プロローグ
短期集中連載です。
よろしくお願いいたします。
『Ken & Maho Online』、それは剣と魔法の世界で冒険するVRMMORPG。
その運営はKMOの世界を愛していた。
故に、妥協の産物である銃カテゴリ――その1属1種の汚点武器【拳銃】を、既にKMOの世界の一部となったそれを、なかったことにする気はない。
ただ只管に冷遇するだけだ。
【拳銃】は使えない。腕力や知力のステータスに依存しない、固定威力だから。
最大弾数6発、1分に1発自動で弾丸が補充される飛び道具は、ゲームの最序盤なら護身に役立つこともある。
ちょっと進んだ辺りなら牽制に使えなくもない。
もう少し進んだ頃になるとカスダメが限界。
現時点の最前線では人型MOBにも無慈悲に弾かれるのみ。
今や【拳銃】を武器として使う者はいない。その実装を運営に提案した者達ですらだ。
精々、コスプレの小道具として使うか、ユーザイベントの開会時にクラッカーとして鳴らすか。
その状況に疑問を持ち、異を唱える者がいた。
それは1人のDEX極振り無課金生産職プレイヤーだった。
「全ての武器には価値がある。私はそれを証明したい」
「本音は?」
「今更STRやINTに振りたくないし、どうにか固定威力が使い物にならないものか」
そしてあわよくば、今一度【拳銃】がブームを巻き起こし、余った最下級アイアンインゴットで無駄に大量生産した在庫の【拳銃】が捌けないものか――と。




