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17 彼女と講習会

「みなさん、今日はよくお集まりいただき、ありがとうございます。今日は、先日起きました、魔鳥の爪を盗み出した冒険者、についてのお話をしようと思います」


 高そうな鎧を身に着けた男は言った。


 今日は、町の広場に来ていた。


 ギルド以外にも張り紙がしてあったし、受付でも説明を受けた。

 この町で冒険者として活動している人たちがみんな来ているらしい。百人以上はいる。


 みんなが芝生に座っていた。


 俺は、一番うしろのところにいた。前の方はこわい顔の人がたくさんいるからである。


「わたしの名前は、ガードンといいます。ふだんは王都で騎士をしています」

 ガードンという男が言うと、ちょっとざわざわした。


 王都で騎士といったらかなりのエリートだ。

 高そうな鎧じゃなくて、高い鎧にちがいない。すごそうだ。


 オレ様がお前らみたいな冒険者に話をしてやってるんだから、ありがたく聞けよ、みたいな印象もない。ちょっと、エリートに対する印象がまちがってたのかもしれないと思わされた。

 でもちょっと、エリートなんて、やっぱり裏では悪いことをしたり、酒場でオレはエリートなんだぜ、ってナンパしてるかもしれないとは思っている。ちょっと。



「魔鳥の爪は、高価で取引されるものではありますが、魔鳥が放棄した巣から取ることが定められています。なぜかといえば、今回のように町に混乱が起きるからです。しかし、今回、きちんとした対応が取られませんでした」


 そういう決まりがあるのか。


「爪を取った冒険者から聞き取りを行いましたが、そのとき明らかになったのは、なんと、本人は、決まりから外れた行為をした、という意識がなかったのです」


 おっと。俺もないぞ。


「悪意を持って行う人間。大きな問題です。ですが、悪意がなくて行ってしまうというのは、またちがう意味で、大きな問題です。ある意味もっと大きな問題かもしれません」


 やばい。

 どうせ冒険なんかしないし、って思ってるから俺もちゃんとそういうの調べてなかった。


「今回のことをきっかけに、すべての決まりについて、各人で調べ直していただきたい。ただ、より注意すべき事柄については、今日はこれから、ここでおさらいしておきたいと思います。よろしくおねがいします」


 ガードンさんが頭を下げると、自然に拍手が起きた。


 難しい言い方もしないし、えらそうじゃないし、聞きやすそうでほっとした。


 できればこのまま、調べ直す手間をかけずにすむような感じで、全部ガードンさんにおさらいしてほしいくらいだ。


「もしかしたら、みなさんの中には、このままわたしにすべておさらいしてほしい、と考えている人もいるかもしれませんが、それはいけませんよ?」

 ガードンさんがにっこり笑うと、冒険者たちに笑い声が起きた。


 めちゃくちゃ見抜かれてる。

 そういう人が笑ったんじゃないかと思う。

 俺である。



「ちゃんと調べなきゃだめだよ?」

「ひっ」


 誰だ俺の本心を言い当てたのは。

 うしろには彼女がいた。


 俺の横に座る。


「し、調べるよ」

「本当にい?」

 にい? で彼女はちょっと眉毛を上げた。


「そっちこそ、遅刻だよ」

「たしかに」

 彼女は笑いながら、タオルを頭にかけた。


「つかれた……」

「なにかあった?」

「お兄ちゃんたちと魔物を倒しに行ってたら、遅れた」

「そうなんだ」

「うん……」


 そう言ったきり、彼女は静かになってしまった。


 なにかあったんだろうか。

 でも、詳しい話をされてもよくわからないし。

 いや!

 そういうときの女は、よくわからなくても聞いてもらいたがってるんだ、と食堂で力説している男たちがいた!

 俺と同じようにあんまりモテなさそうだったけど、言ってた!


 よし!


 絶対ふれたらいけない話、っぽかったらすぐやめよう。 

 うん。


「えっと、さ……」

 と俺が言いかけたら。


「わっ」

 肩にどん、となにかがぶつかった。


 いやもたれかかっていた。彼女が。


「……」

「ど、どうかした……?」

「……すー」

「え?」


 そうっ、とタオルを上げると、彼女は目を閉じていた。


 俺はそっとタオルをもどし、他の人から顔が見えないようしっかり整えた。


 俺は壁になるのだ。


 壁だ!

 むん!


 彼女の体温は伝わってきたけど、ガードンさんの話はまったく頭に入らなかった。

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