夜なら蛙
何事かはある。
仕事にしても、
家族にしても
世界にしても。
思いにしても、
約束にしても、
男と女にしても、
何事かはある。
何事もないなんて、
それはない。
宇宙は途轍もなく、
何事かは無限に。
平穏な時間なら、
ぼんやりと自然を
眺めるくらいが
いいところ。
何事かはある。
迷いや不安、怒りや嫉妬、
後悔や挫折、それに虚栄。
喜びや愛に混じる。
そこから出ようとして、
どうするのか。
出られないこととして、
どう向き合うのか。
人それぞれにある。
優秀な人、聡明な人、
軽薄な人、愚鈍な人。
どれも皆、人。
皆、生きている。
生まれながらにして、
生まれてからの
巡り合わせにして。
何事かはある。
人はそれぞれで、
偶然か、必然か、
今の世界を感じている。
感じて一本の道を
歩いてゆく。
一生とは一本道。
ひたすら一本道。
雨があがり、
また日差しが戻る。
焼けてゆく地上に、
倒れそうになる。
何事かはある。
今なら今である。
夜なら夜である。
蛙は鳴いてくれる。
正直な気持ちを
書いてゆく。
何事かはあって、
何事もなくなって。
その時々にあって、
あり続けてきた
正直な気持ちを、
死まで鳴いてみる。