プロローグ
5月6日、投稿開始します。
ここはいくつも存在する世界、《数多世界》の基盤となる世界、《始まりの世界》。
人間と呼ばれる種族は勿論、動物の耳と尻尾を持つ獣人や精霊と親交があるエルフと言った妖精族などの人間ではない種族が当たり前のようにおり、それだけでなく魔法や呪術、特殊能力といった特別な力が当たり前のように存在する世界なのだ。
始まりの世界、ライフ大陸と呼ばれる大陸のとある都市に、一人の少年が暮らしていた。
外から聞こえてくる声を音楽の代わりにし、自室で手にした本を読んでいたのだが、何の前触れもなく一人の少女が少年の部屋に現れた。
「こら~、本読んでる暇があったら新学期の準備しなきゃダメだよぉ」
「いいだろ別に。新学期までまだ一週間もあるんだから二刻くらい前に準備すれば問題ないよ」
「そういって前刻までにほったらかしにして慌てるハメになっちゃうでしょう?
このままだとまた記録更新しちゃうんだから、今のうちに準備するよぉ」
そういうと少女は右手を挙げて指を鳴らす。
すると、先ほどまで寝間着を着ていた少年の姿が外に出抱えるための服装に変わっていた。
「また勝手に着替えさせんなよ。
それに何度も言うけど、ノックもせず扉から入りもせずいきなり入ってくるのやめてくれって言ってんだろう婆ちゃん!」
「文句言うんだったら、ちゃんとしなさいな。ほらほら早く行くよぉナキ」
少年に婆ちゃんと呼ばれた少女は怒る事なく、そのまま少年の部屋を出て行った。
少女の外見は少年とさほど変わらないように見えるが、そうではない。
少女は不老不死と呼ばれる、かなり特殊な存在なのだ。
ナキと呼ばれた少年は軽くため息をつくと、身だしなみを整えるために自室を出て洗面所に向かった。
洗面所に着くと、不意に鏡に映る少年の姿は、光の加減で星空のように見える艶のあるミッドナイトブルーの髪に蒼銀色の瞳。
その類い稀な色彩で見る人によれば一瞬で魅了されてしまうであろう容姿をしていた。
そして胸元の月をイメージした入れ墨のような蒼銀色の痣が映っていた
(この顔も、元いた世界の頃と違ってだいぶ変わったなぁ)
鏡に映る自身の姿を見ながら、ナキは昔の事を思いだしていた。
本来ナキはこの世界にいる筈のない人間で、どちらにしてもナキの元いた世界から今いる世界に来る運命にあった。
(俺が、神座を名乗るようになってから、おれの人生は色々と変わった。
今もかなり大変だけど、子供の頃よりもまだましに思える)
こうして非日常な世界を自らの日常として受け入れながらも、不意にナキは自分がまだ正式に神座ナキと名乗る前の事を思いだす。
これは、ある出来事がきっかけとなり、騒がしく危険な目にあいながらも前を向いて生きて行く事を誓った一人の少年の物語である。