第22話 エピローグ
1ヶ月後。エーリヒとユリアナは全国を巡る旅に出ていた。
エーリヒは完全に平等な選挙法の成立後初めての選挙のため。
ユリアナはアイドル聖女としての全国ツアーのためだ。
「エーリヒ、見て! 綺麗な山桜!」
貸し切りの汽車の車窓に、額をくっつけてはしゃぐユリアナ。
「今年は全国的に桜が早く咲いたからな。アンナからの手紙にも書いてあったぞ」
エーリヒがエビのクッキーをかじりながら言う。アンナは自ら志願して、ミヒャエル村の修道院に入れられたヴォルフのお目付け役として王都を去っていた。
「エビクッキー食べてくれてありがとう。ファンの子からもらったけど、私アレルギーなんだもの。その場では笑顔で受け取ったけど」
ユリアナはお礼を言った。
「そう言えば、ヴォルフは元気かしら」
続けて心配するユリアナ。
「最初はしんどそうだったな。元王子様が、身元を隠して今や下っ端修道士なんだから。でも最近は村にも馴染んで、一生懸命働いているらしいぞ。病人の世話をしたり、地ビールの醸造を手伝ったり」
嬉しそうなエーリヒ。彼はヴォルフとも定期的に文通していた。彼なりに異父弟を気にかけているのだろう。
「アンナが手紙で言ってたぜ。ヴォルフ、だんだんたくましくなって俺に似てきたって。アンナも教育のし甲斐があるってさ」
アンナがそれなりに幸せそうなのを聞いて、ユリアナは胸を撫で下ろした。
その時、車両にアナウンスが響いた。
「次は、ミヒャエル駅、ミヒャエル駅。お出口は、左側です」
2人は慌てて荷物をまとめ、持ち切れない部分はエーリヒが作り出した埴輪たちに任せた。
「笑顔の調律はバッチリかしら? 宰相さん」
イタズラっぽく微笑むユリアナ。エーリヒは親指を立てて応えた。
「もちろんさ。そっちこそ、偶像を演じる準備は完璧か?」
ユリアナは太陽のような笑顔を浮かべた。
「もちろんよ。だって……」
汽車が停まり、ドアが開く。
「私は、ファンを全力で愛する、アイドル聖女なんだもの!」
笑い合う2人。ユリアナ夫妻は、春爛漫の桜吹雪の中に踏み出した。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
楽しんでいただけたなら嬉しいです。
少しでも面白いと思っていただけたなら、ブックマーク、および、スクロール先の広告の下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価をいただけたら励みになります!




