リク
初対面のシホの印象は、人形みたいな奴だった。
隣人で同い年だっただけで、幼馴染み認定された。
それはそれで嫌じゃなかったけど、面倒臭いとは思った。性別も違うし、趣味も違うし、なにより何をやってもつまらなさそうなんだ。
色んなものに誘ってみたりもしたけど、何に対しても楽しそうじゃない。ムキになって色々誘ってみたけど、結果は芳しくなかった。
特別シホは可愛いわけじゃない。キレイ系でもない。でもなんか、目が空虚っていうか、放っておいたら騙されそうだし、空をじっと見上げている時の表情を見てると、得たいの知れない恐怖が、湧いてくる。
シホが何処かに行っちゃっうんじゃないかって、不安になるんだ。手を離したら何処かに行ってしまいそうで、怖い。そう、怖いんだ。シホがいなくなるのが。これが恋愛感情なのか分からない! でも、気が付けばシホのことを考えてるし、気になって仕方ない。
調理部のシホが作った料理は、お願いして食べさせてもらってる。他の奴に食べさせたくないって気持ちに気付いてから、自分の中のシホへの気持ちを認識した。
中学生が何言ってんだと言われそうだけど、確信があるんだ。シホの手を離しちゃいけないって
だから、オレはストーカーまがいにシホと同じ学校への進学を狙ってる。勿論大学も。さすがに会社は難しいかもしれないが、それまでにシホの気持ちを少しでオレに向けてほしい。
シホがオレは絶対に嫌だとなれば、諦めるしかないけど。
小さい時に、シホが作ってくれた、ちょっと失敗したクッキーを食べた時、お世辞にも美味いとは言いがたかったけど、美味いと言った。
いつも表情の変わらないシホが、嬉しそうに微笑んだ。それだけでオレはシホを好きになってしまった。馬鹿みたいだけど、好きになっちまったもんはしょうがない。
空っぽのシホの中に、少しずつ、嬉しいこと、楽しいこと、好きなことを詰め込んでいきたい。
いつか、シホの笑顔が過ごせるように、沢山の経験を、思い出を積み重ねていってほしい。
オレは、シホの笑顔がなによりも好きだから。