くなっていた。
「アイテムのおかげだよ、自分から離れた場所に出したの今回が初めてだし」
ブラックホールを自分から離れた場所に出すというのは、前々からできたらいいなと思っていた。グローブだけじゃなくベストも装備したおかげで、魔法の技力がぐっと底上げされて出来た芸当だ。
しかし、狙いを定めるのに時間がかかるし、発動にも時間がかかった。今回、上手いこと当たったのは、ネニトスが足止めしててくれたおかげと、モノセロスが負傷して動きが鈍っていたおかげだろう。
「まだぜんぜん実戦で使えるレベルじゃない」
なんだか一気に力が抜けて、モノセロスの横にしゃがみ込む。これを運ぶのは骨が折れそうだ。
「それを言うなら俺も、予備の武器忘れて来てた……」
いやそれは戦闘力以前の問題じゃないか? 買い物行くのに財布忘れる感覚かもしれないけど、モンスター狩りは命かかってるんだぞ?
「荷物整理しろよ……でも僕も予備はナイフしかない」
僕も人のことは言えない。まだ複数の武器なんて使いこなせないと思ってたけど、武器を失った場合のことを想定していなかった。
「準備不足だな」
「あと作戦も足りなかった」
「ああ、ちゃんと相談するべきだった」
「まだまだ経験不足だ」
「そうだな」
反省点はたくさんある。自分たちより上のレベルに挑むのはまだ早かった。
でも、とりあえず、目の前には今日の大成果がある。
二人で顔を見合わせると、自然と口角が上がる。
「やったな」
「うん、ラッキーだ」
「二人して武器吹っ飛ばして、フフッ、よく勝てたな」
「く、ふふ、ほんとだよ、何で同じことする」
拳をぶつけ合って健闘を称え合う。
戦っている時は死ぬかと思ったけど、生き残った今は、自分たちの間抜けさに笑ってしまう。
「それでだけど」
一通り笑ってから、ネニトスと目が合った。
「俺とパーティ組まないか、ヨナハン」
僕もそれは考えていた。
二人揃っても経験値が足りないけど、一人よりはマシだし、経験値が足りない上に厄ネタな僕たちを拾ってくれるやつは、たぶんお互いしかいない。
「よろしく、ネニトス」
僕らはもう一回拳をぶつけ合った。
不安の方が多いけど、祝!パーティ結成!
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