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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
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58/61

58.まるで僕がマントの下にとんでもないものを隠している変態みたいじゃないか

 苦渋の選択として、僕はマントを来てダンジョンに潜ることにした。


 古道具屋で購入した袖のあるマントを着た上からリュックを背負っているから、マントというよりカッパかコートという格好だ。

 これなら中に着ているものは見えないし、マントを着ている冒険者は一定数いるから目立つこともない。


「その下にアレ着てるのか?」


 前回と同じく第一ダンジョン前で待ち合わせたネニトスは、僕の黒いマントを指さしてくる。黒にしたのは特に理由はない。古道具屋で一番綺麗でお手頃なのがこれだっただけだ。


「そうだよ、完全防御だけじゃなく技力底上げの効果もあったから」


 ネニトスも腕に変化の盾を付けている。普通のお洒落なリストバンドっぽいところが、本当に羨ましい。


「すごいじゃん」

「そう思うならニヤニヤすんな」


 隣を歩くネニトスが、さっきから笑いを堪えているのはわかっている。まるで僕がマントの下にとんでもないものを隠している変態みたいじゃないか。別に普通に服着てるだけなのに。


 ただ、そう、黒革のベストのデザインがそもそもアレな上に、僕のダボダボの古着の上からピッタリサイズのピカピカの黒革ベストを着ると、ものすごくちんちくりんな仕上がりになるのだ。

 だが、これまで使っていた中古の防具より、黒革のベストの方が防御力高いし、軽いし、動きやすいし、魔法にバフまでかかるっぽいから、見た目がアレだからって使わない手はない。


 二階層に下りてから、僕は渋々と黒革の指ぬきグローブを装着する。前回のマンティコアでもなかなか手古摺ったから、やっぱり魔法はいつでも使えるようにしておくべきだ。


「なにそれ?」

 ネニトスが興味深々に聞いてくるが、黒革のベストを見た時と同じ微妙は表情だ。言いたいことはわかる。


「ダンジョンアイテム、これ着けると魔法制御できる」


 改めて思うと、僕の前に現れるダンジョンアイテムはまだ二つだけど、魔法制御と防護のアイテムばかりだ。

 ネニトスは武器も出ているのに、僕は武器らしいものが出ないのは、つまり、魔法と防御力をなんとかしろというダンジョンからのアドバイスだろうか。それとも、戦闘には向いていないというメッセージだろうか。


 ダンジョンがどれだけ把握してアイテムを出しているのか謎だから、これは深く考えない方がいいだろう。ネニトスに与えられた武器だって、武器というか斧だったのだ。もしかすると、冒険者よりも木こりが向いてるよという天啓なのかもしれないし。


「へえ、ベストとピッタリで、格好良いぜ」

「じゃあネニトス使ってみる?」

「ううん俺はいい」

 だったらニヤニヤしながら褒めるな。


 今日辿るのは前回とは違うルートなので、僕はマッピングの練習もしながら進もうと思う。

 第一ダンジョン二階層もそこまで複雑な道ではない。というか、遺跡型ダンジョンはちゃんと通路があるから、分かれ道を何回通ったか、何本目の道を選んだかだけ覚えておけば迷うことはない。


 何故か地下に森が広がる森林型ダンジョンとか、山が丸ごと迷宮化している山岳型ダンジョンなんかになると、マッピングなんて専門職じゃないと無理だ。事前に地図や羅針盤などを購入してから挑まないといけない。


 そうは言っても、ダンジョンには変動があるから、しっかりとした地図を作ってもすぐ使えなくなる。

 ダンジョン内を歩きながら、分かれ道になる度に立ち止まり、手に撒いた襤褸布に分かれ道何回目、何本目の道を選択したか簡単にメモするだけ。

 これが、冒険者ギルドの初心者講習で習った基本的なマッピングだ。非常に原始的で地味で地道。


 前世のゲームだったら、初めて踏み込んだところでも、周囲のマップが隅っこに出てくるとかあったけど、そんな便利機能は現実にはなかった。


 魔法の中には、ソナーみたいに周囲の状況を瞬時に把握できるすごい魔法もあるらしいけど、それでも、他の人に見えるようにするには紙に書き起こさなければいけない。魔法があっても、結局は製図の知識と技術も必要なわけだ。


 曲がり角に印を付けるのでもいいけど、同じことを考える人は結構いるらしく、曲がり角の壁は傷だらけで、印を付けても見分けがつきそうにない。

 ダンジョン内は常に自己修復されているから、印も数日すれば消えてしまう。でも、その日だけの目印と言うなら、人が付けた印も使えることはある。


「付き合わせてごめん」

 僕が道を確認している間、ネニトスは周囲を警戒しながら待っていてくれる。だからこそ、僕ものんびりマッピング練習ができる。


「いいよ、別に急ぐ必要もないし」

 ネニトスは事も無げに言う。


 モンスターを警戒しつつ、採集できるものを探しているけど、彼にしてみれば第一ダンジョン二階層なんて見飽きているだろう。


 また歩き出す。ここまでで見つけたのは、ブレインイーターとヒカリソウだけだ。ヒカリソウの根元に金属があったから、何かわからないけど拾っといた。ファングタートルもいたけど無視だ。

 僕としては悪くない速度だけど、真面目に冒険者として名を上げようというなら暢気すぎる道程だ。


「ネニトスは何で冒険者に? なんか目的でもあるのか?」


 目的があるのならば、邪魔をするのは悪いと思って聞いてみたけど、ネニトスは鼻をほじりそうなくらいどうでもよく答えた。


「いや、面白そうだったから、あとすぐに稼げそうだったから、ヨナハンは?」

「ほぼ一緒、僕でもすぐ就ける仕事で、面白そうだから」


 家を出る時は、冒険者で一旗揚げてやるなんて言ったけど、口先だけで実際は現実的な目標なんてなかった。今の僕には冒険者として名を上げる気もぜんぜんない。

 あまりの計画性の無さにちょっと不安にならないでもないけど、ネニトスも同じだというなら、一緒に行動するのも気楽でいい。


「そうだよな、今のところ食いっぱぐれないし、ダンジョンも面白いから潜ってるけど、もっと良い仕事見つかれば転職しても良いし」

「まあ、体力仕事だから、一生これでやってけるとは思えないよな、出来るだけランクは上げたいけど、それもそこそこで」


 話していると、前方にクローラビットを発見した。

 特に相談もなく、ネニトスが盾を構えたから、僕は剣を構える。クローラビットは僕らを発見した途端、突進してきた。


「頑張ってCまでは上がりたいよな、ここの七階層以下って王宮みたいでなんかすごいんだって」


 この第一ダンジョンは十五階層までは発見されている。それより下があるのかは調査中だが、まず七階層以下に挑むにはC級以上になる必要がある。今の僕らには最下層なんて関係ない話しだ。


 クローラビットが跳躍すると、僕は横に避けるけど、ネニトスは避けない。新しい盾の強度を試したいようだ。


「第三ダンジョンにも行ってみたいしね」


 ガツッとネニトスの盾にクローラビットの爪が当たる音を聞いて、僕は剣を振り下ろした。

ルビウス第三ダンジョンは山の上に入り口があるだけで、地下にダンジョンが広がる洞窟型ダンジョンです。


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