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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
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29.お金はほしいので僕は剣を構える

 初級ダンジョンに潜り始めて十日、なんとか寮の家賃を払えたから一安心だ。でも、また来月の家賃があるし、細々した出費もあって貯金は一向に増えない。


 このペースでは拙いので、僕は今日、新たなフェーズへと進む。


 なんて格好良く言ってみたけど、初級ダンジョンの四階層まで行ってみるだけだ。

 今までは二階層から三階層までをうろうろして、ネズミやコウモリやモグラ、稀にミニコカトリスを狩っていたけど、四階層以降は違うモンスターが出るらしい。


 しかし、新人のソロ冒険者だと四階層までが限界だと言われている。


 一番の問題は食料と休憩だ。


 四階層までは行くだけでも半日以上かかる。帰りは帰還の輪ですぐ地上に出られるとは言え、モンスターを倒しながら四階層まで行って、そこで更にモンスターを狩ると、軽く一日仕事になる。

 一人では休憩をとるのも難しいし、食事も歩きながら食べられる簡易糧食になる。腹ペコくたくたでパフォーマンスは下がる一方だから、ソロ冒険者なら無理せず浅層をうろつく方が効率がいいのだ。


 更に下を目指すとなれば、ダンジョン内に泊まり込む必要がある。当然、荷物も増える。ベテランでもソロで深層を目指せるのは、転移魔法や収納魔法を使える者だけだという。


 僕はシャドウウォークを駆使して、モンスターに遭遇してもスルーして先に進むということもできる。時間の節約にはなるけど、それでも魔力は消費する。

 だから、今までは三階層までにしていたけど、今日は特訓の成果を確かめるためにも四階層まで行ってみる。


「傷薬よし、回復薬よし、あとは購買で食べる物買って……麻袋よし、縄よ、結び直しとこう……」

 荷物の確認をしていると、気分はやっぱり遠足だ。鞄が中古のリュックサックなせいもあるし、相変わらず荷物の大半が貰い物の無課金アイテムなせいもある。

 しかし、例えゴミから拾ってきた縄だって使えるものは使うべきだ。


 僕はリュックを背負いギルドを出た。


 ここ数日、毎晩魔法の特訓をしているから、ギルド周辺はすっかり馴染みだ。

 と思っているのは僕だけで、周辺住民には僕は顔もあまり覚えられていないだろう。ただでさえ特徴のない地味な見た目だし、影に潜ってばかりいるからね。


 最初の夜に怪しい通行人に遭遇してからは、練習場所は固定せずに、人目のないところで影に潜り、人目のないところまで影の中を泳いで移動するという練習方法に変更した。


 かなり近くに人がいても影の中にいることはバレなかったから、思い切って人通りのある道を影に潜って通ってみたのだが、誰にも気付かれずに移動することに成功した。


 ちなみに、地面の影に潜って下から地上を歩く人を見上げても、スカートの中は真っ黒でパンツは見えなかった。

 いや別に見ようと思って見てみたわけじゃないマジで。たまたま偶然、影に潜っている時に女性が通り過ぎただけで、不可抗力で視界に入ってしまっただけだ。


 しかし、不思議なことにスカートの中だけじゃなく、ズボンの裾の中とか、マントの中とか、人の衣服の中は影の中からでも真っ黒で何も見えなかった。

 これが異世界転生あるある、世界の修正力というやつか。修正ってそういうやつだっけ?


 それはともかく、バレたら怪しまれそうだから、まだ人目のあるところで、影の中から音を出してみたり、光を出してみるという実験はしていない。

 あとは、ミニコカトリスの影の中に潜れたのだから、人が着ているマントの影なんかに移動できるかもしれないが、これは試したら確実にバレるから試していない。


 たまに人目のない場所が見つからなくて、影の中で溺れかけたりもするけど、そういう時は物陰で顔だけ出して息継ぎをしている。たぶん見つかっていないはずだ。


 そんな特訓のおかげで、多少は魔力も増えた気がする。


 冒険者ギルドや教会で現在のレベルを鑑定してもらうこともできるけど、有料だからやってない。

 特に教会で詳細な鑑定をしてもらうには、一回一万イェンという結構な額をとられる。冒険者ギルドだともう少し安いけど、基本項目だけだし、鑑定担当がアルバートさんだからなぁ……。


 慣れた調子で三階層まで行くと、ミニコカトリスに遭遇した。


 三階層をうろつくだけなら出ない日もざらにあるのに、三階層をスルーしたいときは出てくる。

 浅層うろつくだけなら碌なモンスターに遭遇しないのに、下に行こうと思うと阻むようにモンスターの遭遇率が上がる。ダンジョン七不思議の一つだと聞いたことあるけど、本当にあるんだな。


 でも、お金はほしいので僕は剣を構える。

 この十日間でわかったけど、ミニコカトリスは隙が多い。


 尻にヘビくっ付いてるくせに基本の頭は鶏らしく、かなり近づかないと反応しないし、死角に入ると気付くまでに時間がかかる。そもそも、前後に目があるはずなのに死角があるという残念なやつだ。


 だから、シャドウウォークでの闇討ち戦法が決まりやすい。

 僕は影に潜ってライトを消す。ミニコカトリスの鶏頭がキョロキョロ動き回っているが、それが止まるのを待ち構えて、洞窟側面の影から剣を振り下ろして首を落とした。


 それからすぐに影の中に戻る。鶏なので、頭を切り離してもしばらく暴れることがある。

 丸ごと持ち帰って肉も売るなら、魚の活き締めみたいに一撃で動かなくした方がよさそうだけど、今日は頭と羽だけ回収するから肉の鮮度は気にしない。

ルビウス冒険者ギルド周辺でホラーな噂話が流れていることを主人公が知るのは、もう少し先のことであった…


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