【女01】 偏差値43
【ドロップ♪ 女♪】
脳内にいつものアナウンスが流れる。
これまでの法則に従えば、この女がドロップアイテムということになる。
ドロップ?
理解不能?
俺のモノになった?
…ドロップ。
俗に言う《女を落とした》というアナウンスなのだろうか?
「お兄さん、宿どこっスか?」
『は!?』
「いやあ、えへへ。
もう少しお話したいなって思って…」
やけに積極的だな。
何だ?
異世界女と言うのは、肉食系なのか?
「駄目っスか?」
うーーーん。
いや、勿論男としては嬉しいシチュエーションなのだが。
この女が微妙にブスなんだよな。
別にえり好みする訳じゃないが、このブスにあんまり部屋とか知られたくないよなあ。
いや、勿論ルッキズムには反対だけどさ。
せっかくなら、もう少し可愛い子に声を掛けられたかったよなあ。
『いや、キミのこと。
良く知らないしさ。』
俺がそう言った瞬間。
ステータス画面がホップアップした。
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【名称】
ヒッチ=ウッドマン
【職業】
ブランドショップアルバイト (バックヤードスタッフ)
【ドロップ理由】
ファッションセンス
【偏差値】
43
【備考】
辺境出身者。
村の中でも辺鄙な山林に居住していた為、周囲から嘲笑されて育った。
皆を見返す為に王都にやって来た。
一見朴訥な田舎娘に見えるが、内面はドロドロとした劣等感が渦巻いており上昇志向と社会への憎悪はかなりのもの。
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…間違いないな。
どういう屁理屈かは分からんが。
この女は俺に落ちた。
なので、まるで戦利品か何かのようにステータス画面を見れる。
あまりこういう事を言いたくないんだけど。
【偏差値】って絶対顔面偏差値のことだよな。
最低50は欲しいよなあ…
…いや、勿論ルッキズムはけしからんと思うんだけどさ。
「えへへ、お兄さんどこから来たんスか?
都会? 都会?」
『この王都の100倍くらいデカい街からだよ。』
「ど、どひゃー!!
100倍と来ましたか!!」
そりゃあ、東京は地球人類が生み出した最大最高の都市だからな。
実際はテメエら未開人共の万倍以上の規模と価値があるよ。
「アタシはヒッチって言います!
お兄さんは?」
『…マルヌ。』
「おお、マヌルさんですか!?
素敵な名前ですね。」
『いや、マル…
微妙にマヌルの方が発音しやすいな。』
「??
マヌルさんってお呼びしていいですか?」
『いや、ヌルマ…』
「??
す、スンマセン!
アタシ、頭が悪くて!
マぬ? ヌマ? (プスプス)」
『ああゴメン。
じゃあ苗字のユンで。』
「おお!
それなら発音しやすいです!」
いや、俺もゲシュタルト崩壊してきた。
変名なんて使うべきではないな。
結局、ヒッチは当たり前の様な顔をして付いて来る。
聞いてもいない身の上話をペラペラとしてくる辺り、圧迫感が凄い。
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「お客さーん。
困りますよ。
女性同伴で1人部屋に戻らないで下さい。」
『え?』
「規約にも書いてあったでしょう。
今、泊まられている部屋は一人用個室。
女性を連れ込まれるなら、2人用を借りて頂かなきゃ。」
今、俺が止まっている部屋は3000ウェンだが、2人部屋は5000ウェン。
食事代が1日1000ウェン×2なので、1日7000ウェン掛かる。
既に4000ウェン払っているので3000ウェンを差額で払った。
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【所持金】
56700ウェン (差額部屋代として3000ウェン支払い)
↓
53700ウェン
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ヒッチはニコニコしながら部屋に付いて来て。
ドアを開けるなり服を脱ぎ捨てた。
あまりに脱ぎっぷりが良いので、男の俺がドン引きする。
『え? え?』
「ああ、脱がせればいいんスね。
お任せください!
女として当然の義務っス!」
『え? え?』
一応俺は童貞なので、少しは気を遣って欲しかったのだが、ヒッチは自己主張が激しい癖に俺の意見は一切汲み取る気はなかったようだ。
『え? え?』
俺は浪漫主義者でも何でもないのだが。
…初めては美人としたかった。
「これから末永くお願いするっス♪」
『え? え?』
ちょっと待って。
ゴメンちょっと待って。
異世界ラノベって普通ヒロインは美人であるべきじゃない?
いや、俺はルッキズム反対だけどね。
でも、やっぱりアニメ化する時に不利じゃん。
一巻の表紙がブスヒロインだったら、続刊出ないじゃん。
いや、勿論女性を容姿で差別する気はないけどね。
俺のスキル…
多分、使い勝手はいい筈なんだが…
うーーん。
釈然としないな。
(セックスシーンにつきキングクリムゾン)
「どこ行くんスか?」
『狩り。
飯代稼いでおきたいから。』
「そ、それってアタシの為に!
か、感激っス!
女冥利に尽きるっス!」
『この干し柿置いて行くから。
食べてもいいけど、一袋までにしてね。』
「は、はいっしゅ!」
『じゃ、行ってきます。』
「行ってらっしゃいダーリン様!!」
…釈然としないなあ。
ヒッチがもう少し美人だったら、もう少しテンション上がるのになあ。
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スライムを1日10匹狩れば、それだけで生活出来る計算だったのだが…
想定外にお荷物が増えたので20匹を己へのノルマとした方が良さそうだ。
今日は後10匹だけ仕留めておくか、と思い。
取り敢えず20分ほど掛けて、スライム10匹を仕留めた。
戦果は以下の通り。
・石ころ×3
・コイン×4
・干し柿×2
・果物ナイフ×1
※スライムの核を9つ入手
ふーむ。
大体、想定内だな。
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【スライム30匹討伐ドロップ統計】
・石ころ×10
・コイン×9 (計9万ウェン)
・干し柿×6
・ズタ袋×1
・果物ナイフ×2
・皮のサンダル×1
・Tシャツ×1
スライムの核×16
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カネがドロップする確率は3分の1か…
狩りさえしていれば生活には困らなさそうだな。
もう10匹狩ろうかと思ったが、公園に人が増えて来たので躊躇する。
どうやらママ友ミーティングが行われるっぽい。
まあ、キャッシュだけでも4万獲得したし、ここで止めておくか。
それにしても…
女を欲しいとは思っていたが、結構カネ喰い虫だよな。
俺なんか特に『自分さえ良ければいい』って価値観だから…
地味に辛い。
『ただいまー。』
「おかえりなさいませっス!
ダーリン様♪
あ、柿は食べてません!」
『もう2袋追加したから別にいいよ。
メシ、外で食うから一緒に来いよ。
俺、メニューとか全然わからないから。』
「はいっしゅ♪」
ホテルのB1がちょっと高めのレストランだったので、そこで食事。
異世界生活も長引きそうなので、盛り合わせを頼んでヒッチに説明して貰う。
「はえー。
ダーリン様って本当に何にも知らないんっスね。」
『言ったろ。
俺、かなり遠い所から来たんだよ。』
「トゥンク!
ダーリン様は白馬の王子様っス!
白馬に跨ってアタシを迎えに来たんス!」
『落ちてきただけだよ。』
そんなアホらしい遣り取りをしながら、メシの種類の説明を聞いて。
鶏肉系の料理なら割と日本に近い事を突き止めた。
唐揚げっぽい鶏料理を発見したので、困ったら毎回これを頼む事を決意する。
レストランでC級冒険者のハリーと再会し、恋人を紹介される。
10歳年上の女冒険者で、師匠兼愛人らしい。
(キミ、設定モリモリだよな。)
ハリーは余程いい奴なのか、偏差値43に対しても終始フレンドリーな対応であった。
問題はここからである。
俺とハリーが話していると、目の前のテーブルに居た女が
「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
と麺料理を噴き出しながら叫んだ。
俺のブランドTシャツに麺と汁が噴きかけられる。
『?
オイオイ、人の大事な…
いや、雑巾にでもするつもりだったんだが…
服を汚すなよ。』
「ずっと探しましたよーーーー!!!
ルヌマさーーーーーーん!!!!」
探してた割に名前間違えるのかよ。
ああ、どうりて見覚えあると思ったら、初日に声掛けてきた自称女神か。
その爆乳に見覚えあるわ。
『アルカナだっけ?』
「はい! アルカナです!!」
『この服ブランド物なんだ。
77万ウェンするんだぜ?
弁償しろとは言わないからさ。
クリーニング代寄越せよ。』
「ふぇ? 私、女神ですよ?」
『ここの支払いで許してやるよ。
オラ、この伝票払って来い。』
「ぐぬぬ。」
俺は奥の席に戻っていたヒッチに伝票を持って来させて、部屋に帰ってセックスしてから寝た。
やれやれ、今日はこれで一段ら…
「ちょっと待って下さいよお!!!」
『うおっ! びっくりした!』
「ダーリン様!」
『てめえ、どこから湧いた!』
「女神だから鍵無効なんですよ。」
『何だよその糞ルール。』
「ルヌマさん!」
『あ、うん。
塗間だけど。』
「はァ!?
ダーリン様!
アタシにはヌマルって言ったじゃないっスか!!!」
やばい。
名前がゲシュタルト崩壊してきた。
『ゴメン。
2人とも、俺のことはユンって呼んで。
ユウでもいいけど。』
「だからどっちですか!!」
「だからどっちっスか!!」
『じゃあ、ユンで。』
「わかったっス、ダーリン様!」
オマエ(43)はどうせその呼び方なんだから、どっちでもええやん。
「じゃあ、ルヌマさん。
改めてちゃんと話します。」
オマエ(爆乳)は、その呼び掛けかよ。
『俺、もう眠いんだけど。』
「私はこの世界を管轄する女神です!」
「ダーリン様!
この女、頭がおかしいっス!」
オマエも大概やぞ?
「なので!
選ばれし英雄であるルヌマさんに加護を与えに来ました!」
「ふふふ。
ダーリン様が英雄。
この女、中々わかってるじゃないっスか。」
『加護?』
「ええ、当然です。
我々、神界の者には下々の中から贔屓対象を選ぶ権利がありますので。」
『へえ。
アンタ、俺を贔屓してくれるんだ。
で?
具体的に何をしてくれる訳?
カネ?』
「いやあ。
実は下々のおカネって、そこまで持ち合わせがないんですよ。
原始的過ぎて構成が難しいんです。」
『アンタ、まるで昭和の詐欺師みたいだぞ?
じゃあ、この国の奴らに俺を保護するように指示してくれよ。』
「いやあ。
実はこの世界って信仰心が乏しすぎて
我々の神託に誰も耳を傾けてくれないんですね。
7つある国教の一つに食い込む事には成功したんですけど。
政治的な影響力は傍流官庁の課長クラス程度ですね。」
『じゃあ、何かパワーアップさせてくれよ!
神なんだろ!』
「あーー、すみません。
それは部署が違うので。
私の管轄は《監視》であって《強化》はまた別の部署の担当なんですよ。」
『じゃあ何なら出来るんだよ!』
「うーーん。
まあ、私が何が出来るかは置いておいて
この専属契約書にサインして貰えませんか?」
『しねーよ。
舐めてんのかテメエ!』
「もう、ルヌマさんは我儘ですね。
カネとパワーと政治的調整以外だったら、結構得意ですよ?
何か注文あります?」
『じゃあ、ヤラせろよ。』
「トゥンク!」
【ドロップ♪ 女♪】
『ん?』
ゴメン、このスキル運用基準がガバガバ過ぎ。
【名前】
マルヌ・ユン
【職業】
冒険者(ランクG)
【ステータス】 ※20ポイント未使用
《LV》 3
《HP》 29/30
《MP》 10/10
《力》 10
《速度》 8+5(皮の靴補正)
《器用》 5
《魔力》 5
《知性》 2
《精神》 0+1(性交経験数補正)
《幸運》 9
《経験》 30
※次のレベルまで残り30ポイント。
【スキル】
「落ちこぼれ」
※必ず落ちこぼれる。
【所持金】
53700ウェン (4万ウェンドロップ)
↓
93700ウェン
【所持品】
石ころ
干し柿
皮の靴
果物ナイフ
ズタ袋
ブランドTシャツ
【所持女】
ヒッチ=ウッドマン