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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
アイテムゲット!
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26.ちゃんと切れる剣! ちゃんと守れる防具!

 午前中で買い物を済ますと、僕はまたもやすかんぴんだった。


 中古の革鎧と剣と、大きいリュックと、アーミーブーツみたいなしっかりした靴、それに下級回復薬と傷薬、あとは水袋とか細々した日用品を買って財布は終了した。


 教会に行けば傷は治せるとは言え、小さい傷でいちいち撤退していられない。でも破傷風も恐いから怪我したままでは進めない。

 だから回復薬と傷薬は常に持っていた方がいい、と初心者講習でも教えられた。この教えを昨日まざまざと思い知らされた。


 午後は明日の資金のためと、買い揃えた装備を試すために、初級ダンジョンにちょっと潜ってみた。


 また二階層までだ。

 出てくるのはいつも通りネズミコウモリモグラ、出てもオオコウモリくらいで、ミニコカトリスには遭遇しなかった。


「おお~! ちゃんと切れる剣! ちゃんと守れる防具!」


 当たり前だけど、底辺装備だった昨日とは雲泥の差で、当たり前のことにいちいち感動してしまう。

 中古品でも魔物素材のちゃんとした防具なら、クレイモルの爪くらいじゃ傷もつかない。中古でもちゃんとした剣なら、オオコウモリくらいはスパッと切れる。中古だけど手入れして大事に使おう。


 思えば、買い物もこの世界じゃ初めての経験だった。

 田舎じゃ着る物も使う物も親か兄姉のお古で、僕のお古をまた弟妹が使うから、自分だけの物が増えるという経験がまずもって初めてかもしれない。


 自分の物、良い響きだ。今はまだ無理だけど、いずれは自力で部屋を借りて、自分の部屋も手に入れよう。この世界じゃ一人部屋という経験もまだない。


 今日の収穫は少ないけど、僕は意気揚々と冒険者ギルドへ戻った。


 しかし、この調子では借金返済の目途も立たない。

 装備を揃えたことで、ダンジョン探索は多少効率が上がるだろうけど、ミニコカトリスに苦戦するレベルだと第一ダンジョンにソロで挑むのは難しい。


 頑張ってパーティ組んでくれるやつを探すか、もしくはレベルアップの方法を考えなきゃ拙い。

 ただ、闇魔法使いというキャラでやっていく気はない。それでもし仲間が見つかったとしても、絶対に方向性の違いで揉めると思うし、そもそも闇魔法使いキャラってなんだ。


「でも……レベルアップってどうやるんだ?」

「やあ、冒険者らしくなりましたねえ」


 モンスターの買取精算を待っていたら、アルバートさんに声をかけられた。冒険者ギルドの鑑定士だけど、僕の狩ってくるような雑魚モンスターに鑑定なんか必要ないから、あまり会うこともなかった。


 アルバートさんは実は火属性と水属性を併せ持つという、かなり珍しいタイプの魔法使いだそうだ。

 火属性と水属性の両方を使えるということは、基本四属性の魔法はほぼ全て使えることになる。

 でも、体質的に魔力は大して増えないから、戦闘力は高くないという。魔法研究が趣味で、そのために鑑定魔法を磨いてきたという魔法オタクだ。


「まだ格好だけですけどね」

「装備を整えるのは大事ですよ」


 正直言うと僕はアルバートさんが苦手だ。

 実地演習でブラックホールを暴走させた時も、帰ってから約束通り闇魔法について根掘り葉掘り質問攻めにあった。


 今でもアルバートさんからは実験動物を見るような視線を感じる。魔法オタクにとってレア属性は垂涎ものの研究対象だろう。

 だから、最悪、借金を返せない場合、僕には実験用モルモットのアルバイトをするという道もある。できれば選びたくない道だけど。


「まだ初級ダンジョンに潜ってるんですか?」

「まあ、ソロなんで」

「あの魔法では、確かに、集団行動は難しいでしょうね」

 アルバートさんは憐れむように言うけど、目が笑っている。


 実は、アルバートさんにはブラックホールしか教えていない。だって、一つだけでも質問が終わらなかったのに、あと二つ使えるなんて言ったら、解放されるのに何日かかるかわかったもんじゃなかった。


 そこで、僕は前々から疑問に思っていたことを訊ねてみた。

「この冒険者ギルドの建物の中って、魔法使えないようになってますよね?」


「はい、初心者講習でも説明があったでしょうが、建物内での魔法使用は禁止されています、注意だけでは聞かない人もいますから、建物全体に反魔法結界も施されています」


 やっぱり。反魔法結界は、結界内では魔法を使えなくする魔法だ。

 実は、寮の部屋で一人になった隙を狙ってシャドウウォークを試してみたんだけど、見事に不発に終わった。


「でも、鑑定士って建物内で鑑定魔法使ってますよね? カウンターの中は使えるとかですか?」

「ああ、それはこの腕章をつけているからです」


 アルバートさんは左腕に付けた腕章を見せてくれる。『ルビウス冒険者ギルド鑑定士』と書いてあるだけの、普通の腕章に見える。


「腕章自体に特殊な力はありません、魔法で印が付いていると思ってください、この印を付けている人だけ反魔法結界から除外されるということになっているんです」

「へえ、そんな細かい設定できるんですね」


 そう言えば、初心者講習担当のグレンさんも、いつも『ルビウス冒険者ギルド講習担当』の腕章をつけていた。

 他のギルドスタッフもちらほら腕章をつけている人がいるから、彼らはギルド内でも魔法の使用が認められているのだろう。

そのうちこっそり変わってるかもしれない設定ですが、魔法の基本四属性の関係性は、火と風は相性が良く、水と土は相性が良いです。

上級魔法使いなら火属性の人は風魔法も使えるし逆も然り、水属性の人は土魔法も使えるし逆も然り。

でも、やっぱり自分の属性の魔法を使うのが一番使い易いです。


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