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 針千本地獄を思わせる、鋭利な岩峰が連なるフェリペ王国の山脈――。まるで大地が天に挑むかのように、尖った峰々が聳え立つ。その上空をリストニア軍のファインティングファルコンの編隊が悠々と飛行している。


(俺が拘束されているほんのわずかな間に、主力機を新型に更新したのか、ホンプスキー)


「まずは景気よく一発ぶち込んでやるぜ!」


 ダンビービはそう叫ぶと、中距離ミサイルを槍のように放つ。ほとんど同時に俺も、そして敵もミサイルを放つ。フルクラム、ファルコン、FS-X、それぞれ違う国家、違う設計思想で作られたものだが、やはり同じ時代に作られた戦闘機は射程などの限界は似たり寄ったりになる。

 ……FS-Xは他の機体より世代が進んでいるはずだが、正直、違いがみられない。基本設計のせいか、それともリストニアのシステムのせいか。


 ともあれ、発射されたミサイルは、お互いに接近していく。リストニア空軍機たちはオードドックスに旋回して回避するようだ。このまま、射程圏外に逃げ切り、後衛の部隊とバトンタッチすればいい。


 だが、俺たちはその戦術が使えない。敵より数が劣る。集まって戦えば、核ミサイルが飛んでくるかもしれない。ならば、逃げる先は後ろではなく――。


「はっ! 思い切りは良いようだな!」


 俺が下の山脈目がけてダイブすると、同じくダンビービの機体もダイブしていた。敵のミサイルは山の影に隠れた機影を見失い、山の谷に衝突した。俺たちのミサイルも射程外に逃げられ、自爆した。

 一度背を向けたリストニア空軍は再度向き直ると、編隊を一列に整えた。どうやら、山脈内での戦いに乗ってくるようだ。


「リストニア野郎どもとの愉快なかくれんぼの始まりだ!」


 いちいち変な言い回しを叫ぶダンビービに頭が痛くなってくるが、奴の言うとおりだ。山脈の中ではレーダー波が遮られて、レーダーが使えない。隣の山脈の影から敵が現れるかもしれないのだ。

 だが、使えるセンサーは他にもある。”目”だ。

 俺は速度を保ちながら、谷の中を駆け抜け、あちらこちらに目をやる。その時、左手の山脈の影が映った。あれは東の空の太陽に照らされた敵機のシルエットだ。

 速度を調整し、右の谷間に飛び込んだ。

 すると、俺の目の前に敵機が現れた。背後に現れた俺に気づいておらず、峡谷の中を恐々と飛んでいるようだ。

 容赦はしない。


「FOX2」


 至近距離、絶対に避けられない距離でミサイルを放つ。加速したミサイルは敵機に目掛け飛翔し、リストニアの国章が描かれた敵の主翼を貫いた。


 <ぐわあああああああああああああ!?>


 その時、ノイズまみれの断末魔が機体に響いた。

 ダンビービの声ではない、なんだ、今のは?


「デアデビル、一つ忘れていたよ。この入り組んだ山脈では電波が乱れ、敵の無線が混線することがある。それでも、やれるな?」

「……何の問題もない」


 大勢殺してきた。今更、リストニア人が恐怖を叫んだところで何を躊躇するのだ。


 別の機体が味方の爆発に気づいたのだろう。状況を確認しようと、山脈から上空へと上昇した。しかし、それは悪い手だ。こちらからは丸見えだ。武器セレクターを素早く切り替えて、中距離ミサイルを発射した。


 <どこから攻撃をうけているんだ、うわっ!?>

「2機目」

「俺は3機目だ!」

「嘘をつくな、ダンビービの方はまだ堕としていないだろう」

「彼が2機堕としたのは事実なのか、なんて早さなんだ」


 デモンが呆れた声を出し、パトリシアは信じられないという声を上げる。その時、渓谷の向こうから敵戦闘機が現れた。どうやら、俺を狙ってきたわけじゃなく、ばったり出くわしたようだ。


 ほんの数秒、俺の方が察知が早かった。その数秒が空戦の勝敗を分ける。敵をロック……その時、ディスプレイの表示が乱れ、ロックオン不可能となった。


「何?また、システムエラーなのか!」


 俺の焦りをよそに、ディスプレイにはリストニア空軍研究局のロゴが映し出され、のろのろと再起動をしている。そうしている間に、敵機は俺のことを視認し、まっすぐこちらに頭を向けている。そして、敵の翼につるされたミサイルがこちらに向かってくる。


 システムがダウンしている最中は、ミサイルに対する防御システムが不安定だ。


 が、ミサイルが切り離されるその直前で、敵機が爆散した。


「ヒャホオオオ! やってやったぞ!」


 爆風の中から現れたのは、赤いMIGだった。そのMIGは勢いそのまま、俺の真横をすれすれで通り過ぎた。


「どうだよ!見たかよ!?」


 ダンビービの雄たけび、そして、残り1機となった敵機が峡谷から飛び出した瞬間、遠方から放たれたミサイルにより、撃墜される。


「敵部隊の前衛は壊滅した、よくやった。あとは私たちが引き継ごう。どうだ、パトリシア、彼の戦いは?」

「……実力に関しては疑う余地はないようです」


 だが、俺は二人の賞賛と認める言葉を聞いても、苛立ちをFS-Xに向けていた。ポテンシャルはあるはずなのに、まるで言うことを聞かない、なんて中途半端な戦闘機なんだ、これは。



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