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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
ダンジョンチャレンジ!
22/47

22.一緒にいるなら勝手に共倒れしとけよと言いたい

 今日は影伝いに下に行くのはやめておこう。


 とりあえず、ダンジョンの中では足元を見ないように影に沈んでから、ライトを消して移動して、影から出る直前にライトを点ける。まずはこれでやってみよう。


 もう一度練習のためにシャドウウォークを発動する。影の中に入ってからライトを消して、ちょっと泳いでみる。


 その時、地面の近くを動くものがあった。


 六本の爪と石ころが一個、それ以外は何も見えないのに、爪と石ころだけが土を掻き分けるように動いている。

 しばらく眺めてから、ようやくそれがクレイモルだと気が付いた。地上に顔を出した時は土塊の頭が見えるけど、身体が土で出来ているから、地中に潜っている時は土と同化しているらしい。


 まさか、本当に倒した時に残る爪と格しか実態がないとは思わなかったけど、モンスターは魔法生物とも呼ばれている。魔法で生きている謎生物だから、骨や内臓がないのに生きていたって不思議じゃない。


 でも、これならいけるのでは?


 僕はクレイモルの下に潜りこみ、念の為、爪が届かない背後の方に立って剣を構える。

 クレイモルの格に狙いを定めて剣を突き上げて、一気に地上へ飛び出した。


 視界が真っ暗になってしまった。慌ててライトを点けて周囲を見回す。他にモンスターの姿はなく、僕の足元にはクレイモルの爪と割れた格が落ちていた。


「やった成功!」

 思わず拳を振り上げていた。高が三千イェンだけど、ここ三日間の稼ぎの倍だ。早くも装備の元が取れた。

 ホックホクでクレイモルの爪を回収、核は売れないから放置する。


 しかし、今日の目標はミニコカトリスの単独討伐だ。


 気合を入れ直して二階層への階段へ向かった。


 ルビウス第二ダンジョンの人気のなさは、モンスターとの遭遇率の低さもある。

 ネズミとコウモリはよくいるけど、それも溢れるほどではない。一階層でクレイモル一匹に遭遇した後は、二階層に行くまで碌なモンスターに遭遇しなかった。


 下手すると、一日中歩き回ってもネズミかコウモリしか出ないという日もあるらしい。だから、ここは新人の練習場所くらいにしか思われていないのだ。


 しかし、今日の僕は運がいいのか悪いのか、そこそこの高確率でモンスターに遭遇していた。

 二階層に下りてすぐ、目の前からオオコウモリとオオネズミがいっぺんにやって来た。


「うげっ」

 こいつらは共食いするし、モンスターの死体も喜んで齧るくせに、人間が傍にいると一目散に人間に襲い掛かるという、なんだか釈然としない習性がある。


 ダンジョンに生息するモンスターは、みんな人間を目の敵のように襲ってくるけど、金にもならんネズミとコウモリに関しては、一緒にいるなら勝手に共倒れしとけよと言いたい。


 オオコウモリとオオネズミは一応金になるけど、いっぺんに相手にするのは僕の手に余る。

 仕方がないので、ブラックホールを発動して一気に吸い込んだ。


 まだオンオフの切り替えしかできないから、ダンジョンの壁が大きく抉れてしまったが、ダンジョンは自己修復力があるからそのうち元に戻ってるだろう。

 後から出てくるやつもいなさそうだから、前に進む。ブラックホールは魔力消費が激しいばかりで収穫もないから、出来る限り使いたくない。


 一人だと休憩も儘ならないし、出来るだけ早めに目標達成して外に出たい。

 そんな僕の願いが聞き届けられたのか、しばらく歩いたらミニコカトリスが現れた。


 まだ索敵範囲内に入っていないから、僕には気付いていないようだ。

 ミニコカトリスは目が悪いから、灯りを持っていてもかなり近づくまでは気付かれない。代わりに、尻尾のヘビの方がおそらく熱を感知する機能を持っているようで、索敵範囲内なら真っ暗闇でも隠れられない。


 そして、ミニコカトリスの索敵範囲は、僕が息を止め泳いで行けるギリギリの距離だ。


 相手も動いているから索敵範囲に入らないよう慎重に間合いを見極めつつ、周囲に他のモンスターがいないことも確認する。ミニコカトリスに集中している間にネズミに噛まれたら堪らない。


 大きく息を吸ってから、ライトを消して、影に潜る。

 そこからは、影の中を全力クロールでミニコカトリスの真下へ向かう。狙い通り、鶏の頭もヘビの頭も、影の中を移動する僕には気付いていないようだ。


 ミニコカトリスの足に手が届く範囲に辿り着いたら、ライトを点けてから地上に顔を出す。


 気付かれる前に、片足に剣を突き刺して、即座に影の中へ潜って離脱。


 全力で泳ぐと息が続かなくて、あまり離れられずに影から出ることになったけど、ミニコカトリスは片足を負傷してバタバタ騒ぐばかりで動けずにいる。


「ハアハア……もういっちょ」

 僕は深呼吸をしてから、再び影に潜る。ライトを消してからミニコカトリスの真下まで泳いだが、そこで想定外に気が付いた。


 両足を動かなくしてから胴体を狙うつもりだったが、片足を負傷したミニコカトリスは、その場にしゃがみ込んでしまっていた。負傷していない足は羽毛に隠れて見えない。


 ならば、このまま影の中から胴体を突き刺せないか、と思ったけど、剣を上に振り上げても何故だかスルリとすり抜けてしまう。


 視界からミニコカトリスが消えた。

二階層にいるオオネズミやオオコウモリはどちらも大型犬くらいの大きさです。


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