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第1章 第43話 想定外に判明したこと

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 断崖絶壁に吹っ飛ばされ絶体絶命のピンチに陥ったナキを救ったのは、一年(ひととせ)年前にこの世界(異世界)へ来て一ノ月しか経っていないナキを付け狙った巨鳥だった。

 ナキを掴んだ巨鳥はそのまま羽ばたき、崖上にいるクルークハイト達がいる位置よりも高く飛翔する。

 突然の邂逅(かいこう)で呆然としていたナキだったが、しばらくして現在自分が陥っている状況を理解した瞬間、右手拳に炎の魔力(マナ)を集める。


「……ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


「クェエエエエエエエエッ!?」


 炎の魔力を集めた直後に悲鳴を上げると同時に、自身の胴体を掴んでいる巨鳥の足を後ろ向きに強く殴りつけ爆発を起こす。

 意図せぬナキの攻撃に驚いた巨鳥は、その拍子にナキを放してしまい、その結果ナキは真っ逆さまに落下する事となった。


「アアアアアアアアアアアアアアッ!」


「ギャアアアッナキィイイイイイイイッ!?」


「シェイシェイバリケートの蔓を伸ばして坊主を受け止めろ!」


《わかった!》


 真っ逆さまに落下するナキを目の当たりに一人混乱するクルークハイトをよそに、ヴァンダルは冷静にシェイシェイへ指示を出してナキの救出をする。

 シェイシェイはヴァンダルの指示通りに動き、ツルの先端を籠状にして無きの落下位置まで移動させる。


 そのままナキは蔓の籠の中に落下し、それを確認したシェイシェイはそのまま蔓を自分達がいる場所まで移動させた。

 籠が自分達の下まで来ると、クルークハイトとヴァンダル、周囲にいる下位精霊達は急いでナキの安否を確認する。


「ナキ、大丈夫!?」


「無事か坊主?!」


《 《 《ナキーッ!》 》 》 


《ナキだいじょうぶ? 右手やけどしてるよ!》


 ナキが右手に火傷を負っているのを見た契約精霊であるカノンを含む花の下位精霊達がすぐさまエレメンタルで治療を始める。

 蔓の籠の中に入ったナキは、巨鳥を殴った拍子に爆発した影響で火傷を負った意外無傷であるが、極度の緊張状態に陥っているのか呼吸が荒々しかった。


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ! なんで? なんでアイツがここに!?」


「ナキ、どうしたんだ? ちょっと変だぞ?」


「クックルークハイトッ、アレ、アレ!

 前に話した俺を襲った奴!」


「ナキを襲ったって……、もしかしてナキを食べようとした巨鳥!?」


 ナキからそう聞いたクルークハイトは、それだけで現れた巨鳥がナキが話していた個体だと悟った。

 そうしている間にも巨鳥がナキ達目掛けて急降下してきた。


「クェーッ!」


「ギャアアアアアこっちに来るーっ!」


「ヴァンダルさんアイツ討伐して!」


「お、おうっ! って、ん? あの鳥、何処かで見たような……」


 慌てるクルークハイトに急かされ長柄槍槌(ルツェルンハンマー)を構えるヴァンダルだったが、迫りくる巨鳥の姿に見覚えがあり、一瞬気が緩んでしまう。

 その時、鉛色のリザードマンが前に踊りでてけたたましい雄叫びを上げた。


「グルォオオオオオオオオオオオオオッ!」


「「うわぁっ!?」」


《ア〜レ〜》


《とばされる〜》


「っ! 戦叫(ウォークライ)か! コレであの鳥も少しは大人しく……」


「クェーッ! クェーッ!」


「……なってんのか?」


 鉛色のリザードマンの戦叫を浴びた巨鳥は急停止したものの、ナキ達の眼の前でホバリングしその場に留まっていた。

 しかもどういう訳か巨鳥の鳴き声は何処か悲しげで、哀愁漂う雰囲気を醸し出していたため、ヴァンダルはかなり困惑していた。


「一先ず大人しくなったと仮定して、確認するがあの鳥とはどういう関係なんだ?」


「お、俺、一年(ひととせ)前にアイツに捕まって喰われそうになったんだ」


「俺もナキから話を聞いてて、あの巨鳥は人食い鳥なんです!

 その証拠にナキを追いかけてここまで飛んできたんですよ!」


 ナキは巨鳥を目の当たりにして籠の中で腰を抜かしており、事情を知っているクルークハイトはフリーズ(氷結)の魔法陣が刻まれた石(つぶて)を手にいつでも投げれるよう身構えている。

 そんな二人を見て嘘は言っていないと感じたヴァンダルだったが、いかんせん納得がいかなかった。


「そうは言うけどなぁ……」


「クェーッ! クェーッ!」


「グルォグルォグルォグルォグルォグルォッ!」


「クェ〜」


「どっからどう見ても悪さをして説教食らって泣いてる子供にしか見えん。

 本当にコイツは人食い鳥なのか?」


 先程から鉛色のリザードマンに睨まれている巨鳥の様子から、ナキとクルークハイトが言う危険性を感じられずにいたのだ。

 そんなヴァンダルの疑問に答えたのは、意外にも下位精霊達だった。


《そりゃあそうだよ。だってヒトクイドリじゃないもん》


「人食い鳥じゃない? マジ?!」


「えっ! 人食い鳥じゃないの??」


《ホントだよ〜》


《ホントホント〜》


《ホンモノだったらとっくにその場でナキをたべちゃってるもん》


 気楽な雰囲気でそう証言する下位精霊達に、ナキは驚きの表情を隠せなかった。

 ナキの発言経由で下位精霊達の会話内容をだいたい把握していたクルークハイトは、ある疑問が浮かんだ。


「ちょ、ちょっと待って!

 本当に人食い鳥じゃないなら、あの巨鳥って結局なんなの!?」


「はっ! 確かにそうだ!

 人食い鳥じゃないならアイツの正体は何なんだ?!」


 クルークハイトに言われて気付いたナキは、籠の網目を掴んでなんとか立ち上がり周囲にいる下位精霊達に巨鳥の正体について問い質す。

 そして下位精霊達は巨鳥の正体を告げた。


《何って、『シンジュウ』だよ?》


「……シンジュウ?」


「シンジュウって、何?」


 シンジュウという聞き慣れない言葉が出てきたため、ナキとクルークハイトは理解できず呆気にとられたが、話しを聞いていたヴァンダルがハッとした様子で何かを思い出し、巨鳥を指さしながらその正体を告げた。


「全体的に薄い淡藤色ベースの羽毛にに雷光思わせる青紫の次列風切羽、左右から生えた雷型の冠羽……、思い出した!

 コイツはサンダーバードじゃねぇか!」


 巨鳥の正体を告げたヴァンダルは、酷く驚いていた。

 クルークハイトは状況がうまく飲み込めていないが、その様子から只事ではない事だけは理解した。

 一方で聞き覚えのある名前を聞いたナキは、ヴァンダルに確認の為話しかけた。


「サンダーバードって、雷を操るっていう鳥のマモノの事?」


「馬鹿野郎! コイツは魔物じゃなくて『神獣』、神なる獣だ!」


「「かみなるけものぉ?」」


 神なる獣という言葉に聞き覚えがなく、ナキとクルークハイトは困惑する事しかできない。

 そんな疑問に対して下位精霊達が口々に話しだした。


《生まれながらのカミサマのつかいだよ〜》


《ちじょうでオラクルをじゆうじざいにあやつれるすごいイキモノなの〜》


《カミサマのつかいじゃないこともあるけど、それでもシンジュウなの》


「えーっと、つまり神様って事?」


 あまりにも急展開すぎて、ナキは下位精霊達の言っている内容がいまいち理解できなかった。

 下位精霊達が言っている内容を修正する形で、ヴァンダルが補足を付け加え説明する。


「神獣っていうのはその名の通り神なる獣、神の力を持つ鳥獣類の事だ。

 神そのものが力を与えて生み出すか神力(オラクル)と呼ばれる神の力を何かしらの方法で取り込む形で誕生する。

 神力を自分の意志で操る事ができる事から坊主が言ったように神そのものと言っても過言じゃない。

 そしてこの巨鳥は『神雷鳥サンダーバード』と呼ばれる神獣の子供だ」


「クェーッ!」


「グワゥッ!」


 ヴァンダルに総説明された神雷鳥サンダーバードは、誇らしげに鳴くが、鉛色のリザードマンに一鶏され大人しくなった。

 自分を襲った巨鳥の正体が神獣だと聞かされたナキとクルークハイトだったが、一番重要なのはその辺りではなかった。


「待って! 今子供って言った? この大きさで子供って言った!?」


「どう見ても3(メートル)は優に超えてるよ!?」


 そう、ナキとクルークハイトが一番驚いたのは目の前にサンダーバードがまだ子供だという点だった。

 クルークハイトが言ったように、サンダーバードの大きさは3mを超えているにも関わらず大人ではないと言われれば誰だって驚く事だ。


 この大きさでまだ子供という事は、今より大きくなる可能性が残っているという事でもある。

 逆に言えば、追いかけてきたのだまだ子供だった事はある意味救いだったとも言えるが、追いかけられたナキからすれば十分すぎるほど恐怖の対象でしかなかった。


「でも、いくら神獣だったとしても肉食もいる訳だろう?

 俺を追いかけて来たのはやっぱり食べるためだったんじゃ……」


「クェーッ?! クェ、クェエーッ!」


《ナキ、あのコお肉たべないって言ってるよ?

 むしろクダモノしか食べないよだって》


「肉食じゃないのか!? ……ウソじゃないよな?」


「クェエ、クェエ!」


 ナキの右手の治療を終えたカノンが、サンダーバードの言葉を通訳してくれたおかげで会話がスムーズに進めるようになり、ナキはサンダーバードに確認を取る。

 サンダーバードはリザードマンに威嚇されながらも、首を縦に振ってナキの質問に対し肯定の意思を見せた。


「……どうやらウソじゃないらしい」


「肉食じゃないならナキを追いかけて来た理由側ならないぞ??」


 仮に肉食ではないのが本当だとしても、クルークハイトはサンダーバードが何故ナキを追いかけて来たのかがわからなかった。

 その疑問に対して答えたのも、また下位精霊達だった。


《ナキをおっかけてきたのは、ナキのマナがここち良かったからだよ〜》


《ナキのマナがここち良くて、ナキのことを気にいったんだって》


《リザードマンにおこられてた時にそういってたよ》


「俺のマナが心地良かったから?」


「あ、もしかしてルオさんや精霊達と似たような感じかな?」


 ナキの魔力が心地良くて追いかけてきたという下位精霊達の発言に理解が追いつかないナキだったが、クルークハイトには心当たりがあったらしい。


「クルークハイト、何かわかったのか?」


「ルオさんが愛し子って呼ばれる理由なんだけど、ルオさんが保有する魔力が精霊達好みの質だからなんだ。

 わかりやすい例えかはわからないけど、ナキは無花果(フィグ)が好物だって言ってただろう?

 立ち位置で言うなら精霊達にとってルオさんの魔力はナキで言う無花果みたいなものなんだよ」


「つまり俺のマナはサンダーバード好みの質って事になるのか?

 でもそれだと下位セイレイ達が俺の周りに集まってるのはなんでだ?」


「精霊達も言っていたが、坊主の魔力は特別性なんだろう。

 坊主自信荒れていたのもあるし俺も指摘されるまで気付かんかったが、かなり神秘的で品質が良い、まるで“月”のようだ。

 コレだけ質が良いなら精霊だけじゃなく神獣も心地よく感じるのも納得だ」


 クルークハイトから魔力の質について説明され、自身の魔力がまるで月のように品質がよいうというヴァンダルの証言を聞いたナキは、自分をこちら側(この世界)に召喚した至高神(しこうしん)が月を司っている事を思い出し、加えて月を見ると落ち着く性格と容姿が変化すると同時に胸部に現れた月の模様と何か関係あるのかと考えた。


(全部月でつながってる、一年(ひととせ)前に月の至高神に呼び出された事と関係あるのかな?)


「ナキの魔力が特別だって事はわかったけど、なんで一年(ひととせ)前にナキを捕まえようとしたんだ?」


「ってそうだ! すっかり忘れてた!

 お前、なんで俺の事追いかけ回したんだよ!? めちゃくちゃ怖かったんだぞ!」


「クェ? クェクェ、クェエー。クェクェクェクェエー」


「グルルルゥ、グルォウ!」


「クェエ〜」


 クルークハイトが呟いたその一言で我に返ったナキは、籠の中からサンダーバードを問い質す。

 ナキに責められたサンダーバードはきょとんとした様子で話をしていたが、話を聞いていた鉛色のリザードマンが怒ったようにサンダーバードに怒鳴り声を上げ、サンダーバード自身も一気に落ち込んだ。


「……どうしよう、なんて言ってるかわからない」


「カノン、皆悪いんだけど通訳頼む」


《わかった〜。まずさいしょにサンダーバードがいったのは

「なんで? だってボロボロの状態で大海の森を歩き回ってたんだもん。

 魔力も心地良かったからお家に連れて帰って一緒に暮らそうと思ったんだよ〜」》


《それをきいたリザードマンの言い分が

「そんな状態で連れ帰ろうとすれば怯えるに決まっておるだろう、この馬鹿者が!」》


《しかられたサンダーバード「そんな〜」……だって》


 カノン達下位精霊の翻訳、そしてその内容をヴァンダル経由で聞いたナキとクルークハイトは理解できないという様子でお互いの顔を見合わせ、もう一度サンダーバードの方を向き確認する。


「じゃあ、このサンダーバードは最初から捕まえようとしたんじゃなくて……」


「坊主を自分の住処に連れ帰って世話しようとしたって事だな」


「つまりナキを保護しようとしたって事ぉ!?」


「んな事出会い頭にわかるか!

 ディオール王国から追放されて一ノ月近く大海の森をさまよって極限状態で追いかけ回されたら誰だって逃げるわ!

 ってかその時セイレイも認識できてねぇから俺を食うために追いかけて来たとしか思えねぇだろう!」


 サンダーバードが追いかけて来た理由が、当時のナキを保護しようとしただけだと知ったクルークハイトは想定外すぎる答えに酷く困惑した。

 ナキに至っては当時の状況が状況なだけに、サンダーバードの行動に文句しか出なかった。

 そんなナキを哀れに思ったのか、鉛色のリザードマンが警戒態勢を解いてナキの元まで移動し、片膝をついてナキの頭を優しく撫でた。


「グルォウオウ、グルゥ」


「もしかして、慰めてくれてるのか? ……ありがとう」


「とりあえず、サンダーバードがここにいる理由はわかった。

 次はお前の番だぞ、坊主」


「え?」


「次はナキの番って、どういう事ですか?」


 サンダーバードの件がやっと落ち着いた所で、ヴァンダルは真剣な表情でナキの方を見た。

 ナキとクルークハイトはヴァンダルの問いの意味がわからず困惑するが、ヴァンダルの傍らに控えていたシェイシェイが問いかけた。


《ナキとディオール王国との関係だよ。

 僕達が狩りに出てた時に、風の下位精霊達がディオール王国が攻めて来たって伝えに来てくれたんだ。

 言ってなんだけど、下位精霊達はちょっとオツムがアレだからね。

  村に戻って詳しい状況を確認したら、村に迫ってる連中がディオール王国の騎士だってナキが真っ先に断言するもんだから、僕もヴァンダルも不自然に思ってね》


「オマケに坊主の同郷の子らもいると来たもんだ、それにさっきの話からしてディオール王国と何かしらの関係があるとしか思えんからな。

 ……一体何を隠してるんだ?」


 ヴァンダルとシェイシェイに指摘されたナキは、思わずたじろぎクルークハイトの方を見やる。

 クルークハイトは元々話すの予定だった事もあり、ナキが出自を話すチャンスと言わんばかりに頷いてナキの背中を押す。

 そんなクルークハイトの反応を見たナキは、意を決して自身の出自を伝えた。


「実は、今から一年(ひととせ)前の事になるんだけど……」


 そこからナキは双子の弟(すぐる)に巻き込まれる形でディオール王国に召喚されこの世界(今の世界)に来た事、無実の罪で理不尽に追放され一ノ月近く大海の森を彷徨いスターリットに保護された事、そしてそのスターリットを飛び出しディオール王国に復讐しようとした経緯を事細かく話した。

 途中でいくつか質問を挟みながら話を聞いていたヴァンダルは、天を仰いだ。


「なんてこった、どれもこれも簡単に片付く案件じゃあねぇぞ」


《むしろここにとどまってくれて本当に良かったよ、最悪の場合ディオール王国の国民がご愁傷さまな展開になってたもん》


「グルルルゥ……」


「それに関しては本当に悪かったって、帰れないってわかった時は本当にこれまでの事が全部にムダなったって思うとどうしても許せなかったんだよ……」


「まぁ問答無用で古代魔法をぶっ放そうとしてたくらいだったからね……」


「どっちにしても、坊主がこの魔導書を持ってた理由も納得だ」


 そう言うとヴァンダルはどこからともなく一冊の本を取り出し、ナキとクルークハイトの二人に見せた。

 二人はその本に見覚えがあり、特にナキは一番身に覚えがあった。


「あっ! それ俺が持ち出した古代魔法の魔導書!

 おっさんが持ってたのかよ!?」


「当たり前だ! 知らなかったとはいえこんな危険なもん持ち出すとは何考えてんだ!

 お前さんの魔力量が一般より多かったから助かったものの、最悪の場合全魔力を魔導書に吸収されて命を落としてたかもしれないんだぞ!?」


「え゙っ! そんなにヤベェ魔導書なのかよ?!」


「魔導書の取り扱いってそんなに危ないんですか?!」


「当たり前だ、生まれ持った魔力量ってのは決まってるし、増やせなくはないがそう簡単な事じゃねぇ。

 実力に見合わねぇ魔導書を使おうものならポックリ逝っちまってるぞ」


「なんてもの持ち出しちゃったんだよナキ」


 自分が持ち出した魔導書が予想以上に危険な代物だった事にナキは動揺し、さすがのクルークハイトも呆れて言葉も出ないようだ。

 ヴァンダルも古代魔法が記された魔導書を持ち出す輩がいるとは思っていなかったため、頭を抱えるしかない。

 微妙な雰囲気が漂う中、話の内容を変えたのはシェイシェイだった。


《魔導書の事は一旦置いておくとして、問題はディオール王国の召喚の件だね》


「あぁ、坊主の話は間違いなく本当だろう。

 コレはコレでこの魔導書がここにあるくらい問題案件だ、急いで村に戻って情報交換する必要がありそうだ」


「村? 村に戻って大丈夫なの?」


「あぁ、狩りの最中にオフィーリアへ使いに出したルオとレーヴォチカが騎士団を連れて戻ってきてくれてたな、今回の話を聞いて防衛に回ってくれてる。

 今頃避難していた村人達も戻ってきてる筈だ」


「ルオさん達戻って来たのか!? 俺的にまずいんだけど……」


 オフィーリア帝国に出かけていたルオとレーヴォチカがオフィーリア騎士団と共に戻ってきたと聞いたナキは、自分が間者(スパイ)だと疑われているのではないかと不安がよぎった。

 そんな心配を他所にヴァンダルはある事を伝えた。


「安心しろ、坊主が心配してるような展開にはなってねぇ。

 異世界召喚の件はそうやすやすと公表できる内容じゃねぇから、坊主の事は『偶然発生したポータルに好奇心から勝手に入ってそのまま行方不明になった子供』って内容で捜索願が出されてたようだ」


「俺そんな子供っぽくねぇよ! でもちょっと安心したかも……」


《とりあえず、ナキ達には先に戻ってもらってミスリルゴーレムを討伐した事を伝えてもらったらどうかな?

 これ異常なにか起きても嫌だし……》


「そうだな、丁度良い足もある事だしな」


「クェエ?」


 一先ずミスリルゴーレムを討伐した事を村の住人達に報告するため、ヴァンダルはサンダーバードの方を見ながらそう答えた。

 名指しされたサンダーバードの方は首を傾げながら、不思議そうにヴァンダルの方を見た。

 そしてヴァンダルはナキとクルークハイトに向かってこう言い放った。


「坊主、クルーク、お前らはサンダーバードに乗って先に村に戻れ。

 そんでもってミスリルゴーレムが討伐された事を報告してこい」


「えぇっ! 俺達がサンダーバードに乗るの!?」


「そんな事して大丈夫かよ!?」


 サンダーバードに乗って村へ戻るように言われたナキとクルークハイトは、信じられないと言った様子だった。

 ノルンのように従魔契約している訳ではないため、載せてくれるとは思えなかったからだ。

 だがヴァンダルには確固たる確信があった。


「このサンダーバードは坊主を追いかけてここまで来たんだ、だったら坊主の頼みは間違いなく聞いてくれるだろう。

 それにこれだけの大きさなら子供二人が乗っても問題はなく飛べる筈だ」


「そんな当たり前のように言われても……」


「一応、お願いしてみたら?」


「まぁ、うん。 あー、悪いんだけど俺とクルークハイトを乗せて飛んでくれないか?」


 本当に大丈夫なのかと思いながら、ナキは恐る恐るサンダーバードに頼む。

 ナキの内心を知らないサンダーバードは、翼を広げながら一声鳴いた。


「クェーッ!」


《「良いよーっ!」 だって》


「本当に良いんだ!?」


「色々凄い事になってきてるな〜」


 簡単にサンダーバードから了承を得られたため、ナキは酷く驚き、クルークハイトは最早上の空状態だ。

 サンダーバードはナキとクルークハイトの眼の前まで移動すると、体を低くかがめて乗りやすい体制になる。


「クェクェ」


《「どうぞ」って言ってるよ》


「じゃあ早速、って言いたいところだけどどうやって乗ろう?」


「精霊達に運んでもらおう。

 皆、俺とクルークハイトをサンダーバードの背中に乗せてくれ」


《 《 《はーい》 》 》


 ナキから指示を出された下位精霊達は、ナキとクルークハイトの体を持ち上げてそのままサンダーバードの背中まで運ぶ。

 自分の背中に二人が乗った事を確認したサンダーバードは、そのまま立ち上がり飛翔体制入った。


「そういえばヴァンダルさんとそのリザードマンはどうするんですか?!」


「俺はこの現場を保存してから戻る、このまま放置しておく訳には行かねぇからな。

 コイツはその時に連れ帰るから安心しろ。

 さっきも言ったが、お前らは早く村に戻れ、そんでもってアネーロ達を安心させてやれ」


「そうだ、すっかり忘れてた!

 あのあとすぐ別れたから、ノルンをローロに預けっぱなしだ!」


「またノルンに拗ねられちゃうな、ナキは」


「そういう事言うなよ! ってそれどころじゃなかった!

 場所はカノン達が教えてくれるから、それに従って飛んでくれ!」


「クェーッ!」 


 ナキから指示を受けたサンダーバードは、翼を大きく広げはためかせ、助走なしで空中に飛翔した。


「すっ凄い! 本当に飛んでる!」


「めちゃくちゃ高い! 良し、このまま村まで戻るぞ!」


《みんな行くよーっ》


《このままついてきてね》


「クェーッ!」


 サンダーバードが空高く羽ばたき、その迫力に一種の興奮を覚えながらもナキとクルークハイトは、自分達の無事を伝えるため、そのまま村へと向かった。

 ご覧いただきありがとうございます。

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