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08

「スクランブル!フェリペ王国空軍機が領空に接近中!ナスカー分隊は乗機に搭乗し指示を待て!」


 脳で理解するよりかも、早く体が動いていた。走り出し、タイガーに乗り込む。


「おい、行けるのか、トニー!? 」


「もう乗ったのなら仕方ないだろ!? 整備班、回せ!」


 自棄になったトニーの言葉を聞き、整備班はエンジンの安全ピンを抜き、両エンジンをスタートさせていく。だが、エンジンの鼓動が高まり、機体のシステムが起動し、計器が動き出していくにつれて、少しずつ自信が湧き出てくる。


「こちら管制塔、フェリペ王国軍機の領空侵犯は確実。ナスカー分隊はRW13から離陸せよ」


「ナスカー3、了解」


「……その声、ブラックノーズか? 帰ってきたとは知らなかったよ。エースの戦い期待してるぞ」


「あまり期待しないでくれ」


 そう少し弱気に言い返しつつ、機体を滑走路に移動させていく。離陸が近づくにつれて、心臓の鼓動が早くなる。これが恐怖なのか、感動なのか、それがわからない。


「ナスカー2より、3、聞こえますか、隊長……ではなく、先輩」


「先輩は止せ」


「ふふ。あなたがエースなのは知っていますが、このブランクです。この戦闘では私の後ろで様子を見てください」


「……ああ。そのつもりだ」


「後ろでお膳立てでもしとくんだな」


 二人は俺を気遣ってくれる。……そうだ、一人で戦う必要はない。あの地獄ではない、もう一人ではないのだ。滑走路が近づいてくる、一時停止することなくそのまま加速する。民間機とは比べ物にならないパワーで急激に加速する。


 揚力が発生し、機体の前輪がふわりと浮かぶ。

 機体が、俺自身が地面から離れる。


「……管制塔、ナスカー3は離陸した」


「了解、高度制限解除、幸運を」


 上空でハーバード達と合流し、雲を突き抜けた後、上空で合流した。見渡せば、どこまでも広がる空に、心が歓喜している。だが、一方で翼端に見える対空ミサイルが、今から戦争をするのだぞと警鐘を鳴らしてくる。


「地上管制より、ナスカーへ。敵機はフィッシュベッド… …機数は6。そちらにジョッシュ分隊が合流する。もうすぐだ」


 MIG フィッシュベッド… …フェリペの主力戦闘機だ。世代的にはこのタイガーと変わらない戦闘機だ。性能面でも互角の兵器搭載能力と戦闘能力を持つ。侮れない機体だ。

 地上管制の言うとおり、同じくタイガーを装備する別部隊が増援に上がってきた。その機数は2。


「こちら、ジョッシュリーダー……すまない、一機トラブルで引き返した」


「チッ… …了解した、管制塔!数的不利だ!引き返していいか!」


「撤退は許可できない」


「だろうな。整備費が出ないなら、せめて、俺らの給料を上乗せしろ」


 タイガーのコックピットのブラウン管タイプのレーダーにも、敵のシンボルが朧気に表示され始めた。


「ジョッシュ隊は、中距離ミサイルで後方から援護する」

「どうせ当たらんだろ。そんなポンコツ。まぁいい。牽制は頼んだ、俺たちはドックファイトを行う」


 ナスカー隊が前進し、ジョッシュ隊は後退する。


「ナスカー3、大丈夫ですか?」


 エミリーが不安げに俺に呼び掛けるが、自分でも驚いたことに案外恐怖を感じていなかった。沸いてくるのは好奇心にも似た高揚感。


「ナスカー各機へ、敵がおいでなすったぞ! 合図と同時にブレイクしろ。各機の判断で攻撃。だが最優先事項は自機の安全だ!」

「ナスカー2、了解!」

「ラジャー」

「ナスカー3、トニー、冷静に、お前ならできるさ」


 ハーバード、隊長らしくなったな。なら隊長の期待には答えなければな。


「言われなくても!」

「よし!行け!ブレイクブレイク!」


 俺は意を決して、交戦を宣言した。


「ナスカー3、エンゲージ!」





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