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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
自分の力を把握しよう
18/30

18. ……いや、なに?

 ごたごたしてしまったが、僕はなんとか冒険者ギルドのギルドカードを手に入れた。


 それと、借金と封印されし左手をゲットした。


 どちらも、早急に解決策を模索すべき由々しき事態だ。

 金欠に次ぐ金欠に比べれば、現実的には大した問題でもないけれど、もう見るからにコッテコテの絵に描いたような「封印されし左手」は、精神的に由々しき事態だ。


 正直、僕はこういう方向性にはあんまり興味のない人間だったから、こういう方向性の人を見るのはちょっと苦手だった。前世の兄とか、中学時代にこういうのに目覚めかけた時期があったけど、見ていられなかったのを覚えている。


 呪文が頭に浮かんだ時や、その痛々しいポエムを見た時に、もしやと思ったけど、もしかしてもしかすると、まさか闇属性ってそうゆう感じなんだろうか?


 いやいやいや、まだわからない。前世の記憶のせいで過剰反応してるだけだきっと。


 僕は精神的由々しき事態はそっと目を反らし、現実的由々しき事態にまず集中することにした。




   * * * * *




 晴れてF級冒険者になった初日、僕は意気揚々と草むしりに励んでいた。

 薬草採集、これも立派な冒険者ギルドからの依頼だ。手間はかかるけど儲けが少ないから、常に人気のない依頼のトップ争いをしているやつだけど。


 冒険者の仕事と言えば、一番はやっぱりダンジョン探索だ。実力や運に左右されるけど、一番稼げるし、ダンジョンはまだ解明されていない部分もあってワクワクする。

 二番目は護衛とか、盗賊退治とかだ。報酬が良いし、お偉いさんと知り合うチャンスもある。


 だが、ソロの新人冒険者が丸腰でダンジョンに潜るのは自殺行為だし、護衛の仕事などは基本的にパーティ単位での依頼になる。


 そして、残念ながら、僕は中古装備すら買う金がない。制御できない魔法を使う借金持ちのF級冒険者と、パーティを組んでくれる殊勝なやつもいなかった。

 同期のやつらは先輩冒険者に取り入ったりして、さっさとパーティ入りを果たしている中、僕は完全に腫物で厄ネタで、声をかけただけでみんな苦笑いでそそくさと離れていく。


 というわけで、冒険者になって一日目の予定は、一人寂しく薬草採集を熟してから魔法の練習だ。


 やって来たのは街から出てすぐの森の中、人気はないがモンスターの気配もない。もっと奥へ行けば猛獣や魔獣がいるそうだが、森の入り口くらいなら、出ても小型のモンスターくらいだ。


 薬草採集は田舎で散々やってきたから楽勝、量が多いけど午前中で終わった。

 サクサクと目標量の薬草を集めて、美味くも不味くもないパンで腹ごしらえして、今日のメインイベント魔法の練習だ。ちなみにこのパンは冒険者ギルドで一日一個貰える昼食だ。


 僕の頼りは魔法だけど、まずどんな魔法が使えるのかわからないことには始まらない。

 ブラックホールはしばらく封印するとして、今使える魔法は後二つだ。


【暗雲】ダークネス


【影歩行】シャドウウォーク


 シャドウウォークだけは名前でなんとなくわかるから、まずは名前じゃぜんぜんわからないダークネスを試してみる。


 ブラックホールと同じ轍は踏みたくないので、周囲に人がいないことを確認してから、空に向かって左手を掲げる。封印を施されている左手の方が魔法の制御はし易い。

 【暗雲】ダークネスにも、口に出すことが躊躇われる呪文がある。




闇の精霊よ、暗闇の盟主~ダークネスロード~と共に、闇よりも深き闇へ~ダーカーザンダークナイト~




 闇多過ぎないか? 人がいなくても恥ずかしいので今回も無演唱だ。


 呪文を読んでもどんなものかわからない。とにかくダークネス発動!


 気合を入れてみたが、魔法はアッサリ発動した。

 そう言えば、ブラックホールの時だって、起きたのが大惨事だったけど、発動に苦労したことは一度もない。


 空に掲げた左手からモヤモヤモヤッと黒い霧のようなものが発生する。モヤモヤと黒い霧は広がって、モヤモヤとその場に滞留する。


「……いや、なに?」


 発動しても何かわからない。ただ黒い霧がモヤモヤしているだけだ。


 右手でモヤモヤに触ってみても感触らしい感触はない。特に害はなさそうだから、試しに近くの木に近付けてみる。何も起きない。近くの虫に近付けてみる。何も起きない。自分の頭を突っ込んでみる。何も起きない。味もしないし匂いもない。


 本当になんだこれ。黒いモヤモヤ出すだけの魔法か。


 他に何か試すものはないかと思っていると、丁度よくフライングラビットが飛んでいた。

 その名の通り空も飛べるウサギだ。一応モンスターだけど攻撃力は大してない。畑を荒らすし、走っても飛んでもそこそこ速いから厄介な害獣だ。


 試しに空中にいるフライングラビットに左手を向けてみれば、黒いモヤモヤはモヤモヤとフライングラビットの方へ流れた。


 そうして、何も起きない。


 ただウサギが僕を敵と認識したらしく、黒いモヤモヤの中から飛び出してきた。


「いたいっ?!」

 黒いモヤモヤのせいで視界が悪く、ウサギの体当たりをくらってしまった。


「くっそ、なんだよこれ!?」

 八つ当たりに落ちてた木の枝を振り回してフライングラビットを追い払う。僕の発動した魔法は、結局ただ自分の視界を悪くするだけに終わった。


 頼みの綱の魔法がこの体たらく、この世界でも生きていけるように能力くれたんじゃなかったのかよ神様!!

モンスターと魔物と獣の区別は曖昧です。無暗に攻撃的な生き物全般がモンスターとか魔物と呼ばれ、その中でも獣っぽいのが魔獣とも呼ばれます。


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