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雨のち晴れ

 土砂降りの日はいつもずぶ濡れだ。傘を盗まれるからだ。

 

 土砂降りの日の制服はいつも泥だらけだ。泥水を掛けられるからだ。


 土砂降りの日は、気分が沈む。普段以上に辛く思える。


 僕はいじめを受けている。止む気配も無い。例えいつか止んだとしても、この記憶はいつでも蘇り僕を苦しめるだろう。


 一目惚れしたあの子にもいじめられ、僕が転校してきた時から仲良くしてくれていた彼にもいつからかいじめられ、やつらは仲間を増やし続け、いじめに参加していない者は見て見ぬふり。


 失って初めて気付けばいいんだ。僕を殴ったことを後悔しろ。僕を裏切ったことを後悔しろ。僕の涙を無視したことを後悔しろ。


 そんな独り言を帰りの電車を待ちながら言うのが日課になっていた。でも今日は違う。


「おい坊主、びしょ濡れじゃねぇか」


 そう言って、見知らぬ大人が傘に入れてくれた。世の中には優しい人もいっぱいいる。そんなことは分かってる。でももう無理なんだ。


 間もなく電車が来る。今日は覚悟を決めた。


「お気遣いありがとうございます。ですが、たった今僕に傘は必要なくなりました。⋯⋯ありがとう。さようなら」


 その言葉と共に僕は線路に身を投げた。


 ごめんなさい、お母さん。女手一つで今まで育ててきてくれたのに。


 ごめんなさい、天国のお父さん。僕は天国には行けそうにありません。


 


 幸いなことに、痛みは感じずに逝けた。


 


 と思う。


 痛みは無いけど体が熱い。いや、どちらかと言うと暑い! あっつ! 今三月だろなんだこの暑さ!


 瞼の裏が赤い。目を閉じていても眩しいと感じる。土砂降りのはずなのに。

 顔を腕で覆いながら目を開けると、雲一つない青空と、ギラギラと輝く太陽が見えた。学ランの袖に付いた鼻水のカピカピも太陽に応えるようにギラギラと光っていた。

 

「さっきまで土砂降りだったのに!」


 僕は咄嗟に声を上げていた。


 しかし、周りの人達は気にする様子がない。そして、さっき傘に入れてくれたおっさんが居ない。どこに行ってしまったのだろう。もう電車に乗って行ったのだろうか。


 そもそも僕は電車に飛び込んで死んだはずだ。騒ぎにもなっていなければ電車も止まっていないようだ。


 そうか、分かったぞ。僕は夢を見ていたんだ。疲れていて駅のホームで寝てしまったんだ。


 自殺する夢を見るなんて、僕はよっぽど辛いんだな⋯⋯。


 落ち着いたら、喉が乾いているのに気付いた。カツアゲされるからあんまり学校には持っていけないけど、二百円だけはいつも持ち歩いてるんだ。自販機でコーラ買お。


 自販機の前に見覚えのある男がいた。この人は⋯⋯そうだ! 丸坂丸壱だ! こいつは同じクラスの丸坂丸壱だ!


 丸坂はスーツを着ている。ヒールを履いているわけでもないのにやたら背が高くなっている。どういうことだ?


 しばらく考えたあと、状況を理解した。理解した瞬間驚きすぎて固まってしまった。

 

 こんなことって、あるんだねっ☆

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