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07 おたずね者と彼女

 ギルドへ歩いていると、入り口に人が集まっているのが見えてきた。


 離れたところからながめていると、人だかりというよりはきちんと列ができているのがわかる。先頭がギルドの入り口。

 俺から見て、入り口から手前側に向かって列がのびており、入り口でなにか手続きをした人は列から、はずれていった。

 入り口でなにが行われているんだろう。


 俺は列の横を歩いていって、先頭をのぞいてみることにした。

 近づいてきたら、すこし体を隠しながら前をのぞく。


「よし、入っていい」

 入り口には男が二人いて、ギルドに入ろうとする人を止め、話を聞いているようだった。


「あれは……」

 男たちを見たことがある。

 前に彼女と一緒にいた、わかりやすい男前と、ごつい男前だ。


「お前は、薪割りをしてるところをリリアに見せなかったか? ああ?」

 ごついほうが、乱暴な口調で男にきいている。

 男はすっかりびくびくしていた。


「リリアが男と薪割りをしているところを、見なかったかな?」

 わかりやすいほうが女性にきいている。

 女性はうっとりと聞いていた。


 薪割りをしているところ?

 男と?

 リリア?


 俺は先頭から離れて、すっ、と横道に入った。

 そのまま裏道を抜けて外壁の近くまで到着したころには、速歩きが駆け足になっていった。


 畑が見えるあたりまで来て、やっと息をついた。


 リリアってあの子だから、リリアに薪割りを見せたっていったら俺だろう。

 俺をさがしてる?

 なんで?


 ……そうか、彼らは俺が彼女に、なんていうか、手を出そうとしている、というイメージを持っているんじゃないだろうか。

 彼女と仲間だから、もしくは彼氏彼女の関係だから、俺が近づくのがおもしろくないというわけだ。ありえそうなことだと思えた。

  

 そう考えると、あの男二人がムキになって俺をさがしているということもうなずける。そして、彼らがああいう態度を取れるということは、冒険者の中でも有力者だということも想像できた。


 え、じゃあ、まずいのでは?

 俺がノコノコあそこに出ていったら、ボコボコにされてしまうのでは?


 誤解だ!

 話し合おう!

 人類というのは、言葉という偉大な発明をした!

 それを使って意思の疎通をする、そういう考え方が大切なのではないだろうか!


 とは思った。

 でもいったん帰ります。さよなら。


 だって冒険者って、乱暴な人が多そうじゃないですか?

 結局は話を聞かないで、とりあえずボコボコにしとけばいいか、という判断が下されそうな気がしませんか?

 したら嫌です!

 いったん帰ります!


 おばちゃんにうまく言って、ほとぼりが冷めるまで、なんとか家の中のお手伝いで、居候させてもらう許しをもらおう。そうしよう。



「ただいま帰りました」

 裏口からだけど、いちおう声をかけておく。


「あらグレイちゃん? こっちいらっしゃいよ!」

 テラスの方から予想外に返事がきた。

「はーい?」

 なんだろう。またお茶だろうか。


 カバンだけ部屋の前に置いて、まわりこんで行ってみると。

「あっ」

「おかえりなさい」

 と言うおばちゃんの横には。


「おふぁえり」

 もぐもぐと口を動かす美少女がいた。


「グレイちゃん、このリリアちゃんがね、また来てくれたのよ。やっぱり女の子がいるといいわねえ」

「はあ」

「あらやきもち焼いちゃった? グレイちゃんも大事だからね?」

 おばちゃんがにっこり笑う。


「いえ別に」

「いいのよ、おばちゃんわかってる。男の子もいろいろ微妙なお年ごろだもんね」

 おばちゃんは勝手にどんどん、なにかを察していく。


「グレイちゃんも一緒にお茶しない? あ、これからギルドに行くんだったかしら?」

「今日はギルドには行かないことにしました」

「じゃあ座りなさいよ」

「ええと」


 ここにいて平気だろうか。

 彼女から、情報がもれていたりしないだろうか。

 そう思ったけど、情報がもれているならもう、こっちに来ているだろう。

 よしよし。お茶できる。


「もう、座って座って」

 じれったそうに、立ち上がったおばちゃんは俺を彼女のとなりの席に座らせた。


「ふぉふぉふぉ」

 なにか言った彼女。

 テーブルには、パンよりもずっとふわふわの、あまい焼き菓子がならんでいた。


「ふぉっふぉふぁっふぇ」

「食べてからでいいから」

 彼女がうなずく。


 ふぉっふぉふぁっふぇって、ちょっとまって、って言ったのかな。


 待っていたら、またリリアが焼き菓子を口に入れた。

「あっ」

「ふぁっ」

 彼女は俺を見て、目を大きく開けた。


 無意識か?

 無意識に食べたのか?

『口がいっぱいで話ができなかったから飲み込もうとしていたのに、いざ飲み込んだら、おいしそうなものが目の前にあったらまた口に入れてしまう症候群』なのか?

 食欲ってそんなに理性を上回るのか?

 

「ふぉふぇん」

 彼女が言った。

 ごめん、かな。

 そんなの翻訳できるようになってどうするんだという。

 俺は、彼女が口いっぱいにほおばって、味わって食べ終わるのを待っていた。


「……あら? くろちゃん、どうしたの?」

 そんなとき、くろちゃんさんが、そっとおばちゃんの近くに現れていた。


「お客様がいらしています」

「あら。でも、いまはこの子たちとお話してるから、またあとでいいかしら?」

「それが、リリア様の関係者だと」

「あら。どうしたのかしら」

「あ」

 そう言うと、彼女がお茶をぐいっと飲んだ。


「それ、私が呼んだんです」

「リリアちゃんが?」

「はい。この人をさがしてるみたいだったので」

 彼女は俺を手のひらで示した。


 えっ。

 まさか、えっ。


 えっ。

 えっ。

 

「いつ呼んだの?」

 おばちゃんが言う。

「さっきです」

「どうやって?」

「こう……、魔力ですね!」

 彼女は立てた人さし指を空に向けて、なにか出しているみたいな格好をする。


「あらすごいのね」

 おばちゃんはあっさり言った。

 それでわかるの?

 そのポーズ、一回もやってなかったよね?


 そうこうしている間に、くろちゃんさんに案内されて、わかりやすい男前と、がっしりした男前がやってきた。


 俺をにらみつけてくる二人の男。


「お前か」


 ボコか?

 ボコのボコが始まるのか?


 ……どうしてもやりたいというのなら仕方ない。

 だがな!

 絶対に痛くないようにしてくれよ!

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