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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

黒の仕事人

作者: ねこ

Twitterにて投票した結果、私に書いて欲しいジャンルでファンタジーが選ばれまして書きました。


楽しんで頂けると幸いです。


それでは本編をどうぞ!

「マスター、クロを頼む……」


 俺は客の居ないバーに入ると一杯の酒を注文した。マスターと呼ばれた男は軽く手を上げて答える。そして俺ははマスターの前へと座った。


「ダンナも好きですね……こんな無価値な酒を頼むなんて……」


「フンッ、今の俺にはピッタリの酒だ……」


 俺は皮肉げに笑うと出されたクロと言う酒を一気に飲み干した。


 クロという酒はこの世界で最も不味く金を出してまで飲む価値がない事から『無価値』という意味を持つ酒だ。


 では、何故こんな酒を俺は呑んでいるのか……今日はそれを話して行こう。



 「依頼ですか?」


 俺は5日前とある商人から依頼を受けた。その依頼の内容はこうだ。


「ああ、ガレット商会の闇を暴いてほしい。報酬は弾む。」

「同じ商人のライバルを消せと?」

「言い方としては合っている。だが、重要なのはそこではない……」


 依頼人は苦い顔をして言った。


「この商人が魔法で操っているかどうかを探って欲しいのだ。」

「と、言いますと?」


「洗脳系の魔法を使って商売をやってるのであれば私ども商人は全て潰れます。そうなればあの商会の一強状態になる。今食い止めなければ……」


「市民が困るか……確かに一強となってしまえば価格は店側が決めた値段でしか買えなくなるからな……分かった調査はしよう。殺すか、殺さないかはこちらの判断でいいな?」


「殺さないのですか?」

「無闇に人を殺さないのがもっとうなのでな。」


 そう言って差し出した手を依頼人はしっかりと握りかえした。


 交渉成立……


 という事で調査を開始したのだが……資料に目を通すと出てくるのは黒い情報ばかりだった。


(なんだこれは……詐称されてるのに後に書き換えられてやがる……)


「チッ……これは役所もグルか。やりづらいな……」


 私は苛立ちを覚え舌打ちをした。すると部屋をノックする音がした。私が扉を開けると誰も居なかった。


「……悪戯か……」


 私は扉を閉めようとした。


「待って!」


 私は下を向くとそこには幼子(おさなご)の娘がいた。


「依頼があってきたの……」

「ここは子供が来るところじゃない。帰んな。」

「だから、待っててば!」


 娘はそれでも私のズボンを掴んで引き下がらなかった。


「言ってる事が分からないほど子供でもないだろう。そういう事は警察に頼め、こっちも暇ではないんだ。」


「では、話だけでも聞いて下さい。」

「はぁ……聞くだけだぞ。」


 俺は娘の目を見てこの娘が引き下がらないのが分かってしまった。俺はため息を吐いて部屋へと入れた。


 うちの事務所にジュースなどない。なので子供だろうとコーヒーを出す。


「ありがとうございます。頂きます。」

「ほぉ……飲めるのか……」


「17ですから……」

「ぶふっ……」


 これには俺も驚いた。見た目は完全に10歳未満にしか見えないからだ。俺はコーヒーを少し噴き出してしまう。


「だ、大丈夫ですか?」

「あ……ああ……失礼した?」


 俺はハンカチで口周りを拭くと話を聞く事にした。


「それで……話とは……」

「父を殺して下さい。」


 俺は耳を疑った。子供が親の殺害依頼など聞いた事ないからだ。


「君は自分が言ってる事が分かってるのか?」

「分かっております。」


 俺の低い声にも動じる事なく娘は返事を返してきた。


「でも、このままでは街の人が物を買えなくなります。そうなる前にお願いしたいのです。」


(ん?この娘……もしや……)


「君はもしかしてガレット商会の人間か?」

「はい、その代表の娘です。」


 これはまた渡りに船の様な依頼だった。


「では、報酬だが……」

「お金ならありますよ。」


「いや、金は要らない。その代わりにターゲットに手紙を送ってくれたまえ。」


 俺は机に向かって手紙を書いた。


(きん)の取引をしたい。日時はそちらが指定して構わない。吉報を待ってる』


 この内容の手紙を書いて娘へと渡した。そして扉の取手に手をかけたところで娘は止まって俺の方へ振り返った。


「ねぇ、もし私が人質に取られたらあなたはどうしますか?」


「質問の意味がわからないな……」

「私の父は自分が危なくなったらなんでもする人です。なのであなたはどうしますか?」


 俺の答えを聞くと娘はクスッと笑った。そして扉を開けて出て行った。



 娘に手紙を持たせて2日後、俺の仮の事務所へ黒服の男が2人が手紙を持ってきた。


「これが答えか?」


 俺が手紙を受け取り黒服の男たちに問うたが……


「いいから読め。」


 私は黙ってナイフを取り出し、手紙の封を切って中身を見た。


『娘が世話になった。良いでしょう。明後日、我が邸宅へ来るといい、そちらの言い値で買おうじゃないか。良ければこれからの契約も結びたい。では、明後日。』


 俺は了承の返事をして、向かう時刻を告げると男たちは帰って行った。


「ふぅ……下準備はこのくらいか……ふっ……ザルな奴らだ……」


 俺はテーブルに仕掛けられていた盗聴器を見つけた


(大方、俺が手紙を読んでいる間に付けたのだろうが……)


 俺はそれを手に取り床へ捨てると踏みつけて部屋を出た。



 2日後……


「お待ちしておりました。サイ様。どうぞ中へ。」


 もちろん名前は偽名である。そして俺は貰った封筒を門前の兵士へ渡すと確認を取り中へと入る。


(ここまでは簡単だ……)


 俺は屋敷へ入り、中にいた警備に部屋へと案内された。部屋にいたのは6人の黒服の男たちと白い服を着たオーナーの男、そしてその横にはあの娘がいた。


「どうも、ガレット商会代表のバレットだ。」

「ハイレット商会代表のサイだ。よろしく。」


 俺たちは握手を交わすとソファへと座り商談を開始した。


 ちなみにこういう時は作り笑いをして印象を良く見せる。これも生き残る為の術だ。


「まず、サイさんの(きん)は何処で採れた物かを教えて頂きたい。」

「ほぅ、それは何故かな?」


「我々としても違法な物を取引したくはない。正式な場所からクリーンな物を受け取りたい。もし不正がバレれば信用に関わるからな。」


(ふっ、良く言うな……)


「確かに信用に関わるのは商会の命運にも関わりますしな。」


 俺は納得するふりをして事前に手を結んでいる鉱石採掘屋の名前と鉱山となってる山を伝えた。


「ほぅ……あの採掘屋か……ならば信用できるな。だがその鉱山から(きん)が出たという話は聞かないんだがな。」


「それはまだ外には出していない情報だからです。本当に信用が出来る人間にしか伝えておりません。」


「ほぅ。という事はサイさんは僕の事をそこまで信頼してくれているという事ですか。」


「そう受け取って貰って構わないですよ。」


 相手に少し有益な情報を出して相手の信頼と油断を得る。さぁ、ここからだ。


「それでは値段交渉と行こう。」

「こちらとしては1Kg1000ポンドとして貰いたい。」


 私の金額を聞くとバレットは笑った。


「ははは。それは足元を見過ぎでしょう。まずは100ポンドからだ。」


「おやおや、言い値で買うと言うお話では?」

「確かに、だが、あまりにも不当な値段なら私も食い下がるわけにはいきません。従業員の生活もありますから。」


(また耳障りの良い言葉を……給金など微々たるものだというのに……)


 調べはついていた。(きん)の相場は現在1Kg1200ポンドが水準だ。従業員の給金は最安値でこき使われている、違法な労働環境も調べてきた。全てこちらは知っているのだこちらも食い下がる訳にはいかん。


「では、500ポンドだ。これ以上下げればこちらも従業員に給金を払えなくなる。」


「ならば払わなければいい。」


「なんだと?」


 俺は目つきを鋭くする。だが、バレットは普通に続けやがった。


「アイツらは俺の奴隷だ、給金など本当は払いたくもない。だが払わなければ役人もうるさい。だから最低賃金は支払っているのだ。」


「アンタ……それでも人か……?」


 俺は怒りを堪えながら聞き返した。


「ふふふ。君ももうじき僕の手駒さ。さぁ、こちらにサインを。」


 バレットは1枚の契約書を出した。


「断る!人を人と見れない人間との契約はしない。」


「では、私の目を見て下さい。」


 そういうと奴は俺と目を合わせてきた。すると意識が遠くなるのを感じた。


(これか……)


「さぁ、契約書にサインをサイさん。」


 だが、精神干渉の魔法って分かっているなら対策はある。俺は持ってたペンを太ももへとブッ刺した。


「な、何を⁉︎」

「ハァハァ、危なかったぜ……」


 俺は太ももの痛みで正気を取り戻す。


「さて、サインだったな……そらよ!」


 俺はテーブルをひっくり返した。契約書にはコーヒーや水がかかって書く事ができなくなった。


「き、貴様何者だ!」

「俺はただの商人さ……特殊な仕事のな。」


「や、やれ!」


 バレットの言葉に後ろで構えていた6人の男が襲いかかってきた。


「お前ら、あんなクズに付いていて楽しいのか?」


 俺の質問に誰も答えなかった。帰ってきたのは火炎弾と風刃だった。俺はそれを避けずに魔法障壁で受け止める。


「な、なに⁉︎」


 黒服たちが驚く事はなかったが、代わりにバレットが驚いていた。つまりコイツらは操られているだけだ。ならば……


「お前らはおそらく沢山の人間を自らの意志に関係なく殺して来たのだろう。もし意識が戻っても殺されるだけだ。ならば……」


 俺の言葉など関係なく奴らは突っ込んでくる、


「今ここで楽にしてやろう。」


 俺は指先に魔力を集めて風圧弾を作り、奴らの脳天を撃ち抜いた。


「せめてもの情けだ。一撃で楽にしてやる。さて……」


  俺は改めてバレットに向き直った。するとバレットは娘を人質にしていた。


「お、お前のせいだからな!責任取って僕の盾になってもらうぞ。」

「……」


(どこまで腐ってやがる……)


 あの娘はもはや何も発していない。それは諦めなのか、それとも同情か……俺には関係のないことか……


「お、お前は風魔法の使い手か……?」

「お前さんは馬鹿なのか?敵に情報をやる奴がどこにいる?」


「ま、まぁ良い、生き残ればまたやり直せるんだ……役人どもも洗脳出来てるんだから!」


 やはりあの穴だらけの資料は操られていたからか……


「おい、その子を道連れにする気か?」

「お、お前は撃てるのか?こんな年端もいかん少女を撃てるのか⁉︎」


 俺は一度手を下げた。そして娘に声をかける。


「おい、娘……まだ名前を聞いてなかったな。教えてくれるか?」


 娘は顔を上げて笑ったそして……


「……レナ……レナだよ!」

「そうか……レナか……じゃあレナ、これが俺の答えだ!」


 そして俺は風圧弾を作り彼女の身体をバレットもろとも撃ち抜いた。


「がはっ!お、お前……撃つのかよ!女子供関係ないのか!」


 血反吐を吐いて叫ぶバレットの頭に風圧弾を3発打ち込んだ。


「ああ……それが俺の仕事だからな……」


 血塗れの部屋で誰にも聞こえない声で俺は死んだバレットに向かって告げるのだった。


 あの時、事務所でレナに言った言葉は……


『撃つさ……それが俺の仕事だからな……』


 その後、洗脳が解けた奴らがガレット商会へのガサ入れを行った。被疑者であるバレットは既に亡くなっていた為、重役達が捕まるという形になりこの事件は幕を閉じた。




 再び最初のバーへ……


「マスター、もう一杯だ……」

「ダンナ、飲み過ぎだ。今回は一体何人やったのさ?」


「ターゲットを除けば6()()だ。」

「ならそれで終わりじゃないのかい?」


「いいや……もう一杯だ……」

「何故ですか?」


 俺はあの時の事を思い出す……


 俺の視界にはレナの顔が入った。そしてレナは笑っていやがった。その笑顔を俺は傷つけたくなかった。本当は楽に死なせてやる為に頭をぶち抜いてやるのが1番だったのだ。なのに俺は……そんな心の弱さからあの娘が苦しんじまうやり方……腹を撃ち抜くというなんとも残忍なやり方をしてしまったのだ。


 最後奴に3発の風圧弾を打ち込んだのはただの八つ当たりだった。そんな俺を俺が許せないのだ。悪党とは言え、八つ当たりをするのはプロとして失格なのだから……


「ダンナ、今日はそれが最後です。続きの贖罪は明日で。」


「分かった……すまないな……マスター」


 俺は依頼して来た商会屋の依頼主からの報酬金をマスターに渡した。


「ツケの分だ。貰ってくれ……」

「少し多い様だが……」


「それじゃあ、()()()()()()にでも奢ってやんな……」


 そう言うと俺は店を後にした。


「おやおや気づかれてたみたいですよ。お嬢さん。」

「みたいですね。でも、それなら何故あんなにやけ酒してたのでしょう?」


「あなたを傷つけたからじゃないですか?レナさん。」

「私、もしかしてあの人に結構気に入られてますか?」


「さぁ……それは本人に聞いてみて下さい。」

「では、聞いてきます。あの人を紹介してくれてありがとうございました!」


「その前に、あなたはどうして生きているのですか?あのダンナは回復魔法は全く使えませんよ。」


「それは私がアンデッドボディの持ち主だからよ。」


 レナはクスクス笑って外へと出て行った。


「おやおや、とんでもない者を背負い込みましたね、ダンナ……」


 マスターは店じまいの準備を始めた。そして、男と娘は街の夜闇の中へと消えて行った。

ここまで読んで頂きありがとうございました。


恐らく連載はしません。するとしたら主人公の男性を女性にして百合な要素を含む話にします。


それでも全く話の終わり方が見えないので連載は難しいと思ってます。


それでもここまで読んで頂きありがとうございました。

こちらも書いてて楽しかったです。

ありがとうございました。

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