表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
初心者講習
11/29

11.最低限、虫捕まえてれば食うに困ることはなさそうだ

 人生初ダンジョンだが、今のところやったことと言えば、人の後ろを付いて行って、ネズミとコウモリと虫の回収だけだ。


 これが冒険者の仕事。


 圧倒的に地味。


 前世の記憶を取り戻す前の僕なら、格好良さや派手さを求めて冒険者を目指していたから、かなりガッカリしただろう。周りを見回しても、ガッカリという顔をしているやつはちらほらいる。


 でも、今の僕ならば、これなら何とか二年間やっていけそうという安堵感の方が大きい。


 最低でも二年間冒険者をやっていかねばならないのだ。その後転職するにしても、大怪我をしていたら職業選択の幅が狭まる。

 ランクが上がれば危険な仕事も増えるけど、最低限、虫捕まえてれば食うに困ることはなさそうだ、というのは心の支えになる。やっぱり人間、危険なばかりで生活基盤が安定しないというのは多大なストレスになるからな。


 ここまで一時間も歩いてないから、休憩はほんのちょっとでグレンさんはすぐに立ち上がった。


「こっから先は中型のモンスターも出るから、気引き締めろよ」

「順番に武器試すから、さっき魔法使ったやつは後ろな」


 移動はまた一列で進むから並び替えをする。

 このダンジョンは二階層以下も一本道の洞窟だし、身を隠して背後から攻撃するようなトリッキーなやつもいない。出てきたやつを片っ端に駆除するから、自ずと戦闘は前のやつが担うことになる。


「あんたは何が起きるかわからないから後ろ」

 スイルーさんに引っ張られて僕は列の後ろの方になった。


 初級魔法だから大したことないだろうけど、僕のせいで緊急脱出になって、何もできずに帰るやつが出ても可哀想だからな。


 前世のゲームなら、ダンジョンの階段は安全地帯なんてルールもあったけど、この世界のダンジョンはそんな親切設計ではなかった。


 階段でもモンスターに遭遇する。

 ただ、深層にいるモンスターはあまり上の階層までは上がってこない。逆に浅層にいるモンスターも、下の階層に行くことはほとんどないそうだ。


 それは魔力の濃さに関係するという。

 モンスターは魔力が濃いところに生息するものほど大きく強くなる。そしてダンジョンは基本的に下に行くほど魔力は濃くなる。だから、ダンジョンは下に行くほどモンスターが強くなっていくわけだ。


 そして、モンスターは強ければ強いほど魔力の消費が多いから、強いモンスターは魔力の濃い深層でしか生きられない。

 弱いモンスターは浅層でも深層でも生きられるが、深層にいる強いモンスターはモンスターにとっても外敵なのだから、外敵の多いところに弱いモンスターが好んで行くわけもない。


 というわけで、モンスターに遭遇したからって階段に逃げ込んでも意味はないけど、強いモンスターから逃げるなら上に行くというのは有効だ。


 階段でも出てきたのはネズミくらいで、いよいよやってきました二階層。

 と言っても、別に大きな変化はなかった。

 洞窟が少し広くなって歩きやすくなったというだけだ。広いということは、生息するモンスターが大きいということでもある。


 でも、初級ダンジョンの二階層に出没するモンスターなら、初心者でも多少手古摺る程度で倒せないほどのものはいない。


 真っ先に出てきたのはクレイモル、大きいものでは全長一メートルくらいになるモグラで、土の中を移動するので攻撃が当てづらい。


 だが、身体が土で出来ているから、水をぶっかけて露出した格を潰せば倒せる。

 しかも、土の中を移動してるくせに、何故か獲物や外敵を見つけると一度頭を出して確認するという習性があるため、気付かないうちに攻撃を受けることもない。一度見つければ土の中のどこを移動しているかも、土の盛り上がりで追いかけるのは容易いのだ。


 これはケルビンが単独で仕留めた。水属性の素人の杖が役に立った。クレイモルは死ぬと身体がただの土になってしまうが、鋭い爪だけは残って素材として売れる。


 次に出たのはミニコカトリス、名前の通り小さいコカトリスだ。小さいと言ってもワニくらいの大きさはある。

 頭と身体は鶏なのに、羽はドラゴンで尻尾は蛇という変なやつ。鶏の方に噛まれると、噛まれたところが石化するという毒を持つが、魔法で治療可能。尻尾の蛇の方も噛みついてくるが毒はない。ただ痛い。


 ミニじゃないコカトリスは身長が四メートルくらいあって、ドラゴンの一種とも言われている。噛まれるだけじゃなく吐息にすら石化毒を含むという。


 だが、ミニコカトリスなら二つの頭に気を付けながら追い込めば初心者でも倒せる。

 流石に講習生一人ではキツいから、四人がかりで囲んで倒した。一人が片手に石化毒を食らってしまった。


「お、固まる前にちゃんと応急処置したな、あんまり動かさないようにな」


 石化毒の応急処置は簡単、石化する前に壊れづらい体勢をとる、だ。

 魔法で治療可能でも、石化中に割れるようなことがあれば治療できない可能性があるし、身体の一部だけの石化でも邪魔になるようなポーズで固まったら、当然邪魔になる。


 今回は片手だったから、握った形で固まった手を骨折の時と同じように三角巾で首に吊るす。石化した部分は結構重たいらしい。


 ミニコカトリスは肉も食材として売れるが荷物になるので、高く売れる鶏の頭とドラゴンの羽だけを回収、頭の毒腺が結構な額になる。


 残り、武器を試してないのは僕を入れて三人だが、僕はビックリ箱扱いなので、他の初心者との共闘には参加できない。


 次に出てきたのはダンジョンオオコウモリ、ダンジョンコウモリが深層の濃い魔力の中で育って大型化しただけだ。

 大型犬くらいのサイズだから、頭上でバタバタ暴れられるだけでも結構な攻撃力だが、火魔法で羽を焼いて落っことせば簡単に倒せる。


 残っていた講習生二人のうち、一人が丁度よく火属性の素人の杖を持っていたので、二人で討伐完了。肉が食用として売れるけど大した額にはならない。

ダンジョンによっては、安全地帯があるとかセーブポイント的な転移陣があるとか親切設計のところもあります。


少しでも面白いと思ったら是非ブックマークお願いします。

リアクションや★付けていただけると嬉しいです。

感想やレビューも待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ