表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

八島義則

 八月九日


 家族に愛され、友人に愛され、同僚に愛される。丸坂丸壱に限ったことではない。人は皆そうだ。人は人を愛するものなのだ。


 丸壱の通夜は皆涙が絶えなかった。しかし、一人だけ涙を流さない男がいた。


「お前が自殺なんてするわけないよな。犯人は俺がとっ捕まえてやるからな」


 八島義則。丸壱の職場の課長だ。


 丸壱が通夜の帰りに線路に飛び込んで自殺したというのだ。


 信じられるわけが無い。一年半ほど一緒に働いただけだが、俺には分かる。お前は自殺なんて絶対にしない。


 八島は会社に戻ると退職願いを書いた。個人的に捜査をしようと思ったのだ。自殺ということになっているので警察も動かないだろう。


 でもそれじゃお前が浮かばれないよな。何としてでも犯人をみつけてやる。


 退職願いを手にしている八島を見つけた山田と雲丹村が聞いた。


「丸坂先輩、本当に自殺だと思いますか」


 え、こいつらも⋯⋯? やっぱり俺以外にも居たんだな。


「俺は絶対に違うと思っている。今から会社辞めて色々調べるつもりだ」


 二人は唖然としていた。

 そこまでするつもりだったとは。彼らも丸坂には世話になった身だ。力になりたいと申し出た。


「課長、僕たちにも協力させてください! 協力するので、辞めるのだけは辞めてください! この会社にはあなたが必要です!」


「さすがにそこまで言われちゃあなぁ」


 八島は二人の熱意に負け、言う通りにした。


 


 八月十日


 三人体制にはなったものの、何から調べていいのか。んー、とりあえず事件の概要を調べてみよう。


『八月八日午後十時四十四分にY駅で通過列車に撥ねられ死亡。』


 それは知ってる。


『飲み会の帰りで、とても酒に酔っていた。』


 飲み会だって? あいつお通夜に行ったんじゃ⋯⋯。


「課長! 大変です!」


 雲丹村が慌てて走ってきた。手には新聞を持っていた。


「昨日あの駅で丸坂先輩の他に二人亡くなっています。しかも、全員自殺と書いてあります」


 ますますありえない話だ。一日に三人も同じ場所って完全に事件じゃないか。なぜ警察は動かない!


「課長、警察も捜査してるみたいですよ」


ピリリリリリリ


 八島のケータイが鳴った。着信は山田からだった。山田は丸壱の葬儀に出て聞き込みをしていた。


「昨日亡くなった丸坂先輩のご友人が、あの事件の一人目だということが分かりました」


 なに! 先に死んだ死者の霊が呼ぶとは言うが、まさかな⋯⋯。でも同じ場所って。


「それと、二人目は丸坂先輩の中学の同級生だとのことです。つまり、昨日亡くなった三人とも同級生です」


「ありがとう、警察に話してみるよ」


 八島は急いで警察に電話をかけた。


「あの! かくかくしかじかで、三人は同級生なんです!」


「そんなことはとうに分かってますよ。失礼しますね」ガチャ


 良かれと思って報告したのに、邪魔しちゃった。これって素人三人で追いつけるものなのか?


 八島はやる気を無くし始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ