表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

赤いもの

作者: 纓紫琉璃

こんにちはー!

読もうとしてくださってありがとうございます!

全体的に短く、短文しかないので、読みやすいと思いますよー⭐︎

実は、パッと詩を思い付いたので書き留めていたら、なぜか少々長くなってしまいました笑

ですからその名残で句点がありません(ただ途中から付けるのがめんどくなってしまったんです、許してね)

では楽しんでおくれ(^^)/~~~

片頭痛がここで来た

重い頭を支えながら尋ねる

「あれ今日も1人?」

その生徒は目も合わせず軽く頷く

「今日はね、色々と書類の申請が必要なんだよ、親御さん呼べない?」

そう言われることを予想していたように首を振っている

教室は空気が悪すぎる

「ちょっと待っててね」

生徒はもう無反応だった

廊下に出て、ふぅと息を吐く

窓を開けて深呼吸する

今日も太陽の自己主張は激しい

ミシンミシン

古い校舎はよく揺れるし、おまけによく鳴る

この足音は教頭に違いない

僕を見かけて近寄ってくる彼に、いつものように弱音を吐いた

「もう勘弁して下さいよー、あの生徒、親と名字が違くて大変っす」

教頭は困った顔で笑った

「君のクラスは偶然にも訳ありな子が多いですね」

優しい彼になら余計なことだって言える

「僕も同じですから」

教頭は淋しく微笑んだ


朝は苦手だ

1人でいると、いくらアラームがあっても起きれない

ガランとした廊下には朝日に照らされた埃が踊っている

俺は今までどう生活してきたか、最近分からなくなっている

座布団に座って手を合わせているとすぐに時間になる

家具が少なくなったせいか線香の匂いがすぐ部屋中に充満する

誰も居なくなった家をそっと出た

決して寂しくはない

これは俺が選んだ道だ

思い出したくもないあの日から、鍵は掛けなくなった

いつか帰ってくるかもしれない

まだ本気で信じている俺はおかしいと思う

彼女に言ったら笑い飛ばされそうだ

それも良い

胃の中の食べ物を探している音がする

今日も弁当を作る時間がなかった

そう彼女に言ったら笑ってお裾分けしてくれるだろう

悪くない


日差しが眩しくて目が暗む

いくら下を向いたって反射して顔に当たってくるのがうざい

目を瞑ったところで瞼を通して光が眼中に入ってくる

足元から伝わる熱が身体中を溶かしてしまいそう

苛つく心を爪先に込めて地面を蹴る

なくなればいいのに

校門の前、阿保な会話の馬鹿デカい声の連中が通り過ぎる

朝から喧しくて鬱陶しい

「3組の担任マジで授業つまんねぇ」

「現代文とかノー勉定期」

消えてほしい

「しんどww」

「そういや、あの殺人犯、ここ出身らしいんよ!」

「でも可愛いんだろ?」

口々に次から次へと悪意のない言葉が放たれる

「被害者じゃね?」

「えー!俺も殺されてぇ!」

「黙れ殺す」

思わず発した声は男子の喧騒に掻き消されて、空に消えて行った


操り人形のようだ

一目見てそう感じた

にしても既視感なんだよな、この顔

記憶を手繰り寄せるも、頭からは簡単に出てこない

思い出には奥深い倉庫に眠らせ埃を被せている

デカい目と対照的に小さな顔

前髪はやや長め

それに、か細い声

うん

さっきから何言ってんだか分かんない

「この時期に転校とか事案じゃんw」

「なんかあるんじゃね?」

後ろのバカ男子が全員に聞こえる声で煽ってる

確かに割と不可解だ

夏に、それも地域ではそこそこ有名なこの自称進に転校する話は、聞いたことがない

転校生は聞こえていないのか自己紹介を続ける

あいつといえばその声に耳を澄ましている

そういうムカつくとこはずっと変わってないよな

後ろの席からいくら視線を送ってもあいつが振り向かない限り、うちらは交わらない


「今日転校生来たね、同じ班がんばぁ笑」

あたしの揶揄いに動じず

「ん」

と一言だけ反応する

なんか今日おかしくない?

そう尋ねそうになる言葉を抑える

余計なことを訊くと不機嫌になっちゃうもんね

「正直可愛いって思ってるぅ?」

膝に乗ったあたしは彼を見上げて尋ねる

「んー、静かそ」

彼はそう呟き、あたしに腕を回した

相変わらず何考えてんだかさっぱり分からない

下からママの私を呼ぶ声がする

うるさい

「そこはぁ彼女が1番可愛いでしょー笑」

敢えて戯けて言ってみるも彼の表情は変わらない

あたしは階下を無視して彼に身を預けた


私は頭を巡らせていた

この教師は利用できるかしら

頑なに部活にも委員会にも入らない私に、雑用を押しつけてくる

無気力な生徒には役割を与えよう!生きる意味を見出させなくては!とか本気で思ってそうで怖い

「いやー助かる、キンセンカは枯れちゃったからね、カンナは、」

兄の琴線に触れるものは何だろう、分かんないわ

「君は男子に人気のようだね」

何をどうやったらその思考になるのか教えてほしい

「たまには女子とも話せると良いんだけどね」

私があんな子たちと仲良くできるわけないでしょう

「君が前の学校で教師と起こした事については深く聞かないから、何か相談したい時は、」

「教頭が日本史?」

廊下から集団の声が近づいてくる

「神授業だったらしい」

「羨ま!」

名案が浮かんだ

「担任辞めなくて良かったのにな」

「俺らの方と変わってほしいわww」

傍らの未だ続く長いお話を遮る

「先生、あの、相談が!」


は?

強い引力がかかった瞬間、僕は床に倒れてしまった

なんだか柔らかい物体が僕と床の間にあるみたいだ

「あ、お取り込み中でしたかっ!」

「www」

生徒たちの笑い声の余韻がしんとした教室に残る

「おい、廊下は走るなー!」

僕の声は伝わりそうにない

目の前に繊細な生徒がいる手前、大声を出すのは良くないだろう

生徒の手を引いて身体を起こす

「大丈夫かい?」

おずおずと尋ねてみる

相当ぼんやりとした様子でいる

反省してもらわないと困る

こういう問題行動は指導しなくてはいけない

「大体君もね、気をつけないと、この学校でさえ、」

生徒は聞こえていないのか、すたすたと立ち去っていった

随分素行の悪い生徒だ


彼女はミニトマトが好きだ

弁当に毎回最低でも4つ以上は入っている

「ママがねぇ今日はいっぱい入れてくれたのー!」

俺は一気に頬張る彼女をちらっと盗み見る

幸せそう

不思議だ

「欲しいのー?笑」

彼女がニヤついて俺の目の前で首を傾ける

「いや要らないっていうか全部食ってから話せよ、汚ねぇ」

出かかった物体を押し込んだ

「ん〜!!」

彼女は嬉しそうに俺の手を解く

俺の手には赤い物体が付着している

嫌いだ


季節外れのリンゴを口に運ぶ

腹立たしい

顔だけよ

あの子は中身に何もないわ

それに

こっそりと後方に目を遣る

公衆の面前でイチャつくなんて…!

はしたない

母には申し訳ないが、うさぎちゃんリンゴをフォークで何度も突き刺す

どうしてあの子を選んだのか、理解が追いつかない

見る目が無いのかしら?

段々とフォークを持つ手に怒りがこもっていく

全くふさわしくない

貴女に合う人間はただ1人だけよ

無味のリンゴに蓋をする

不要なら、さっさと処分しましょう


現代文の授業、先生の声がいつも通り聞こえない

クラスの後ろは無法地帯

男子は輪になって何やら話しこんでいる

女子はちゃっかりtiktok撮ってる

バレたら没収だろう、何してんだか

「この文には食べ物が出てきており、人物の心情を象徴しています…」

「え、気まずすぎ」

「いわゆる隠れビ…」

「ピー!!」

男子は怪訝な顔で席の前方を観察している

「担任とだろ?」

「きもぉ〜」

授業は集中できないからこっそりあいつに視線を移す

その目は転校生を仕留めて離さない

前列でそっと授業を聞いてる転校生

似通った2人の世界

昔から落ち着いているあいつには合うんだろう

その刹那、記憶がフラッシュバックした

「この食べ物はそれぞれ異なるキーワードになっています…」


いた、殺される筈だった子

「なんでのうのうと生きれるんですか?」

一瞬で肩が強張るのが分かった

ゆっくり振り向くその顔には殺意を感じる

なんて奇麗なのでしょう

「あんたこそ、今更何しに来たわけ?」

相変わらず意地張っちゃって…

緊張を誤魔化しきれない様子が意地らしい

「貴女がここにいたいのならば、やるべきことがあります」

彼女の喉からひゅっという音がした

「今回は私も協力致します」

安心させようと優しく微笑んだつもりが返って警戒させたようだ

「誰も殺すなよ?」

そんな分かりきったこと言う必要はないのに


この学校は居心地が悪い

授業態度も成績も悪い

唯一の救いは、楽しそうに戯れる男子生徒たちだろう

そろそろ実家から送られてくるスイカを、ぜひプレゼントしたいものだ

喜ぶ姿が目に浮かぶ

『息子が欲しかったわ』

ふと妻の声が頭に甦った

はぁ

深呼吸は1番の精神統一方法

贔屓は良くない

生徒1人1人に対して愛を持って接しなければならない、それが教師である

「せんせっ!」

しかし例外はいる

「先生さ、欲求不満すぎて転校生襲っちゃった?笑」

声を振り切って歩き続ける

「奥さんが帰って来ないからって生徒に手ぇ出すとか有り得ないねぇ」

誰もいない廊下に高い声はよく響く

「ま、あたしにしてることと同じ?変わんないね!」

以前からの挑発は日に日にヒートアップしている

「もう一生帰ってくんな馬鹿親父!淋しい孤独死バタンキュー!笑」

黙れ黙れ黙れ

何を血迷ったか、気づいたときには娘の首を力一杯壁に押し付けていた


呼び止められたのは、あの日以来か

「用件は?」

思ったよりキツい言い方をしてしまった

「これ忘れ物」

ゆっくり投げられ、コントロール良く俺の手に収まった

「何でこれお前が持ってんの?」

彼女は不気味に笑うだけで何も応えない

ストラップのエルモと目が合う

前まで気に入っていた笑顔が、今日はやけに恐ろしく感じる

「これ今使ってねぇよ」

首を傾げる彼女に仕方なく説明する

「鍵なんてもう一生閉めないって分かるだろ?」

全てを悟った表情

笑顔はもう消えた

沈黙に耐え切れなくなって、彼女の横を通過する

「あんたの大切な人がいなくなる」

奇妙な言葉を囁かれた気がした

甘い匂いが鼻に纏わりついて離れない


きもい

これで興奮してるあたしも大概だ

力を込める手は緩み始めた

「性虐待に続いて殺人未遂とか終わってんね笑」

あたしに荒い息がかかる

お花みたいな甘い匂いだ

「いっそ殺してくれればいいのにー?」

おとうさんは、なんだかぐったりとして手を離した

「お前まで失うのはごめんだ」

へぇそれどの口が言ってるん?

「おかあさんって、ほんとに失踪したのかなぁ」

言い過ぎたかも

血走った目をぎゅっと瞑りながら告げられる

「本当に、もうこれ以上、関わらないでくれ」

苦しそう

疲れ切った後ろ姿を見送る

今追いかけるのはやめとこう


「みっけ!」

身体が無意識に反応してしまう

ずっと聞きたかった声と、愛らしい顔

そして、あの日から変わってしまった、不吉な笑み

「何で?」

俺の質問には答えず駆け寄ってくる

「会えなくて死ぬかと思った…!」

やけに甘ったるい声

自己紹介の演技は何だったんだよ…?

抱きついてくる身体を大人しく受け止める

接した部分から小さな鼓動が伝わってくる

血液が充満していくのを止められない

俺の心臓はうるさい音を立てている

静かな呼吸を感じながら、これで最後にしようと言い聞かせた


「おとうさーんww」

毎度の如く僕の太腿に乗っかってくる

「その呼び方はするな、誤解されるから」

「おもろいから無理」

聞かないのは分かっている

「次の試験の問題教えてくんね?」

何度言えば降参するんだ?

「それは出来ない」

そう真正面から迫るな

「けちくさ!」

アホくさ!

「ちょっとくらい良いよな?」

密着した部分が火照っていく

今日は誘惑に勝てそうにない

「なんかさ、」

何やら呟き始めた

「あんたの、はぁ、娘、死ぬ、待って、」

何か言っているが聞こえない

教育中だ、喋るな


しんとした校舎に、自分の足音だけが響く

ほ、と息を吐く

丁度この辺りが、江戸時代から続く自殺の名所だったようだ

寺子屋の…

ここは何をする場所だったのか

また生徒たちに授業をしたい

何とか叶えたいものだ

この窓だ

すっかり暗くなってしまった夜の学校で、しっかり戸締まりをする

ここには鍵が無い

そのせいで昔から事件が起きる


テストが返ってきた

「これ国際信州学院の?」

「出しやがったな!」

「平均下がるやん」

よく喋るねぇ笑

「え、おまえひっっくww」

「ヤメロオマエ」

「ビー玉うるせぇww」

「てめぇら全員がうるせぇんだよ」

親友が半ギレしてる

恐らくテストが案外難しかったんだろう

あと、睡眠不足も原因の1つ

「最後の、あと1個の象徴とか知らんわ」

優秀なのに珍しいと思いつつ、ここぞとばかりにマウントを取ってみる

「あたしぃミニトマトの方は書けたよー!」

自信満々なのが鼻についたのだろうか

「あーそれ?あんたに似てる馬鹿っぽい子でしょ?」

眉間に皺を寄せられ、毒舌を吐かれた


「うーわこいつ高ぇ!」

「ズルしとるん?」

「担任に泣きついて!?」

男子軍団が転校生の解答用紙を手に持って騒いでいる

転校生は下を向いたまま動かない

「あららぁ、可哀想ぅー笑」

そう言ってられるのも今のうちだな

「あの子どう思ってるんだろー?無反応だしぃ」

とりあえずここは同調しておこう

「最初から男子に絡まれてるから話しかけづらいよな」

ねー、と答えつつ馬鹿な女はあいつを探している

愛しの彼に点数を聞きに行きたいらしい

やけにキョロキョロしてるのが本当にうざい

まぁいいか

この後絶対妬くだろう

娯しみすぎてゾクゾクする

内心ほくそ笑んでいた


なんであいつらは構うんだ?

で、あいつはなぜ反抗しない?

理解に苦しむ

無視して見直しを再開するも、その様子が気になってしまう

男子の口撃が一層激しくなっている

あいつが唇を噛み締めているのが見えた

危ない

このまま放置していたら大変なことになるだろう

俺は意を決して、仕方なく席を立った

「やめろよ」

その声に明らかに不快そうな男子たちが、俺を白けた目で見る

「自分の点数言ってから人のを見ろ」

騒いでいた男子の声が消えた教室に、静けさが目立つ

男子の顔が一気に冷めていく

ただ1人俯いていた顔が晴れるのが見えた


やってんなぁ

あいつはまた転校生を庇っている

お、ようやく発見したか?

やはり悲しそうな顔をして彼氏を見ている

さっきの威勢の良さはどこ行ったんですかー?ww

咄嗟に出そうな言葉を飲み込む

こいつが泣きそうだな

「はぁー?」

「おまえこいつの肩持つん?」

「だってこいつ担任と、」

「昔からあいつは弱い子守ってたから」

流石に見ていられなくて遠くの声を遮る

「いいなぁーずっと一緒だもんねぇ」

弱気な顔を引っ込めて羨ましそうに言う

いや、そうでもないんだなこれが

お馬鹿さんには一生理解できんよ…


俺は男子が押し付けた掃除を秒で終わらせ教室に戻ってきた

あいつがいた

担任に言われていた花の水やりをしている

呑気なものだ

やばい

こっちを振り返る目に捕まる

俺はその目から逃れられないことを知っている

また2人になってしまった

「大丈夫か?」

逃げたい一心で急いで口を動かした

何を尋ねているのか俺も分からない

「…うん、」

意外にも控えめだ

なんとなく恥ずかしそうに足を動かしている

「お前変わったな」

俺はまた言わなくてもいいようなことを言う

「そうかな?ぅふふ」

でもきもい笑い方は変わってない

これ以上いたらまずい

「じゃ、そろそろ行くわ」

「あ、忘れ物!!」

成長して強くなった手で、ぐいと腕を引かれていた


「今日午前中でテスト終わるって知らなかったぁ!」

掃除中だろ、何してんだよ…

「今食うなwwてかミニトマトありすぎww」

脳の栄養が全て顔面に集まったような女だ

ここまで来ると非常識過ぎておもろい

耳に痛い言葉は聞こえない振りをして、

「ねぇ、今日一緒帰る?放課後カラオケ行こぉ!」

もう遊ぶことしか考えていない単細胞の鑑

「あいつに確認してからだな」

ご丁寧に催促して差し上げた

後ろから冷ややかな視線を感じる

お願いだ、早く逃げてくれ

「あーうん、教室にいると思うから言ってくるね!」

言い終わる前に走り出している

「やばぁ」

クスクスという嘲笑はあの女には届かなくて良い


角を曲がったら誰もいなくなった

親友たちも見えなくなった

鼻歌交じりでスキップする

今の家では鼻歌でさえも許されない

ほんとやになっちゃう

前のとこで我慢してれば良かったかもなぁ

手に持ってたミニトマトを口に放り込む

なんでこんなに甘いんだろう

噛むと口一杯に甘味が広がる

大好き

お、

でもこの子は外れだ、酸っぱい

空いている窓から食べかけを放り投げる

誰も見てないもん、大丈夫

合わないなら、さっさと捨てちゃえばいい

新しいものなんていくらでもある

大声で歌いながら階段を一つ飛ばしで進む

あれ?

廊下に知らない女の子の笑い声が響く

鈴の音のような儚い小さな、でも、めっちゃ可愛い声

あたしは鼓動を抑えて教室のドアを開けた


居なくなった瞬間は地獄

「あの転校生の話って結局マジなん?」

「男子が言ってたし嘘っぽくね?」

「それより、あいつが転校生守ってたの見た?」

「あー、熱いね」

「三角関係じゃんw」

ほらまた言われてるよ…

止まらない悪口パーティー

「あんたは元カノとしてどうよ?」

はぁ、その話題回すなよ

「んーそろそろ捨てられると思う」

面倒なので適当に言った

女子たちは愉快そうに高笑いしている

「あんたらって結局付き合ってたわけ?w」

徹夜で疲れてんのにマジでストレス

「ただの幼馴染って説あるけど」

嫌そうな顔が出ていたかもしれない

女子たちは察したのか、次の標的の話題に移行している

うちらの陰口、あの女は気づいてないだろうな

申し訳ないのか…(?)

疲弊している脳が誤った感情を表す

これに関して罪悪感を持ったことは、一度もない


視線がぶつかる

手に持っていた弁当箱からミニトマトが床に散った

転校生の口から、ふ、という息が漏れるのが聞こえた

あたしは目を背けたくて、下を向いた

涙が込み上げそうだがぐっと怺える

彼が何か言い聞かせているのが視野に入ってきた

悔しくて、唇を噛み締める

「ずっと待ってるから」

その子は意味の分からないことを言い放ち、風のように身を翻して教室を去る

「この荷物届けてくるわ」

彼はあたしを一切見ずに立ち上がって出て行く

「待って!!」

あたしは馬鹿だ

何をしたら彼を止められるか判断出来なかった

彼の手から荷物が落ちた

気づいたら、彼のネクタイを掴んで引き寄せていた

拒否してくる彼の舌が絡まって離れない

あの子の香りを消したい一心で

振り返った転校生の気配がした

我に返った彼が振り解こうとする前に、あたしは深く口付けをしながら彼を教室に押し込んだ


いくら拭っても、後味が悪い

「説明してよ」

その口から俺の嫌いな臭いが漂う

「なんでいつも隠すの?」

彼女は今にも泣き出しそうな顔で俺に問うた

泣く奴が嫌いって言った俺を前にして我慢している

健気だ

何を説明するべきなんだろう

「笑ってた…、キス、してた…」

俺はもう何も言えず目を逸らした

一言で彼女を壊してしまいそうだ

何も言えない

何も言いたくない

唇から血が滲んでいるのが視界の端に見えた

怖い

後ろから足音が近づいてくる

俺たちに踏みつけられたミニトマトは血の海のよう

吐きそうだ

俺は上がってくる胃液を飲み込んだ


「能天気な貴女には私達の気持ちなんて分からないでしょう!!」

私はあの馬鹿女に無性に腹が立っていた

教卓に飾ってあったカンナが入ったままの花瓶を投げつけた

女は悲鳴を上げて顔を押さえる

私は可笑しくて笑った

兄は女の前に出て私から守る態勢を取った

女は怖がりつつも口角が上がるのが見えた

頭に血が上る

殺したい

あの時と同じ感情が芽生えた

私は誰かが置いていったスイカを踏み潰した

そして、なりふり構わず投げ始めた

兄にあたった顔から血のように流れている

女は泣き喚いているのにさっきより口角が上がっている

狂ってる

兄が何か言っているのが見えるけど私の耳には入らない

女は笑っているように見える

誰も私を止められない

私は私を止められないから


遅い

女子たちはとうの昔に帰ってしまった

あの女なんて置いていけば良かったかもしれない

見上げても見えるわけないのに窓から身を乗り出す

一体何にもたついてんの

今日はそろそろ大事なこと言おうと思ったのに

そういやさっきは馬鹿にしたけど、うちも果物持って来たんよ…

今日の朝は忙しかった

綺麗な丸いリンゴをリュックから取り出す

ポケットから出したナイフで丁寧に皮を剥く

真っ赤な皮が下校中のカップルの上で風に乗って舞っている

あ、頭に当たった

その女の間抜けな顔といったら

「あの事件の犯人、ここら辺彷徨いてるって!」

「怖えー!ww」

こいつら絶対掃除サボってる

「おまえ刺されたいんだっけ?」

「んなことより早く教室行ってスイカ食おうぜ!」

また夏が来るんだ

「種飛ばしするcar」

勢いよく走り去る足音が廊下を揺らす

目の前にいたのに

男子ってやっぱ馬鹿だ

失笑してしまう

勾欄に肘をかけた手から、その笑い声が花弁のように1枚1枚散っていった


いつも元気な男子生徒たちが今日は声を潜めている

少し怖がっているようにも見える

どうやら今回の試験は難しくしすぎたようだ

「なんか変な声聞こえね?」

「俺らの教室から?」

「いやもうちょい近くか?」

「なんか気味悪ぃわ、帰ろうぜ!」

よーいどん、と誰かが言った

「おーい、君たち走るなぁー!」

思い切り怒鳴って注意したからだろう

尻尾を巻いて逃げ帰って行った

僕もたまには大声だって出せるんだぞ!

ん?

突然の寒気に身震いする

なんだか校内が騒がしい

係に頼んだ花瓶はまだ戻ってこない

あの子は何をしているんだろうか…

「哈哈哈哈」

誰?

ぞっとした

狂気的な嗤い声と罵声が、校内にこだましている

耳を塞いでもガンガン頭に響いてくる

いつもの片頭痛だろうか

「いい加減やめろ!」

「あたしだってぇ」

「呵呵呵呵」

「赤いものが」

「嫌いって」

「俺は!」

「嘻嘻嘻嘻」

「殺した時」

「見た」

「トラウマだから」

「嘎嘎嘎嘎」

強烈な痛みを振り払いたくて、急いで窓を開ける

空から何か赤いものが降ってくる

吐きそうだ


3組の担任にまた苦情が来ている

これで何件目だ?

自分の教室だからといって、あそこまでスイカを散乱させることはなかろう

根性があって熱い先生なのだが、少しどうかしている

しかも今日に限っては早急に言わなければならないことがあるというのに

いくら探してもその姿は見つからない

呆れてしまう

見込みの無い人材はこの世界には不要だ

早々に処分していれば良かったかもしれない

この春から問題児学級に配属させた

徐々に蝕む作戦だったが…

失敗したのか

微かに甘い香りがした

不思議に思ってその先へ急ぐ

??

「何をしている?」

窓から身を乗り出している女子生徒に声をかけた

手からは何か血液のようなものが垂れてい…

「邪魔すんな」

獣のような目でナイフを向けられていた

血が騒ぐ

脊髄反射で体勢を変える

「明日はビッグニュースになるよ?この学校が隠蔽してること、そろそろ国に公表しないとね」

相手が何か話し始めたらこっちのものだ

ゆっくり近づいて、すかさず奪い取る

「さすが、お見事ww」

この状況で笑っていられる彼女を素直に尊敬する

遠くからか、消魂しい悲鳴が地鳴りのように校舎を駆け巡っていった

それとほぼ同時か、それより前だったか、どこか近くで奇妙な落下音がした

女子生徒はその音に驚きもせずに、窓の外へと飛び降りてしまった

怖くなかったらすみません!!

私はドラえもんで怖くて泣くような子供だったので、普通の方々にとっては、ミステリーっぽく感じるかも!?

伏線をはりすぎて、回収しきれてないとこもあるかな?

でも、初投稿!(初めて小説を書いて何の添削もせず投稿したもの)なので、大目に見てください❤︎

読んでくださってありがとうございました(:D)┓


前書き、後書きの人間性うざくてごめんね>_<

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ