第42話 想定外にもほどがある
ブックマークありがとうございます。
ミスリルゴーレムが左腕の拘束を解いてしまい、その腕に炎の魔力が発生していたのだ。
そしてその左腕を、よりにもよってナキがいる方向に目掛けて振るう。
強力な魔力から発生した炎がナキがいる方向にめがけて燃え上がる。
「(マズい、アレは下位精霊達だけじゃ防ぎきれねぇ!)
逃げろ坊主!」
「みんな下へ!」
《《《ハーイ!》》》
最初水の下位精霊達の力を借りて迫りくる炎を防ごうと考えたナキだったが、ヴァンダルから逃げるように指示を出された事から咄嗟に下の方へ逃げるよう風の下位精霊達に指示を出し、炎を回避する。
その直後、ナキは慌てて自分に迫っていた炎の行先を確認する。
炎はそのままはるか後方そびえる山の一つにまで届いたのだが、それからが衝撃だった。
「なっ⁉ 山の頂上付近が消し飛んでる⁈」
《うわー何アレ〜》
《お山のあたまはどこいったんだろう?》
ミスリルゴーレムの炎に見舞われた山の頂上部分は木々が焼かれて剥げたのではなく、頂上そのものが無くなっていたのだ。
下位精霊達はその様子を面白がっていたが、ナキはそれどころではなかった。
(おっさんの指示に従って良かった。
さっきの炎を水の下位セイレイ達で防いだとしてもブジじゃいられねぇ!)
下位精霊達の力を過信し、ヴァンダルの指示を無視していれば確実に死んでいたのは間違いないと感んじたナキは、顔を青ざめながら身震いを起こす。
それと同時にブラッディー・ベアと一つ階級が違うだけで、ココまで力の差があるのかと絶望した。
《あのミスリルゴーレム、マホウが使えるタイプだったみたいだね》
《マナはどこでたくわえて来たのかな?》
《ディオール王国のソーサラーやキシたちじゃない?》
《でもアイツラ、そんなにマナ強くなかったよ?》
「きっと原のマナだ、原からマナをたくわえたんだ。
アイツも優同様に月の至高神からカゴを受けてるから、普通のマナよりいりょくがあるんだ!」
先程のミスリルゴーレムが放った炎の魔力が、静の魔力ではないかとナキは考えた。
聞こえてくる声でしか確認していないが、ディオール王国の遠征部隊は和樹が呼び出したミスリルゴーレムのせいでかなり混乱していた。
その時に静が炎魔法で攻撃したのか、もしくは奪われたのかわからないがミスリルゴーレムは静で炎の魔力を蓄えたのは間違いないと思った。
ナキ達がその事で意識がそれている隙に、さらなる追い打ちがかかる。
「何やってんだ坊主避けろぉ!」
「今度はなんだ⁉ うわぁっ⁉」
慌てるヴァンダルの声が聞こえてきたため慌てて振り向くが、直後に激しい衝撃がナキを襲う。
それと同時に身動きが取れない事に気付き確認すると、胴体をミスリルゴーレムの手に掴まれている事に気付いた。
「これはっミスリルゴーレムの手⁉」
《たいへん! ナキがつかまっちゃった!》
《いそいでナキからひっぺがすよ!
みんな手伝ってーっ!》
花の下位精霊であるカノンが周りの下位精霊達に指示を出し、ミスリルゴーレムの手からナキを助けるために引き剥がそうとする。
だがミスリルゴーレムの手はガッチリと固定されており、指一本すら動かせない。
《うーん、うーん! ダメ、ぜんぜん動かない。
どうしよう⁉》
「ちょっと待てよ、コレ、さっきおっさんが砕き落としたミスリルゴーレムの右うでだ!」
《《《なっなんだってーっ⁈》》》
自分を掴むミスリルゴーレムの手が、ヴァンダルが精霊銀の長柄槍槌で砕き落とし、樹の中位精霊であるシェイシェイに離れた所へ運ばせた筈の右腕である事に驚愕した。
「どういう事だシェイシェイ⁉」
《そんなの僕が聞きたいよ⁉
ちゃんと遠くまで運んで根っこでぐるぐる巻きにしたのに!》
(シェイシェイでもこれは想定外なのか⁉)
ヴァンダルとシェイシェイの様子から、右腕の出現は完全に想定外の事だと理解したが、問題はシェイシェイが遠くまで運んだ筈の右腕が何故この場にあるのかという事だ。
先程もシェイシェイはミスリルゴーレムの右腕を遠くまで運んだあとに根でぐるぐる巻きにしたと行っていた。
その様子からシェイシェイのエレメンタルで念入りに固定したのは間違いないだろうが、現に右腕はココにあってナキを捕らえていた。
(腕のカンセツ部分の形も最初にくだけ落ちた時と一緒、間ちがいなくあのミスリルゴーレムの右うでだ。
シェイシェイの拘束は、さっきみたいに炎のマナで燃やして抜け出したんだとすればふに落ちるけどこのうで自体はどうやってココに戻ってきたんだ⁉)
《うわっ! うでが動きだしたよ⁉》
《右うでから風のマナがあふれでてる!》
《このうで、風のマナでいどうしてるよ⁉》
右腕がどうやって戻ってきたのか考えていると、突然動きだしたため下位精霊達は騒ぎ立てた。
その証言の中に重要なワードがあったため、右腕が戻ってきた謎が解明されたまでは良かったがここでさらなる問題が発生する。
《ちょっと待ってコレはマズい!
このうでナキごと本体の方に向かっていってるよ⁉》
《《《なっなにぃーっ⁉》》》
「それは本当にヤバい!
樹と花はツタやツル、根っこでも構わないから右うでを固定!
氷、地は目の前にぶあついカベを作って少しでも進行速度をおくらせるんだ!」
「シェイシェイ、拘束を今以上に強めろ!
コイツ、坊主の魔力で回復だけじゃなく自身を強化する気だ!」
自分がミスリルゴーレム本体のもとに運ばれていると知ったナキは慌てて下位精霊達に指示を飛ばして右腕の進行を遅らせようと試みる。
そしてそれを見ていたヴァンダルはミスリルゴーレムの狙いに気付き焦りだした。
《僕一人じゃこれ以上拘束を強めるのは無理だよ!
下位の同胞達、何体かコッチに来て手伝っておくれ!》
《でもそんな事したらナキがあぶないよ〜》
《うでのしんこうそくどが上がっちゃうよ〜》
「みんな、シェイシェイの指示に従うんだ!
樹は十数人本体の方へ、指示を出さなかった下位セイレイは全員でうでの進行を止めてくれ!」
《《《りょうかーいっ!》》》
このまま下位精霊達だけで進行を食い止めていても状況が変わらないと判断したナキは、すぐに下位精霊達に指示を飛ばす。
指示を飛ばされた下位精霊達はすぐに行動し、樹の下位精霊達はシェイシェイに協力してミスリルゴーレムの拘束を強める。
《良し、下位の同胞達のお陰で拘束を強められた!
ヴァンダル、今のうちに核を破壊しよう!》
「おうっ!」
《シェイシェイ様たいへん!
コアの周りが氷でおおわれてる!》
《なんだって⁉》
拘束を強めミスリルゴーレムの核を完全に破壊しようとした矢先、一体の樹の下位精霊から衝撃の報告を受けたヴァンダルとシェイシェイは急いで核がある胸部部分を確認する。
報告にあった通り、ミスリルゴーレムの核が氷で覆われており、破壊目的で巻き付かせた蔓も活動を停止していた。
「やられた、俺達が動揺してる間に氷で処置したのか!
シェイシェイ、俺達だけで砕けると思うか⁉」
《流石の僕でもコレは無理だよ。
この状態じゃあ氷を溶かしてからじゃないとダメージを与えられない!》
「坊主! 炎の下位精霊を何体かコッチに寄越してくれ!」
「マジかよ⁈ 炎は何人か向かってくれねぇか⁉」
核を覆う氷を溶かす必要があるという事で炎の下位精霊を援軍として送ってくれとヴァンダルに頼まれたナキは慌てて炎の下位精霊達に頼むが、帰ってきた返答に頭を抱える羽目になった。
《ムリーッ!》
《いま人数がへったらうで止められなくなっちゃうよ!》
《一人でもへったらそくアウト!》
「最悪の展開だーっ!」
これ以上人数を減らす事はできないという炎の下位精霊達の返答に、ナキは絶望の声を上げる。
自分とは相性が悪く、魔法で反撃できないナキはなんとか炎の下位精霊達をヴァンダルの元へ向かわせる事ができないかと考えていると、そこで自体が一変する。
「《《《うわーっ⁉》》》」
《右腕が大きく回転したよ⁈》
「マズいぞ、今ので進行を食い止めていた下位精霊達が離れちまった!」
突然ナキを捕らえた右腕が大きく回転し、進行を食い止めていたカノン達が振り払われてしまった。
それにより邪魔者がいなくなった右腕はそのまま本体へと真っすぐ進み始めた。
「うわぁっ! ヤバい、この、放せよ!」
「このままじゃマズい。シェイシェイ!
関節部分を蔦で覆ってくっつかねぇようにすっから、その補助を頼む!」
《よ、良しわかった!》
せめて右腕と本体が合体する事だけでも阻止しようとヴァンダルは長柄槍槌の槌頭部部を関節周囲に叩きつけて根を生やし覆うとするが、ミスリルゴーレムは体から炎の魔力を放出して根を燃やしてしまう。
《ダメだよ、炎で根を焼かれちゃって覆えない!》
「右腕がすぐそこまで迫ってる! 坊主!!」
直ぐ側まで右腕が近づいてきていることに気付いたヴァンダルは、一か八か右腕の指部分を攻撃し砕けないか試みるが微動だにしなかった。
そうしてそのまま右腕と本体の距離がすぐそこまで近づいていた。
(指部分が壊れない、関節同士がくっつきそうになってる!
もうダメだ……っ!)
もうダメだとナキが諦めかけたその時、突然視界が激しく揺れ、強い衝撃を感じた。
何が起きたのかと混乱したが、顔を上げるとミスリルゴーレムとの距離が開いている事に衝撃を受けた。
「ミスリルゴーレムから離れてる! なんで⁈」
《ナキ! あそこ見て!》
《リザードマンだーっ!》
カノン達が示す場所に視線を向けると、そこには以前ブラッディ・ベアにとどめを刺しナキとクルークハイトを大人達の元に送り届けてくれた鉛色のリザードマンがミスリルゴーレムと対峙していた。
しかもどういう訳かクルークハイトを肩に乗せた状態でだ。
「(アレは、この前俺とクルークハイトを助けてくれたリザードマン! どうしてココに⁈)
ってかそれ以前になんでクルークハイトがいるんだ⁈
しかもリザードマンの肩に乗ってるし⁉」
「ヴァンダルさん! このリザードマンには攻撃しないで!
前に俺とナキを助けてくれたリザードマンなんだ!」
「馬鹿野郎そんな事する訳ねぇだろう⁈
それ以前にコイツも災害級、しかも古代種じゃねぇか⁉
危ねぇから早くこっちに来いクルーク!」
「ちょっと気になるワードが出てきたけど、やっぱりサイガイ級だったん……」
ヴァンダルの口からはっきりと災害級という言葉が出てきたため、ナキが思っていた通り鉛色のリザードマンは災害級の魔物だったようだ。
一方で鉛色のリザードマンが災害級である事をひと目見て気付いたヴァンダルは、焦った様子で自分のもとに呼び寄せる。
「クルークなんでこんな危険な所に来たんだ⁉
それ以前に、あの災害級の魔物どうやって連れて着たんだ⁉」
「村に戻って避難場所に向かう途中で遭遇したんだ、前に助けてもらったからナキがピンチだって話して一緒に来てくれたんだ!」
「話通じたのか⁉ なんだその奇跡すぎる状況は⁉」
クルークハイトから詳しい事情を聞いたヴァンダルは信じられない展開に頭を混乱している間に、クルークハイトはナキのもとに駆け寄り、安否確認を行った。
「ナキ、大丈夫か⁈」
「あんまり大丈夫じゃねぇ、ミスリルゴーレムの腕に掴まれて動けないんだ」
「ヴァンダルさん、これ壊せないの?」
「シェイシェイの力だけじゃあ壊れなかったが、炎の下位精霊達の力を借りればぎりぎり壊せる筈だ。
炎の下位精霊達よ、力を貸してくれ」
《《《ハーイ!》》》
ヴァンダルに請われた炎の下位精霊達はないを助けるため、長柄槌槍に自分達のエレメンタルを流し込み始める。
その影響か長柄槌槍に赤みも加わり、金属の葉部分が炎のような形に変化した。
「クルーク、下がってろ!
坊主、ちぃとばかし揺れるが我慢できるな?」
「大丈夫、今までのこと考えれば問題なく耐えられる」
ナキに確認を取ると、ミスリルゴーレムの右腕が動き出さない内にヴァンダルは指部分を攻撃し始めた。
その間にも状況は進んでおり、鉛色のリザードマンがミスリルゴーレムに攻撃を仕掛けていた。
「GAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAッ!」
「グルォグルォグルォグルォグルォグルォグルォッ!」
「なんか、結構独特な鳴き声だな……」
「多分いかく、してるんだと思う。
きっと同じサイガイ級だからケイカイしてるんだ」
《ちがうよ、ナキに手を出されておこってるの》
《うちの子をマナホキュウに使おうとはなにごとだ!
っておこってるよ》
「リザードマンの子になった記憶はないんだが⁉」
カノン達から聞いた会話内容に困惑しながらも、ナキ達は戦いの様子を見る。
最初に動いたのは鉛色のリザードマンだ。
鉛色リザードマンは一気にミスリルゴーレムの懐まで接近し、勢いのままにミスリルゴーレムの頭部に強烈な蹴りを一撃食らわせる。
鉛色のリザードマンの蹴りを食らったミスリルゴーレムの頭部は、一気に顔半分が砕けてしまった。
その様子を目の当たりにしたナキとクルークハイトは驚きの声を上げる。
「ミスリルゴーレムの頭が半分砕けた⁉」
「ウソだろう? おっさんでも腕を砕き落とすのにシェイシェイの力借りて二回叩く必要があったのに⁉」
「当たり前だ、さっきも言ったがあのリザードマンは災害級。
俺なんかよりも遥かに強ぇ」
《おまけに古代種、歴戦の猛者である事に変わりないよ》
そう言いながらナキを捕らえているミスリルゴーレムの右腕の指部分を砕くヴァンダルとシェイシェイは、警戒の意識を鉛色のリザードマンに向ける。
災害級の魔物二体がいるという異質な空間で、しかも何故鉛色のリザードマンが自分達に味方するのか理由もわからないため危険がないとは限らないのだ。
その間にもミスリルゴーレムと鉛色のリザードマンの戦いは続く。
頭部を半壊されたミスリルゴーレムは、左腕で鉛色のリザードマンを捕まえようとするが、鉛色のリザードマンは跳躍して素早くさける。
そのままミスリルゴーレムの背後に回り込み、回し蹴りの応用で自身の尻尾の先端についている錘部分を叩きつけ、背中全体に巨大なヒビを入れた。
《リザードマンのキョウレツなイチゲキがせなかにメイチュウ!》
《せなかぜんたいに大きなヒビが入ったよ〜!》
《そのせいでミスリルゴーレムのバランスが悪くなってるっぽい》
《かんぱつ入れずにリザードマンのコウゲキがサクレツしてるーっ》
ミスリルゴーレムと鉛色のリザードマンの戦いを見ていた下位精霊達は、鉛色のリザードマンの圧倒的な強さに興奮し逐一実況している。
そのおかげでヴァンダルは警戒しながらもなきの救出作業を進める事ができた。
「良し、これで薬指も取れた!」
「ダメだ、まだ足が自由に動かせない……」
《ヴァンダル、あっちもそろそろ決着が着きそうだ。
あのリザードマンに核の場所を伝えてこようか?》
「いや、あの古代種が把握していないとは思えない、念の為ここに残ってくれ。
追い詰められたミスリルゴーレムの方が何をしてくるかわかないかな」
ヴァンダルは追い詰められたミスリルゴレームの行動の方を警戒していた。
一度核を破壊目前まで追い詰めた結果、ナキが魔力補給のために捕らわれるという想定外の事が発生したため、再び追い詰められたミスリルゴーレムがまた仕掛けてくるのではないかと危惧していたのだ。
その間にも鉛色のリザードマンがミスリルゴーレムを攻める。
爬虫類独特の身軽な動きを駆使して素早く移動し、ミスリルゴーレムの隙をついて頑丈な篭手を身に着けた腕で強烈な突きを繰り出し、ミスリルゴーレムの体全体にヒビを入れていく。
対してミスリルゴーレムはナキの策略で下半身が沼に沈んでおり身動きが制限され、左腕を振り回して攻撃するも一切当たらず鉛色のリザードマンの攻撃を一方的に受けている。
取り込んだ魔力で体を修復しているようだが、追いついていなかった。
「見て、機動力はリザードマンの方が上、ミスリルゴーレムを追い詰めていってる!
このまま行けばリザードマンが勝てるかも!」
「コッチはやっとこさ中指部分を破壊できた!
人差し指を壊せば坊主の体を引っ張り出せる筈だ!」
《リザードマンのレンゾクコウゲキでミスリルゴーレムの動きがにぶくなったよ!》
《リザードマンがトドメを指してミスリルゴーレムをやっつけられる!》
戦況は一気にナキ達側に流れができており、ヴァンダルがナキを捕らえる右腕の人差し指にヒビを入れ、リザードマンがミスリルゴーレムの核に最後の一撃を入れる。
その結果、ミスリルゴーレムの核に大きな亀裂が入り核が真っ二つに割れる直前、再び想定外の事が起こった。
「GA、GA、GAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAッ!」
《 《 《やったーっ! ミスリルゴーレムのコアがこわれた!》 》 》
「GAGAGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!」
「なっ⁉ おわぁ!」
「うわぁっ⁉」
「ヴァンダルさん⁈ ナキィッ!」
ミスリルゴーレムの断末魔が聞こえたかと思いきや、クルークハイトの耳に困惑したような叫びを上げるナキとヴァンダルの声が聞こえてきた。
慌てて二人がいる方向を確認するクルークハイトだったが、そこでナキの名前を呼びながら悲鳴を上げた。
(あれ? なんでクルークハイトとおっさんが俺の下の方にいるんだ??)
ナキの視界には何故か“自分の下にいる”クルークハイトとヴァンダルが青ざめた様子で自分を見ている様子と、鉛色のリザードマンに核を破壊され、静に崩れていくミスリルゴーレムの光景がゆっくりと流れていた。
(一体何が起こった? さっきリザードマンがミスリルゴーレムにとどめをさして、その直後に視界が大きくゆれて……。
あれ、あそこに落ちてるのって、俺を捕まえてたミスリルゴーレムの右腕??)
不意に視界の端に映ったミスリルゴーレムの右腕を見て、ナキは瞬時に理解する。
核を破壊された直後、ミスリルゴーレムが最後の悪あがきで右腕の遠隔操作を行い、ヴァンダルを妨害した。
その拍子に人差し指が取れてしまい、捕らわれていたナキはミスリルゴーレムの右腕の中から抜け落ち、空中に投げ出されてしまったのだ。
そしてたちが悪い事に、投げ出された方向は断崖絶壁の崖で下位精霊達が作ったバリケードの高さを当たり前のように超えていた。
それを見ていたからこそクルークハイトは顔を青くしていたのだ。
やっと自分が置かれている状況を把握したナキだったができる事はなく、そして実際の速度は無き掛かんじている以上に早く、何もできないまま崖の方へと飛んでいく。
「うわぁああああああああああああああっ!」
「ナキーッ! ヴァンダルさんナキを助けて!!」
「シェイシェイ坊主を!」
《ダメだよ、間に合わない!》
《キャーッ⁉》
《ナキーッ!》
クルークハイトは悲鳴を上げながらヴァンダルに助けを乞い、それに答えるようにヴァンダルもシェイシェイに指示を出すが、ナキが飛んでいく速度の方が早くあまりにも突然の事にカノンを含む下位精霊達もすぐに対応できない。
やがてナキの体はバリケードを超えて崖下へと落下していく。
(この落下速度じゃブリーズ・スフィアを発動しても勢いが落ちないしそれ以外のマホウも思いつかいない!
ダメだ、落ちる……!)
ナキが最悪の展開を覚悟した時、ナキの体に強い衝撃と食い込むような僅かな痛みが走った。
何が起きたのかと目を開けると、魔法を発動していないのに自分の体が宙に浮いている事に気付いた。
「……落ちてない、浮いてる! なんで⁈」
「クェーッ!」
今度は何が起きたのかと困惑していると、頭上から何処か聞き覚えのある鳥の鳴き声が聞こえてきたため慌てて振り向くと、視線の先には一年前にナキを付け狙った巨大な鳥の姿があった。
ご覧いただきありがとうございます。
もしよろしければコメント、いいねお気軽にいただけたら幸いです。




