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 二機の正体不明機はスクールバスへと接近を続ける。俺たちはそれを真正面から迎撃する為の進路を取る。

 それにしても、妙だ。敵は戦闘機を無視するように、民間機へと向かっていく。あの船舶撃沈事件が彼らにとってそれだけ大きく、そのための報復だとしても、棄権を顧みずに、リスクを背負ってする作戦なのだろうか。


 だが、考察する余裕はない。今は敵の思惑より、敵の種類を知りたい。

 敵機の機体の後方から二つの火柱アフターバーナーが見える、双発機か。その眩い光で、敵のシルエットが見えた。


「こちら地上管制、敵機はMIGの新型フルクラムだ!」

「畜生、敵さんは贅沢なものを買いやがったな!」


 ハーバードはいつも通り、皮肉を出すが、その声は少し震えていた。

 当然だ。

 フェリペ王国は、フルクラムの名を関する東側の新型戦闘機を導入していたのだ。俺たちのタイガーⅡ戦闘機は第3世代ジェット戦闘機と分類されるのに対し、フルクラムは次の4世代だ。

 高機動で高速、世界有数の格闘戦能力を持ち、攻撃範囲も広いとされる。その能力の前ではタイガーⅡはついていくことすら困難だろう。


 クソ、敵は次の戦争に備えて準備していた。準備を怠った俺たちは旧式で戦わなければいけない。


「ナスカー3よりナスカーリーダー!撃墜は無理かもしれない、能力が違いすぎる。どうにか、撃退を狙おう」

「できるのか?」

「さぁな!」


 全てで負けている以上、あとはパイロットの腕次第になる。一つ理があるとすれば、相手は新型にまだ慣れていないかもしれない。だが、俺たちにはこの機体で前の戦争を生き残った経験がある。


「速力と方位そのまま、あと1分後に射程圏内に入る」

「生き残るぞ!」


 フルクラムはスクールバスへの接近を止め、隊長機からシャープな軌道で進路をこちらに変えた。周りがよく見えているエースだ。


 来る。

 高速ですれ違う際にヘッドオン、正面からの真っ向勝負。機銃二門のタイガーの方が有利だが……バレルロールで躱された。


「ち、一対一のドックファイトだ!」


 奴が回避起動をとった瞬間、即時旋回し、後ろに回り込む……が、バレルロールで躱された。奴が回避起動をとった瞬間、即時旋回し、後ろに回り込む……が、凄まじい上昇で逃げられる。こちらも上昇して追おうとすると、失速警報が鳴り響く。機首を向けることすらできず、ロックオンできない。


「なんてパワーだ。あれが新世代か!」


 敵の機体の尾翼には#2の文字が見える、こいつは二番機か。ハーバードと交戦中の敵機の一番機の様子を見る。……こいつとは機動が違う、翼端から飛行機雲が鋭く出ている。


 思考を目ぐらせつつ、目も巡らせ続ける。空戦中は基本一点は見ない、常に頭を動かし続ける。この二番機、悪くないが、挙動に迷いがある。新型への経験不足か。


 慣れてしまう前に堕とす。


「トニー、回避だ!」

「っ!?」


 ハーバードの警告で、反射的に機体を捻った瞬間、目の前をフルクラムの機銃の閃光が通り過ぎた。敵の隊長機だ、上手く味方をカバーしている。


「ハーバード、助かった! こいつに集中しよう!」


「……集中するったって……!どうやって堕とす……?」


 ハーバードの声から焦りが見える。フルクラムはタイガーに比べて、機動能力ではすべて上、ミサイル搭載量も、機体の大きさも、いいや、大きさはメリットとは限らない。

「ハーバード、落ち着いて聞け、30秒間持たせてくれ。回避し続けろ」

「もうずっと、そうしているんだが!」

「じゃあ、そのまま逃げ続けろ!その間俺がどんなに堕ちたように見えても気にするな。集中しろ、俺が奴をやる」

「お陀仏は御免だぞ!了解!」


 チームワークにはチームワークをぶつけよう。やることはこの前の赤い奴と似ている。フルクラムの射程入るまで一瞬、旋回を緩める。後ろは見せない。ミサイルを撃たれるのはまずい。あちら側が機銃を打った瞬間、微妙にスティックを倒しつつ、……燃料を放出。被弾したと見せかける。


 ここからだ。一気にスロットルを緩め、失速させる。レーダーも切る。そして、燃料タンクを投下する。地面で大爆発する。木が生い茂った険しい山の斜面だ。誰もいまい。相手から見れば敵機が被弾、コントロールを失い、地上に落ち爆発そして炎上。レーダーからも反応が消えた。撃墜したと信じて疑わないだろう。


 が、本当に堕ちるわけには行かない、錐もみ状態から無理やり機体を立て直す。


問題は此処からだ。


『Over G!Over G!』

『Pull UP!Pull UP!Pull UP!』


 機体が掛かる負荷と、迫る地表に悲鳴を上げる。

 しかし、いまだコントロールは不安定だ。


「俺の居場所は地面そっちじゃない、戻ってこい!」


 俺はスロットルを全開まで押し上げ、手綱を握るように操縦桿を手前に手繰り寄せた。

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