表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

晴れのち雨

 お通夜には千人ほど来ていた。おい佐野、お前は政治家か。

 なんでも佐野は最近流行りのバンドのギタリストで、若者の間では知らない者は居ないんだとか。そういえば中学で軽音部だったなぁ。高校は重音部とか言ってたな。⋯⋯知らない俺は若者じゃないのかな。


 その千人の中に同級生も数人来ており、通夜が終わったあと飲みに行くことになった。プチ同窓会が現実になったわけだ。不謹慎極まりないが、せっかくの機会なので俺も行くよ。


 久しぶりのみんなは、全然久しぶりじゃなかった。八年ぶりのはずなのに、さっきまでクラスで話していたように感じた。みんなそれぞれの人生を歩んでて、パイロットになったやつもいたけど、みんなアホになってた。中学校時代に戻った気分だった。


 いやー楽しかったね! ベロンベロンに酔っ払っちゃったよ! って一人で言っててもただの変人か。


 同窓会のあと二次会に行くグループと帰るグループに分かれたが、帰るグループの中でも俺だけ電車の乗り換えがあった。特急が止まらないんだよなぁ。

 

 しばらく椅子に座って電車を待った。


 やばい!


 よく考えたらやばい!


 このY駅は会社の最寄り駅の次の駅なので、会社帰りの同僚に会ったらとんでもないことになる! 友達が亡くなったからって言って帰ったのに!


 でもまあいっかー へっへー へっひょえー!


 酔っ払った時の悪い癖だ。全てを楽観的に考えてしまう。


 そろそろ電車が来る時間だ。扉が来るとこで待っていよう。んで乗ったらちょっと寝よ。


 ポツポツと雨が降ってきた。こんな予報無かったのに。なぜかその雨が面白く思えた。


「ひょへっへー! えっへっへっへっへ」

 

 酔っ払うと何もなくても笑ってしまう。まあホームには俺一人だから問題ないが。


 と思ったものの一応周りを確認した。


 うしろに、ゲボがいた。


「おうゲボ! こんな時間に会うなんてな!」


 次第に雨が強くなる。


『間もなく四番線に電車が参ります。通過列車です』


 これじゃなかったか。次か。雨が強くなってきた。早く来て欲しい。そういえばゲボ反応無かったな。絡んでやるか!


「ゲボは家に帰るのか? へっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっー」


 もはや土砂降りだが傘も持ってないし酔っているのでどうでも良くなった。アホの人みたいになった。


「死ね」


 ゲボが俺にそう言った気がした。




 

 

つづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ