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君のいない今、君のいる未来  作者: 上杉倫也
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第4話

八月一日

「うーんっ、はっ!」

俺は目を覚ますと同時に飛び起きた。もしかしたら遡行できるというのは嘘なのではないかという気持ちはあったのだがそんな不安は一瞬で消えた。目を覚ました場所は明らかに自分の部屋ではなく、薄暗い倉庫のような場所だったのだ。

「まさか、本当に遡行できたのか?」

俺は驚きでいっぱいだった。正直、遡行はできないと思う気持ちの方が大きかったから。

「そうだ、今はいつだ?」

二〇〇〇年でなければ意味がない、もしそれ以外の時間だったら、姫川さんと親父を救うどころか、俺はもう元の時代には戻れないのだ…

俺は周りを見渡した。だがカレンダーなど、日付がわかりそうなものは見当たらない。

「ここには何もなさそうだな…」

とりあえず、俺はこの倉庫のような場所を出ることにした。

扉を開けると、目の前は少し古い商店街のような場所だった。少し見渡すとお店のバーゲンセールか何かの旗が立っていた。そこには、

二〇〇〇年七月三十一日から八月五日

と書いてあった。どうやら遡行は成功したらしい。

「はぁーっ、良かったー。やったぞ!」

思わず俺はガッツポーズをとった。まだ何も達成したわけでは何が、とりあえず第一関門は突破できた気がした。

商店街の様子は現代ではあり得ないことに一人として歩きスマホをしている人がいなかった。それもそのはずだ。この世界は二〇〇〇年なのだから、まだスマホは存在していないのだ。

「じゃあ俺のスマホは…」

俺はポケットからスマホを取り出した。だが、ボタンを押しても電源が入らない。遡行前は充電しておいたので、充電切れということはないはずだ。どうやらこの世界では現代の道具は基本的には使うことは出来なさそうだ。その時、俺はあることに気がついた。

「もしかしたら、かなりまずいかもしれないな…」

俺は反対側のポケットから財布を取り出した。何があるかわからなかったのでほとんどの貯金を持ってきたのだが…

使えないかもしれない

スマホが使えないということは、二〇〇〇年以降の物は使えない。もしお金も使えないのだとしたらかなり状況は厳しいものになる。

「とりあえず、古いやつから使ってみるか」

悩んでいてもどうしようもなさそうなので、この問題はその時になって考えることにした。

「さて、どうするかだな…」

過去に戻って一番最初にやることは事件の協力以前に、自分を信じてくれる人を見つけることだ。このまま誰にも信じてもらえなければ事件どころか自分の身さえ危ない。

「よし、まずは交番に行ってみるか」

道を歩いている人に交番の場所を訪ねながら、俺は交番に向かった。交番に着く頃には、だいぶ周りは都会らしい景色になっていた。だが、ちょうど交番が見えてきたあたりで、俺は足をとめた。

「なんて言えば信じてくれるんだ?」

僕、未来からきました!などと言って信じてくれるはずがない。ましてや高校生の男子が交番の人にそんなことを言うなど、ただの頭がおかしい人だと思われておしまいだろう。一筋縄ではいかなそうだ。少し考えてから行動した方がいいかもしれない。俺は一旦、交番に行くことを諦めた。

「まずは、泊まれるところだな」

とにかく、落ち着いて考えるためにも休める場所が必要だ。貯金を持ってきたとはいえ、どのお金が使えるかもわたらないので、とても無駄使いはできない。

「ホテルは全部高いからなぁ、どこかないだろうか…」

考えているうちにあたりも暗くなってきた。この世界に来てから何も食べていないので、腹も減ってきた。

「とりあえず、何か食べられる物が必要だな」

俺は近くのコンビニに向かった。二〇年前とはいえ、それなりに品揃えは豊富だった。俺は平成十二年よりも前のお金を使って、サンドイッチとお茶を買った。無駄遣いはできない。サンドイッチを食べながら、泊まれる場所を探した。その時、俺は、ひらめいた。ひとつだけ安く泊まれる場所に心当たりがあった。

「そうだ!マンガ喫茶ってところがある!ホテルよりは安くすむはずだ」

これはなんかのアニメで見たやつだが、確か、かなり安く泊まれていた気がする。そう思いながら俺は近くのマンガ喫茶に向かった。二十年前ということもあり、数こそ多くなかったが、高くても三〇〇〇円ぐらいと、かなり出費を抑える事ができた。マンガ喫茶に来るのは初めてだったので、初めてのマンガ喫茶が二十年前という何か複雑な事態が起きてしまった。

「さてと、明日からどうするかだな」

今日はなんとか乗り越えることは出来たが、いつまでもこうしているわけにはいかない。時間は限られているのだ。少しでも早くかつての父に会わなければならない。その時、俺の中に一つの案が浮かんできた。

「これならいけるかもしれない。いや、俺にはこれしか思いつかない」

結論、今は父に会えればいいのだ。父は警察官だ。嫌でも会うことになる場所が一つだけある。その場所に行けばいいのだ。例え、どんな手段を使ったとしても…

残された時間は残り十三日


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