36.同期に遭遇するのもなんか気まずい
やってきましたルビウス第一ダンジョン、噂通りの活気と賑わいだ。
街から少し離れて建物も疎らになったところに、いきなりレンガ造りの立派な建物が現れる。これが冒険者ギルドの支部だ。
大きさだけなら本部の方が大きいけど、あちらは古ぼけているし、あちこち増改築してたり修繕の痕があるから、デカいだけで継ぎ接ぎだらけの建物なのだ。それに比べて支部の方は今時のお洒落ビルって感じだ。
その隣にある石造りの立派な門が、第一ダンジョンの北口だ。名前が前世の地下鉄駅みたいだけど、見た目はまるで神殿みたいな建物だ。神殿なんて見たことないけど。
少し離れたところにあるのが、北口最寄りの転移門だ。こちらも大きい。発着場と到着場が三つずつあって、そのどれもが常に人が消えたり現れたりしている。冒険者ギルド本部の最寄り転移門が小規模だったことを思い知る。
まだ朝も早い時間なのに、ギルド支部も転移門も人がたくさんいるし、ダンジョンの入り口にもたくさんの人が吸い込まれていく。既にモンスターを担いで出てくる人もいる。
「ほげぇ……」
ここでも僕は田舎者丸出しで圧倒されてしまうが、頭を振って気を取り直す。
僕だって冒険者の端くれ、人が多いだけで尻込みしている場合ではない。
気合を入れてダンジョンに踏み込んだ、つもりだけど、みんなパーティを組んでいる中に入っていくことはできなくて、僕は端っこを一人でコソコソとダンジョンへの階段を下りて行った。
初級ダンジョンに入る時は、出入り口にいる受付の人にギルドカードを見せていたけど、第一ダンジョンでは受付の必要はない。
ギルドカードを持って門をくぐっただけで、いつ誰が中に入ったか把握できる魔法がかかっているらしい。
冒険者じゃない人はギルド支部で受付しないといけない。でないと、遭難した時などに捜索隊を出してもらえなかったりするという。
第一ダンジョン北口は出入りする人が多いため、効率重視でこうなったそうだが、すごいハイテクだ。魔法だけど。前世の地下鉄改札よりもスムーズに入場できる。
本当になんの確認もないから、ダンジョンに入った実感も薄いけど、階段から先は既にダンジョンの中だ。
第一ダンジョンは遺跡型と呼ばれる迷宮で、壁も床も天井も石のブロックを積み上げた人工的な造りをしている。下の階層に行けば、石像が立っていたり、石柱がいくつもある広い空間もあるらしい。
でも、ダンジョンとはあくまでも自然発生した地下空間だとされている。
迷宮研究者によって、遺跡型ダンジョンは古代遺跡を飲み込んで出来上がったと言う人もいれば、神々の世界に繋がっている空間だと言う人もいる。
所説あるけど、結局、何かはわからない。
ある日突然入り口が開き、中には魔物や不思議が詰まっている場所、それがダンジョンだ。
人工物じゃないというのに石畳が敷き詰められているから、洞窟型の初級ダンジョンよりも歩きやすい。
何十年と人が行き交っているのに、特に整備も補修もしていないそうだ。それでも石畳がすり減ることもないというから、やっぱり人工物ではないというのは納得できる。
一階層まで下りた僕は、ライトを点けて、出来るだけ端っこを目指して歩き出した。
第一ダンジョンはとにかく人が多い。初級ダンジョンだと人も滅多にいなかったから、自分のライトさえ消せばシャドウウォーク使い放題だったけど、第一ダンジョンはいつどこで人とかち合うかわからない。
僕はまだ、どこから灯りが来るかわからない状態で、シャドウウォークを使った戦闘をした経験がないのだ。
それに、今日はブラックホールを使ってモンスターを狩ってみるつもりだから、安全のためにもなるべく人の少ない場所を選んだ方がいい。
あと、パーティで行動している人たちの中で、ぼっちで歩き回るのはとても居心地が悪い。同期に遭遇するのもなんか気まずい。
幸いなことに、この第一ダンジョンの一階層は、新人が一人でウロついても迷うことはない。
何故なら、一階層は迷宮とは言えない親切設計で、マス目状にただ真っ直ぐ通路があるだけなのだ。
縦通路が九本、横通路が八本あり、七十二マスの区画がある。流石に通路に番地なんか書かれていないが、地上に繋がる階段を下りたところがど真ん中の縦通路で、他よりも少し道幅が広いからわかりやすい。
だから、よっぽどの方向音痴か、数を数えられない馬鹿でもなければ、出口を見失うようなことはない。
あるのは通路だけで、マスの中に空間もないけど、たまにランダムで隠し部屋が出現するという噂はある。
中央通路から左三本目通路の一番奥に、二階層へ行く階段があるそうだから、僕は右の端っこを目指して歩いている。
どうせ僕はまだ一階層より下へはいけないし、一階層では大したモンスターも出ないから、だいたいみんな下へ行く。階段のない右の方は人が少ないはずだ。
初心者講習で教わった通り、足元を注視しながら歩く。一階層には上から来るモンスターはいないから、下を注意していればいい。
むしろ、モンスターよりも罠や隠し通路の方が危険だから、出来るだけ壁には触らない。地面の色の違う石畳や凹凸のあるところは無暗に踏まない。
真っ直ぐ歩いていると、何にも遭遇せずに一番端まで辿り着いた。モンスターもいなかったけど、人にも遭遇しなったのは僕には好都合だ。
ルビウス近辺でハイテク入出管理システム導入しているのは第一ダンジョン北口だけです。
第一ダンジョンも他の出入り口は割と小さいので、出入り口前にギルド職員がいて入出管理をしてます。
いずれはどの出入り口も自動管理にしたいけど、かなり難しい魔法らしいです。
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