勇者パーティを追放された【パフォーマンス・マスター】〜コスパもタイパも最大化してた裏方を「役立たず」呼ばわり? パーティ崩壊、お疲れ様です〜
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
「レイン、おまえをこのパーティから追放する」
それは、ある日のことだった。
冒険を終えて街に戻り、宿屋の酒場でひと息ついていたとき。俺――レインは、Sランク冒険者パーティ【黄昏の竜】のリーダー・イキリットから、突然そう言い渡された。
「……は? 何言ってんだ、イキリット。俺を追放って……」
「ああ。今日、ハッキリわかったんだ。おまえ、必要ねぇわ。このパーティに」
「は? いや、俺、ちゃんと貢献してるだろ」
「はぁ~~~~~ん!? どこがですかぁ~? 寄生虫のくせに偉そうにしてよぉ! なぁ!?」
イキリットの言葉に、他のメンバーたちも乗っかってきた。
「リーダーの言うとおりだ。レイン、てめえ、戦闘中なんにもしてねぇじゃねえか」
サブリーダーのサブカスがうなずく。
「たまたまイキリットと同じ村だっただけで入れてもらえた、コネ野郎でしょ?」
魔女ジャマージョは鼻で笑いながら言い放つ。
「…………控えめに言って、カス」
寡黙な暗殺者、バサシンまでが冷たく言い捨てた。
――なんだよ、それ。
「俺だって、俺の職業の力でちゃんと支えてただろ!」
職業。それは、生まれながらに女神さまから授かる特別な才能だ。
剣士なら剣を、魔法使いなら魔法を自在に操れるようになる。
俺の職業は――
「全能最適者、だったな」
「そうだよ! 効率を最大限に引き出す能力だ! 俺がいるから、おまえらは最小限の力で戦えてたんだ!」
世の中には“コスパ”という言葉がある。かけたコストに対して、どれだけの成果を得られるか。
俺の能力は、まさにそれを極限まで高めるものだった。
魔力のコスパ、体力のコスパ、動きのコスパ――あらゆる“パフォーマンス”を最適化する。
それが、俺の職業、全能最適者。
なのに――
「それさぁ、俺、前から思ってたんだけどよ」
イキリットがため息をついて言った。
「……嘘くせえよな」
「…………は?」
「だって、効率が上がるとか、目に見えねーし。実感ねーし。要は“言ったもん勝ち”ってやつだろ?」
ぐ……。派手な爆発とかのエフェクトは出ない。確かに、目に見えにくい力かもしれないけど――
「でも! ジャマージョ、あんた、俺がいたから、少ない魔力で大火力の魔法撃ててたろ!?」
「それぇ~、あたしが凄いだけじゃなぁ~い?」
「なっ……!?」
「結局さ、全能最適者とか言ってるけど、証明できないでしょ? 本当に効率上がってるのかなんて」
「……それは……! でも、おまえらさぁ、感じたことあるだろ!?」
俺は叫んだ。
「魔物と戦うとき、自然と体が動くあの感覚……! あれは、俺が戦闘パフォーマンス《戦パ》を引き上げてるからだ!」
「……確かに、あるな」
「だろ!? それが――」
「でもそれって、俺らが強いからじゃね?」
「……は?」
バサシンが、静かにうなずく。
「……熟練の武芸者は、最適な動きを“無意識”で行えるという。つまり、我らが【無我の境地】に至った証拠」
「おいおい、ふざけんなよ……!」
何が無我の境地だ。違う、違うだろ。俺が――おまえらのパフォーマンスを底上げしてたんだ!
「おまえら、勘違いすんなよ!? 俺がいなきゃ、全然動けないくせに……!」
「レイン、それ、お前しか言ってねぇよ?」
イキリットが鼻で笑う。
その目には、明確な軽蔑が浮かんでいた。
ああ――そうか。
こいつら、誰一人として……俺の力を、本気で信じてなかったんだ。
「おれらさ、国選勇者パーティに選ばれたんだわ」
「……は?」
「だからさ、イメージ悪くなる“寄生虫”は、いらねえって話よ」
ふざけんな……!
本当に、心から……支えてきたのに。
「……俺がいなくなったら、どうなるか……見てろよ」
「はいはい、また出たよ。妄言乙~」
「……じゃあな」
こうして俺は、【黄昏の竜】を追放されたのだった。
⭐︎
俺――レインは、Sランク冒険者パーティを追放された。
……ただの追放じゃない。パーティメンバーに嘘をついていた、最低の裏切り者って扱いで、だ。
そして、その結果が――これだ。
「まさか……もうギルド中に悪評が広まってるとはな」
追放から一日。いつまでも落ち込んでても仕方ないと、俺はギルドに顔を出した。
冒険者は基本、パーティで活動する。どこかに俺を拾ってくれるやつがいるかもしれない――そう期待していたのだが。
『は? 誰が寄生虫入れるかよ』
『嘘つきクソ野郎なんか入れるわけねーだろ、死ね』
……口悪すぎじゃね?
「はーあ……どうして悪い噂って、あんなに広まるの早いんだろ……」
そうして、俺は拠点を変えることにした。
今はソロで、街を出て街道を歩いている。
だって仕方ない。この国じゃ、もう俺の評判は地に落ちてる。
ていうか――
「イキリットのやつ、自分で率先して悪評流してやがったな……クソ……気づかない俺もバカすぎる」
イキリットたちは、この国……ゲータ・ニィガ王国の“国選勇者”になった。
つまり、俺は“この国に敵視された存在”ってことだ。
「隣国、マデューカス帝国にでも行くか……」
俺、レインは十八歳。
十五のとき、イキリットと共に故郷を出た。
帰る場所はない。両親はもういないし、イキリットの村でもあるあそこに戻っても、俺は“嘘つき”扱いだ。
居場所なんて、どこにもない。
……けど、それでも冒険者として生きるしかない。コネもツテも何もない俺に、他の道なんてないんだから。
この国で無理なら、別の国で。
……でも、そこでもパーティに入れてもらえなかったら――。
そのときだった。
「グギャアアアアアアアアアアアアア!」
魔物の咆哮。声のする方に目をやる。
……視力パフォーマンス、上昇。
え、視力パフォーマンスってなんだって? まあ、“ちょっと注目するだけで、普通じゃ見えないものが見える”みたいな……。
自分で言ってても、ちょっと胡散臭いけど。
まあいいや。
「ワイバーン、か」
Bランクの竜種、翼竜が馬車を襲っていた。
護衛たちはすでに負傷、下手すりゃ死んでるやつもいる。
放っておけば、全員、あの腹の中だ。
――どうする。
俺は迷う。俺は……一人だ。
これまではずっと、イキリットや仲間たちと一緒だった。
仲間の力を底上げして、あとは任せる。それが俺の役割だった。
でも今は、俺しかいない。
戦闘力パフォーマンスを上げる? いや、瀕死のやつにパフォーマンス上げたって意味がない。
だったら――俺がやるしかない。
……できるのか? 俺一人で。サポート能力しかない俺が?
「た、助けてくれえ……!」
悲鳴が聞こえた。目が合った。
――気づけば、俺は飛び出していた。
バカだ。大馬鹿野郎だ俺は。でも仕方ないだろ。
目の前で誰かが死にかけてる。それを見て、立ち止まれるほど冷たくなれない。
護身用のショートソードを抜き、一歩踏み出す――
……その瞬間。
「は!?」
「ぐぎゃっ!?」
俺は、一瞬でワイバーンの目の前にいた。
なんだこれ……どういうことだ?
……ああ、これが【移動パフォーマンス上昇】か。
最小限の動きで、最大の移動効果。……そんなこと、できたのか、俺。
「でりゃあ……!」
ショートソードを構え、念じる。“倒す”と。
すると、体が勝手に――
まずワイバーンの目を刺し、混乱している隙に、首を切り落とす。
「戦闘パフォーマンス、上昇中!」
落下するワイバーンを蹴り、次の個体に飛び乗る。
……繰り返す。同じ動きで、また一体。
最小限の労力で、ワイバーンの群れを全滅させた――俺一人で、だ。
「まさか……パフォーマンス・マスターの能力って……俺自身にも適用されるのか……!?」
俺は今まで、自分のジョブが“他人を支援するだけ”のものだと、勝手に思い込んでいた。
でも違った。
俺自身の動き、魔力、判断、すべてが“最適化”されていたのだ!
「は、はは……なんだ……ソロで、やってけんじゃん、これ……!」
俺は、気づけば笑っていた。
ここから始まる。俺の新しい伝説が。
☆
「イキリットよ……」
「どうした、サブカス?」
「……なんか、体が重くね?」
「ああ……俺もなんか、動きが悪い……」
「わたしも……魔法の威力、落ちてない?」
「……索敵のときに凡ミスが増えてるような……」
「「「「…………あれぇ?」」」」
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タイトルは、
『水の勇者の気ままな冒険者生活~追放された俺、パーティの都合で裏方をやってただけで、実は攻撃・回復・サポート全てできる万能最強の水使いでした。俺がいなくなって皆さんお困りのようですが知りません』
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