短編 お題に沿って書いてみよう。
ランダムジェネレーターというサイトを利用し、お題を作ってもらいました。
http://therianthrope.lv9.org/dai_gene/#
どのような感想を持ってもらえるのか、興味があり投稿いたしました。
拙い文章ではありますが、読んで頂けると嬉しいです。
幸せが長く続くのはおとぎ話の中だけよ。
これは母の口癖だった。
どこか事務的で、現実を見つめているような口調。
父と口論を幾度となく繰り返し、私は法律的に父親という存在を失ってしまった。
離婚、という言葉の意味を知ったのは中学校に上がる前で、幸いにもそこに触れるような友人は居なかった。
当たり障りのない会話を続け、表面上は仲良しグループ。下らない。
おとぎ話に囲まれて育ったような生徒達を、私は見下していたのかも知れない。
落ちゆく意識の中で、最後に考えていたのはそんなことだった。
事の発端は二ヶ月前。
父は離婚後も連絡をくれて、会う度に色々な服やバッグを買って貰った。
新しい環境に馴染むまでには時間がかかるね、とバツの悪そうな顔をしながら、以前よりも白髪の増えた頭を掻く。
好きでもないし嫌いでもない。与太話に付き合うだけでアイテムが手に入る。RPGのクエストをこなすように淡々と進める。
何度目かの約束に、父は来なかった。
時間を過ぎても、こちらから連絡をしても、一切の返事が無かった。
母が服の山を見つけるのは時間の問題だったらしい。
バイトもしていない娘が大量の服を持っている、経済的な支援をしている人物とくれば、確かに最初に考えるのは父だろう。
一切の連絡が禁止され、私は一人ぼっちになった。
他校の生徒との恋愛禁止。
そんなアイドルのようなルールがあることはもちろん知っていた。人権侵害も甚だしい。下らない。
けれど、恋愛やらなんやらが人の目を狂わせる事も、トラブルの原因になることも分かっていた。
分かっていたはずなのに、彼に出会ってしまった。
ルックスは中の上くらい、野暮ったい茶色に染めた髪。ピアスを開ける度胸もないような、中途半端なヤンキーという印象。
特に目的もなく街をぶらついていた私は、いわゆるナンパというやつに引っかかってしまった。
いや、自分からそのエサに食いついた、というのが正しい。
校則を破る事と親への反抗心、どちらが働いたかのかは分からない。
ただカラオケボックスへと誘われるままに。後のことはあまり良く覚えていない。
落ちていく。
耳元を風が通り過ぎてゆく。ドライヤーの強風よりもうるさい。心臓の音が一層大きくなる。
「あなたの秘密、知っちゃった。今日の放課後屋上で。」
そんな手紙が下駄箱に入っていたが、最初は無視しようとした。
よくあるイタズラの類だと思ったし、あの「おとぎの国の住人たち」がやりそうな、ベタなパターン。下らない。
刻限が迫るにつれて、誰が何の目的でそんなイタズラをするのか興味が湧いた。
ランダムに選ばれたとしても、何故私なのかを知りたかった。
電子キーでロックされている筈のドアは、何の抵抗もなく開け放たれた。
「あんた、誰? 何を知っているというの?」
お決まりのセリフを言わされているような、むずむずする感覚。
「何もかも。あなたが知られたくないことは全て。」
その女……女生徒はくるりとこちらを振り向いた。知らない顔だ。
「見たし、聞いた。聞いちゃった。」
一瞬、あのカラオケボックスの事を想像した。恥ずかしさよりも怒りがこみ上げてくる。
「そう、その事よ」とソイツは続ける。
はったりだ。
誰しも知られたくない事なんてあるし、適当に言ってても当たる。
こういう文句の後には大体金銭的な要求が来るはずだ。
「で、どうだった? 私はシたことないから」と、こちらの嫌な言い方を予め知っているような口ぶりで。
落ちる。
交換条件、というにはあまりにも簡単すぎて拍子抜けした。
それと同時に、そんな事で黙っていてくれるのかと安心した。
お友達になってくれれば、何も見なかったし聞いてなかったことにしてあげる、と。
上辺だけの友達関係。弱みは常に握られている状態だけれど、それは金銭を手渡したとしても変わらない構図のまま。
同じクラスメイトではなさそうだから、卒業まで完全無視でも通せる可能性は高い。
あと半年、何事もなければ。
ふと、両手をこちらに差し出していることに気づいた。
「これからもよろしくね」とでも言いたげに、小首をかしげている。
お友達ごっこに付き合ってあげる、下らないけれど。
こちらが手を差し出した瞬間、屋上の床のタイルが目に入った。
合気道か何かの熟練者が人を投げるのを見たことがある。特に力を入れていないのにふわっと倒される。
倒れ込む時特有の血流を感じ、目を閉じる。
しかし、衝撃は来なかった。
頭から血が引いていく感覚。だんだんと冷たくなっていくような。
右手首と右腕の付け根が痛い。目を開けるとぐるぐる振り回されているのだと分かった。
「え? なんで」と間抜けな声を上げると同時に、緑色のフェンスが視界に入り、消え去った。
離しやがった。
やや右回転しながら、確実に地面へと落ちてゆく。
通常の人間にあんなことが出来るのか、なぜ殺すのか、なぜ私だけがこんな目に合わなければならないのか。
思考もぐるぐると回りだす。土星の輪から解き放たれたデブリ。
畜生が、交換条件なんて嘘じゃないか!
落ちたら痛いだろうな、いや死ぬ。
あ、革靴が脱げた。
車の上はやだな。
おとう さ。
落ちた。
まえがきにも記載させて頂きましたが、ジェネレーターを使用しお題を作っております。
(3つのキーワードを自動生成するサイトです。)
タイピング速度の向上、他者から見て読みやすい文章、語彙力を高めるという三点を考慮しながら書きました。
読んでいて疑問に思った点や、読みづらい部分、ここをこうすると良いというご指摘等ございましたら、忌憚なく一文頂ければと思います。
最後に、ここまで読んで頂きありがとうございます。