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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
初心者講習
6/20

6.むしろ才能無いって言われているようなもんじゃないか

 いや、闇ってなんだよ。


 午後の自習の時間、僕は非常に困っていた。

 この時間を使って補修を受ける予定だったのに、講習担当のみなさんには、僕の謎属性についての資料を探してもらっているため、他の講習生と一緒に一旦自習ということになった。


 しかしながら、属性が謎なので、明日の実地訓練の準備と言われても、何を用意すればいいのかもわからない。


「ヨナハンはレア属性だし、レベルも高いし、羨ましいよ」

 寮の同室で、同じ講習生のケルビンに言われた。彼はレベル二で魔法属性は水、魔法の素質はあるが魔力四で技力五だからまだ魔法は使えない。


 ついでに、僕より一つ上の十六歳で体力と戦力も並みだけど、コミュ力は僕の十倍はあるので、口下手人見知り内弁慶の僕とも仲良くしてくれる良いやつだ。


「そうでもない」

「いや、高いだろう」

「ケルビンも鍛えればすぐ追いつくレベルだろ」

「そうだけど……ハア、クールだなおまえ」


 いやクールではない。

 前世の記憶が無かったら、今頃たぶん調子に乗りまくっていた。前世の記憶があっても、神様との会話がなければ調子に乗っていたかもしれない。


 しかし、残念ながら僕には神様に言われたことがある。


 HPとかMPとかは魂に応じて盛れるだけ盛っとく、と言われたのだ。それでこの数値だ。


 つまり、神様が盛れるだけ盛ったにも関わらず、僕の実力は素人に毛が生えた程度だということだ。調子に乗るどころか、むしろ才能無いって言われているようなもんじゃないか。


 僕が自分の実力に早くも行き詰まりを感じている間、ケルビンも非常に悩まし気な表情で杖と剣を睨んでいた。


「どっちを持つべきか……実力検査の結果で決めようと思ったのに、結局どれもパッとしないから……」

 こんなことを悩んでいるのはケルビンだけではない。明日のダンジョン実地訓練に参加する全員が、だいたい難しい顔して悩んでいる。


 明日の実地訓練では、街外れにある初級ダンジョンの二階層まで潜るらしい。そこで基本的なダンジョンの仕組みと、モンスターとの戦い方を教わる。

 座学の復習的な内容になるだろうが、実地である。初級ダンジョンの二階層だって中型くらいのモンスターは出るから、舐めてかかると死ぬ危険だってある。


 講習生たちは武器の携帯は一つだけ許されている。なにせ人数が多いから、みんなして大荷物を持って行っても邪魔になる。それに素人が武器を複数持ったところで扱いきれない。


 今は講義室の机の上に初級ダンジョンの資料や、武器のカタログや見本などが並べてあった。

 カタログは冒険者ギルドが貸し出している初心者用武器で、明日の実地訓練は武器も防具もギルドから借りたものを使う。僕もだけど、大抵の講習生は自前の武器なんて持ってないからね。


 初心者の防具についてはサイズくらいしか選びようがないから、悩むのは武器だ。

 ケルビンを含め、魔法の素質があったやつは、だいたい素人の杖を持っていくかどうかで悩んでいる。


 素人の杖はその名の通り素人魔法使いが使う魔法の杖で、初めから初級魔法の術式が込められている。魔法の訓練をまったく受けていないものでも、魔力さえ流せば初級魔法が使えるという代物だ。


 ケルビンが武器候補として悩んでいるのは、水属性の素人の杖、【水の玉】ウォーターボールという魔法が込められている。見た目は粗末な木の棒に、よくわからない文字や記号が彫り込まれているだけだ。


 【水の玉】ウォーターボールは名前のまんま、バスケットボールくらいの水の玉を出現させ飛ばせる。初級ダンジョンの一階層に出る程度の土系モンスターは、水をかけただけで倒せるそうだから、魔物討伐にも使えるだろう。


 素人の杖の難点は杖に込められる魔術式は初級魔法だけ、一本の杖に術式は一つしか込められないので、同じ魔法しか使えないということだ。


 特に決まった魔法の師がいないけど魔法を身に着けたい場合は、この素人の杖を使いまくって、まずは魔力を上げることに勤しむしかない。

 筋トレと同じ。その場で役に立つかどうかではなく、とにかくそれを繰り替えすことに意味がある。自力で魔法を使えるくらいに魔力を上げてから、他の魔法を練習するのだ。


 初級ダンジョンの二階層くらいなら、そこそこ使える武器だが、出現する魔物との相性によってはぜんぜん役に立たない可能性はある。

 ついでに、人間相手なら杖を見ただけで何の魔法を使うかわかるので、対人戦闘にはほぼ役に立たない。耐久性もイマイチだから鈍器としても使えない。


 僕の場合は、闇属性の素人の杖がこの冒険者ギルドにないので、悩む余地もない。

 もしも、闇属性の素人の杖があったとしても使わないけどね。素人の杖の対象レベルは二程度、魔力も技力も十以下のド素人の使用を想定しているから、既に数値だけは素人ではない僕には向いていないのだ。


「ケルビンは剣は使えるんだろ」

「使えるって言っても、門番やってる親父に教わってる程度だぞ」


 ケルビンの父はこの街の門番をやっているそうだ。たぶん、この街に最初に入った時の門の前に立ってた人だ。顔が似てる。


 門番とは兵士の一番下っ端みたいなやつらしいけど、剣術と体術の訓練は毎日行っている。だから、ケルビンも基本の構えくらいはできるのだろう。


「なら、今回は魔法を使ってみればいい、剣は家で習う方がいいと思う」

 明日ダンジョンに持っていけるのは、冒険者ギルドで貸し出している武器だけだ。いくら剣術を齧っていても、使ったことのない剣をいつも通り振るうのは難しい気がする。


「……そうだな、うん、やっぱ魔法使ってみたいし」

 ケルビンは開き直ったように顔を上げた。


 素人の杖を持っていくか悩んでいるやつらの本心は、まあ、だいたいこんな感じだ。

 魔法の才能がなくたって、素質があるのなら使ってみたくなるのが人の性というものだ。


 実地訓練で本当に為になる訓練をするべきか、講師が見守ってくれているうちに初めてのことを試すべきか、どっちをとってもまあまあ有益だとは思う。

主人公の現在の実力

総合レベル:5

体力:23

魔力:34

戦力:15

技力:25

考えるの面倒臭いんで今後もこれ以上詳しいステータスは出てきません。


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