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女装令嬢の日常  作者: マルコ
女装令嬢の新生活
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【エイプリルフール番外編】ステータスが見える私のルームメイトが男の娘な件

 (ワタクシ)はルシアナ・オライト。

 オライト家の3女。


 そう、5大公爵家の娘です。


 いえ、かしこまる必要はございません。

 家督は弟が継ぎますし、私自身は婚約者も決まらぬ身。


 え? こんなに美人なのに?


 ふふふ、お上手ですこと。


 でも、ありがとうございます。


 あら、どうしまして?

 もしかして、公爵令嬢といえば、ワガママで、傲慢で、自信過剰だとでも思っていましたか?


 あはは、良いのですよ。本当の事ですから。

 実のお姉様も私も、今思えば酷いものでしたわ。……いえ、今でもそうですわね。


 ……私は、そうですね。違うと言えれば良いのですけれども……まだワガママで強引なところがありますわ。反省しなければなりませんね。


 私がこうしてまがりなりにも変われたのは、お姉様のおかげですの。


 お姉様といっても、実のお姉様ではなくて、寮のお姉様。

 ルームメイトと言った方が、世間では通りが良いでしょうね。


 ええ、この寮では2年生が同室の1年生を教え導く習慣がありまして、2年生を親しみと敬意を込めて「お姉様」とお呼びする習わしですの。


 私のお姉様、実は庶民ですの。

 それでも私がお姉さまをお慕いしているのは、その優秀さに惹かれる部分もあるのですが、入寮初日に優しさに触れたということが大きいかもしれませんね。

 詳しくは恥ずかしいので秘密ですけれど、今でもあのぬくもりを鮮明に思い出すことができますわ。


 お姉さまはとても優秀だった事は、先ほども言ったのですけれども、その秘密を教えていただいたことがあります。


 なんとお姉さまは、テンセイシャと言うものらしいのです。


 なんでも、この世界とは違う世界で生きていた記憶があるらしく、年齢にそぐわない知識や記憶を持っているので、良い成績を残すことができるというのです。

 ですから、お姉さまはいくら褒めても「チートなのよ」と言って謙遜されていました。


 チートというものは私にはよくわかりませんけれども、お姉さまはご自分の知識を誇るような事はありませんでした。この世界には多分、たくさんのテンセイシャがいる。自分はそのひとりに過ぎないと。


 思えばそのような謙虚なお人柄にも惹かれていたのでしょうね。


 そんなお姉さまに、私は自分の秘密を打ち明けました。


 ヒトの名前や、性別、能力、そして私に対する反応を見ることができるのです。

 貴族としてたくさんの人とお会いすることがございますので、お相手の名前を確認できると言う事は、とても便利でよく使っております。

 それに、私に対する反応を見れるというのも大きいですわね。


 ああ、反応というのは、友好的か、中立か、敵対的かといったことがわかりますの。

 おかげで、口先だけ友好的に接してくるような相手とは距離を取れますし、表面上はキツく当たってくる相手の言う事でも良く聞けるようになりました。


 その秘密を伝えた時、お姉様は「テンセイシャの私より妹の方がチートなんだけど」とおっしゃっていましたっけ。

 やっぱり、チートというのはよくわかりません。こういった特殊な能力のことを言うのでしょうか?

 お姉様は、この見えるものを「ステータス」と呼び、能力そのものを「ステータスオープン」と呼んでいました。

 自分の能力ではありますが、こんなよく分からないようなモノでも名前を知っているなんて、流石お姉様です。



 そのお姉様が卒業してしまい、新入生が入ってくるという事で、お名前を聞いたらなんと、同じ5大公爵家のクアマリン家のご令嬢ということでした。

 クアマリン家とはあまりお付き合いがないとはいえ、跡取りのご子息以外にご令嬢がいらっしゃるとは知りませんでしたので、実は最初は5大公爵を騙る偽物かと思っておりました。


 そこで、早速ステータスオープンを使ってみたのですが、驚きました。

 いえ、クアマリン家の者だと言うことに嘘はありませんでした。第1子という事も事実なのでしょう。


 でも、男の方でした。

 何故か、女装されていたのです。


 最初は、なんの冗談かと思いましたが、どうやら女の子として育てられている様子。でも、本人は男だと自覚している様子でした。

 コレは、アレですね。お姉様から教えていただいた、男の()というものですね。

 恥じらう姿がモエ。なのだとか。


 確かに、落ち着かないような様子を見ていると、心の奥底から、なんとも言えない感情が湧き上がってきます。


 お姉様、コレがモエなのでしょうか?


 言葉じゃない。感じろ。とおっしゃっていましたが、コレがモエなのだとしたら、確かに言葉にできるものではございませんわ。


 その子……エレンは不安になっているようでした。ですから、ベットをくっつけて、一緒に寝てしまいました。


 ふふ、寮で殿方と同衾するなど、想像もしていませんでしたわ。

 でも、エレンは見た目も態度も本当に可愛らしい女の子で、我が能力ながら本当に男なのか疑ったくらいです。

 なので寝ている間に確かめてみたのです。


 いえ、直接見る勇気はなかったので、触っただけですが……

 その、ちゃんとありました。


 その翌日には、街の散策をすることになったのですが、エレンたら、なんとブラをしていませんでしたの。


 そう。ブラジャー。


 え? 男なら当然?


 とんでもない!

 お姉様がおっしゃっていました。


 男の娘は、ブラとショーツを身につけてこそ、男の娘だと。


 その話を聞いた時は理解できませんでしたが、今なら分かります。

 男の娘はブラをしてこそ完成するのだと。


 ええ、何だかんだと理由をつけて納得させました。



 そんなこんなで、今こうして行きつけの下着屋にエレンを連れてきたのですが、あの子ったらやらかしてしまったんです。

 カーテンの閉まった試着室を開けてしまって……


 ああ、出てきたみたいね。ちゃんと謝らないと……


「連れが悪いことしたわ。ごめんなさいね」

「いえ、大丈夫ですから」


 ああ、良い娘ね。

 それに、エレンに負けず劣らず可愛い。


「あら?」 


 思わず声が出てしまいます。


「貴女、どこかで会ったかしら?」


 そう。この子とはどこかで会った事がある気がするのです。


「え? ……あ、オライトの……」

「ああ、やっぱり会ったことがあるのね。ごめんなさい。お名前を思い出せなくて……」


 でも、こんなに近くではなくて、もっと遠目に見たような……?


「ああ、いえ! 私が一方的に知っているだけです。ほら、公爵家の方は有名ですし!」


 こういう時にこそ、「ステータス」を見るべきですわね。


 ──!


「あ、店員さん。コレいただきます! お会計を!」

「え? あ、はい」


 驚いている間に、彼女は店を出て行ってしまいました。


「あの、お姉様、このキャミ、引っかかって着れないんですけど……」

「ああ、ソレはね……」


 エレンに説明をしながらも、私は先程見たものについて考えていました。


 なるほど、今まではステータスが見えるほど近付いてもいませんでしたし、そもそも見ようとも思いませんでしたね。


「お姉様、何か?」

「ああ、いえ、似合っていてよ」

「あ、ありがとう、ございます」


 恥じらって赤くなるエレンを見ながら、私は思う。


 お姉様が居なくなっても、楽しい学園生活が送れそうだ──と。


以上、エイプリルフール番外編でした。


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