54.デザインはどれだよ
冒険者ギルド支部の鑑定窓口でアイテムを見てもらった。
鑑定士は女性で大きな眼鏡をかけた学者タイプっぽい。
初めて出会った鑑定士がアルバートさんだったから、僕は鑑定士にちょっと苦手意識があったけど、ギルド支部の女性鑑定士は物静かそうで安心した。
「そこまで特殊なアイテムではないですが、どちらも良い物ですね」
二階層で手に入れたものだから大した機能はないけど、伝説級のアイテムを手に入れたところで扱い切れない。
ネニトスが手に入れた盾は、変化の盾という。自由自在に大きさや形を変えることができた。
使用者の戦力に呼応するから、ネニトスだと大きくして一メートルくらいの大盾になった。僕が持ってみると五十センチくらいの円盾がせいぜいだった。
大きくするよりも便利なのは小さくする方だ。五センチくらいまで小さくできるから、腕輪のように装備しておくことができる。
「盾は魔法バッグに入れても嵩張ってたから有難い」
早速ネニトスは手首に盾を装着して、大きくしたり小さくしたりしている。
すっかり自分の物だと思っているけれど、もしかすると黒革のベストだってサイズが変えられるかもしれないのだ。そうだったら、どっちがどっちのアイテムをとるかジャンケンを挑んでやる。
「こちらのベストは全身完全防御の魔法が付与されてます、大抵の物理攻撃は効きませんね、多少の魔法耐性と毒耐性もあります、二階層で出るアイテムの最上級ですよ、デザインはアレですけど」
デザインはどれだよ。
でも、盾以上の高性能にネニトスはちょっと興味を引かれたようだ。これだけの性能があれば、外見は我慢して使う人もいるだろう。
ダンジョンアイテムは拾った者が使わないといけないわけじゃないから、なんなら売って儲けを分けたっていい。
「ちなみに、どんくらいで売れそうですか?」
どれだけ高性能でも、僕はこのアレなデザインを着こなす勇気はないから、売る方向で考えることにした。
だが、現実は非情だった。
「売れませんね、こちらは着用者がかなり限られるようです、適正がないと効果も発揮されません、ただのデザインがアレなだけのベストになります」
じゃあ着る人もたぶんいないから売れないな。このデザインを好む人を探すのも手間だ。
僕はだいたい予想できたけど、一応聞いてみた。
「着用する条件って、何ですか?」
「闇属性魔法使いであることです」
知ってた。
『闇』って書いてあったし、明らかに指ぬきグローブとセットになるデザインを見た時点で、知ってた。
やっぱり、闇属性ってこういう方向性なんだ。方向性の違いで解散してぇ~。
「闇属性なんて聞いたことないな、あ、ヨナハンのあの魔法って……」
「今期の新人にレア属性がいたと聞きましたが、まさか……」
ネニトスと鑑定士さんが一斉に僕の方を向いた。
「うん、僕、闇属性」
こうなると闇属性って自己申告するのも、なんかイタイ気がしてくる。自意識過剰だってわかってるんだけど、羞恥心が拭えない。
「じゃあこのアイテムはヨナハン専用か」
「そんなピンポイントなアイテムある?」
無邪気に言ってくるネニトスに、思わず恨めし気な視線を向けてしまう。相談の余地もなく変化の盾を自分の物にしやがって。
そこでガバッと大きな眼鏡が目の前に迫ってきた。
「そんなピンポイントなアイテムありませんよ~! 使用するのに条件がある場合でもレベル制限とか魔力制限とか大抵は鍛えれば使えるようになるものです、ただ過去には光属性しか使えない聖遺物などが発見されてます、つまりレア属性にはそのような専用アイテムがあるということ、レア属性がそもそも少ないですから、初めて見ます! 感激です! 是非詳しく調べさせていただけませんか?!」
物静かだと思っていた鑑定士さんが、もの凄い勢いで捲し立ててくる。
この人もアルバートさんと同じく研究者肌のオタクだったらしい。鑑定士とはこういうタイプの人が多いのだろうか。
僕としては研究用で売れるのなら喜んで売りたいけど、研究するには実際に使用してみるべきだろう。この黒革のベストの性能を引き出せるのは、今のところ僕しかいない。
「研究用はいいですけど、どうやって研究するんですか?」
「それは勿論使える方にご協力願います、つまりあなたもセットで、バイト代は弾みますよ!」
モルモット扱いの次はマネキン扱いだ。鑑定士恐い。
僕はグイグイ来る鑑定士さんを振り切って、逃げるように鑑定カウンターから離れた。鑑定士さんは仕事中なので追ってくることはない。
「これ仕立て直しできないかな」
「無理だろ、魔法アイテムは作成する段階で術を組むっていうから、仕立て直したら付与された魔法も消える」
ネニトスと駄弁りながら今日の儲けを分け合う。ブレインイーターとヒカリダケの分は全部僕のだと気前よく言ってくれたのは、相談もなく変化の盾を自分の物にした後ろめたさだと思う。
山分けしても、普段一人で潜っている時と変わりない儲けだった。今日はお試し程度で潜ったから、もっと真面目にやればもう少し稼げるだろう。
ネニトスも同じだったらしく、ほくほくした顔で今日の晩飯を考えているようだ。
「次、どうする?」
「次……」
ネニトスの言葉に、僕は目を丸くしてしまった。ネニトスも言ってから目を丸くしている。
僕ら、まだパーティを組んだわけじゃないんだよな。
でも当たり前に次の約束をしようとしているなら、たぶんもう決まりだ。
「今日のアイテム、使うにしても少し調べてからにしたいから、明後日は?」
「わかった、明後日ここ集合な」
まだパーティにはなっていないけど、どうやら僕は仲間ができそうだ。
冒険者ギルドでは魔法やアイテムの研究は行っていないので、鑑定士たちの言う研究は完全に個人の趣味です。
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