第17話 スクールバス護衛
誰も読んでなくて草
ファントムを使用している先行部隊より、敵機が接近中であると報告が入る。
そして、俺の目の下にはいくらかの旅客機が飛んでいる。今は夜なので、翼端灯とレーダーで確認するしかないが。これを堕とされないようにしなければならない。
島に配備された対空砲が空に弾幕を張るが心もとない。
フェリペ空軍は押してきている。残念ながら我が国は全土カバーできるほどの軍事力はない。逆にフェリペにもここまで隙があっても、押し切れるような戦力はない。
いつものように、ドッグファイトになる。
「アーゼンタワーより、ナスカー!君たちの護衛対象は黄色のC47輸送機!コールサインはスクールバスだ! 守り抜けよ!」
スクールバス、嫌な響きだ。
「こちらスクールバスの機長ジョン・ゴードンだ。 最初に言わせてもらおう、私は軍人が嫌いだ。お前たちの戦闘機で私達の空を汚すな。 ただ、役目は果たせ。お前たちが起こした戦争なら責任をとれ」
「……なんだ、こいつ」
スクールバス機長はしゃがれた声をしていた。守ってもらうやつの態度には聞こえない。ぼろくそ言っておいて役目を果たせだと?
「トニー、言わせておけ、どうせいずれは終わる任務だ」
「長い任務になりそうだけどな……」
「お前が瞬殺してくれるんだろ?」
「こいつをか?」
「ハハハ! おい、止せよ! 笑っちまうだろ!」
俺の皮肉にハーバードは爆笑するが、エミリーは違ったようだ。彼女は声を低くして、俺をたしなめる。
「当然、こういう人もいます。でも私たちが守り抜けば、わかってくれる筈です。真剣に取り組めば、彼らもわかってきます」
「どうかな……とにかく、敵機を迎撃する。来るぞ」
レーダー上の光点が近づいてくる。俺はただこのレーダー上の敵機を堕とすだけだ。
にしても、民間機全部ターゲットにするとは……この戦争はとんでもないところまで来てしまった。そもそもなぜこの戦争が始まったのか、どちらが仕掛けたのかすらわからない。
エミリーの信念は立派だ。だが、結局一人の兵士には何もわからない、信じられるのは自分のスキルだけだ。
「敵機をこれ以上近づけさせるな。……敵編隊はMIGのフロッガー。速やかに排除し、空域の安全を確保せよ」
「ナスカーリーダー了解、今日こそはキルできるかな?……ブレイク!」
……この暗い夜間でも敵機を目視確認する必要がある。
レーダー戦闘もできるが、民間機を堕とすリスクを考えると目視での確認も必要だ。
レーダーを切り、逆探知を避ける。
敵機の機影はあちら側だったはず、アフタバーナーの光が見えた、民間機のケツから火は出ない、だからあれは敵機だ。
何を慌てているのか輸送機狙いの一直線な動きだ。背後に回りミサイルを発射する。一機目。
連続で狙えそうだ。再度急旋回して、攻撃を――。
「こちらスクールバス! 今爆発が見えたぞ、当機は大丈夫なのだろうな!?」
「っ! 戦闘中に無線に割り込んでくるな! 黙って、進路を維持して飛び続けろ!」
「……貴様!何たる言い草!お前たちがしっかりと……!」
せっかく敵機を見つけたのに、馬鹿のせいで集中力が乱れて逃した。もういい。緊急時の為に、無線を繋げていたが、知ったことか、無線機のチャンネルを軍隊のみに戻す。
「……ナスカー2へ、エミリー悪い、お前のスコアは今日伸ばしてやれない。 あの臆病なスクールバスの横について居てやれ」
「了解、大丈夫です、任せてください!」
「ナスカー3、気にするな。今日は俺も1機堕としたぞ。 別部隊も一機堕とした。残りは一機……撤退したかもな。良い感じだ」
こちら側が優勢のようだ。流石に本土が近いとこちらが有利か。早く帰れるかもしれない。
「新手が二機! 早いぞ!」
「何? アーゼンタワーに敵の機体の判別をやらせろ」
だが、その前に友軍の悲鳴が流れ込んできた
「こちらイエロージャケット3!隊長が落とされた!メーデー!メーデー!追われてるんだ、うわっ」
「イエロージャケット3?応答しろ!……クソ、イエロージャケットは全滅だ。こちらアーゼンタワー、敵機はアンノウン、レーダーデーターに該当機なし!」
「早くて、データに無い。まさか、噂の新型か?」
「わからん。 HQに問い合わせて判定する、待機せよ。二機編隊は高速でスクールバスに接近中!」
イエロージャケットのファントムと思われるものが火を吐きながら、島の海岸に落ちるのが見えた。それを落としたシルエットは近づいてきている。
「ナスカーリーダーより、ナスカー3。 トニー、俺たちでやるぞ」
「了解、やってやろう」




