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女装令嬢の日常  作者: マルコ
女装令嬢の戦闘実習

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16/42

2-3

ブクマ・誤字報告感謝です。

 王立学園の実技というと、大きく分けて戦闘実技とダンスに分けられる。

 そのうち戦闘実技は通常のクラス別に授業を行うのではなく、その実力毎に組を分けられ、編成は習熟度に応じて随時変更される。

 無用な軋轢を生まぬためにも1年と2年が混在するような組が作られることは無いが、2年より実力のある1年の組というものもある。そして、戦闘実技の時間は1、2年一斉に行われる。


 だからといって、更衣室も全員同じではない。

 何せ、600人……男女別でもそれぞれ300人居るのだ。それほど広い部屋は無い。それに、ダンスなどクラス毎に着替える事もある。

 なので、ひとクラス毎、男女別に更衣室は割り当てられる。


(──大丈夫。下着まで。全部脱ぐわけじゃない)


 割り当てられた更衣室の中。ひとり覚悟を決めるエレン。

 女子更衣室という桃源郷といえど、エレンにとっては男だとバレるかも知れない試練の場でしかない。


 こういう場では、王族が羨ましくなるエレン。王位継承権5位までは、寮の部屋だけでなく、着替えの場も個室が与えられると聞いたからだ。

 どうやら暗殺を警戒しての処置らしい。

 確かに、着替えの時は防御魔法のかかった装備も脱ぐのだから、それなりに警戒はしなくてはならないだろう。


 ……だったら、自分だって5大公爵家と呼ばれる名家なのだ。優遇してくれても良いではないか。


 エレンもそんな風に思いはするが、下手な事を言って正体がバレては元も子もない。聞けば、ルシアナも個室ではなく大部屋で着替えているとの事なので、自分だけ我儘は通らないだろう。


 そして、先ほどから観察(・・)している限り、皆下着までは脱いでいない。


(──大丈夫。()()()()()()()()()()()()()()())


 そうして、着ている服を脱いでいく。


「まぁ!」


 脱いで下着姿になった所で、そんな声が上がった。

 その声の方を見ると、何人かの少女がエレンを見ていた。

 もしや、バレたか?

 そんな予感とともに、エレンは何事かと問いかける。


「ひゃっ、あの、ご、ごめんなシャイ。その、ステキな下着だったもので……」

「下着……?」


 そういえば、ここ数日はルシアナに選んでもらった下着を身につけているエレン。

 なるほど、確かにこうして見られる訳だと、実地でも体験した形になった。


 ふとみると、先ほど声を上げた少女たちは未だ脅えの色を見せている。

 元々顔が怖いと言われるエレンだ。しかも、先日は悪人顔とまで呼ばれた。そんなエレンが男だとバレたと錯覚して睨んでしまったのだ。脅えるのも仕方がないだろう。


「ああ、ごめんなさいね。ノゾキが出たと勘違いしてしまって……」


 エレンは努めて明るく語りかけた。

 ちなみに、ノゾキどころか女子更衣室に侵入しているフトドキモノがいる事は、この際考えてはいけない。

 何とか絞り出した笑顔が功をそうしたのか、少女たちの方も落ち着いたようだ。


「あの、それで……そのお召し物はどちらで……?」


 落ち着いた所で少女のひとりが問いかけてきた。

 たしか、伯爵家の娘だった筈だ。

 エレンは先日行った店の名と場所を告げる。

 どうやら、それなりに有名な店だったらしく、ひとりがその店を知っていた。


「私も行った事がありますが、これほど素敵な下着もあったのですね。エレン様はセンスもよろしいのですね!」


 その声音から、お世辞ではなく本音で言っていると感じたエレンは、気分が良くなっていった。


(──ここは変に隠すよりは、見せた方が自然かしら?)


 そんな考えと共に軽く一回転して下着をクラスメイトに見せる。


「褒めていただいて嬉しいわ。でも、コレはお姉様に選んでいただいたの」

「お姉様……?」

「ルシアナ・オライト様よ。私、寮で同室ですの」


 そんな風に告げると、更衣室に黄色い声が上がる。


「あの、では、 氷の貴公子(イーチェ)様とは……?」


 期待する様な眼差しが集まるが、エレンは正直に答える。


「残念ながら、未だお友達にもなれていませんの。()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 その言葉に、再び黄色い声が上がる。

 だが、双方でその言葉の意味が微妙に違っている事には気が付いていない。


「ああ、あまり時間をかけてもいけませんわ。皆さん、早く着替えましょう」


 そんな風に話を締めくくり、着替えを手に取るエレン。


(──っ!)


 エレンは今の瞬間まで忘れていたが、今日から実技の時はルシアナから貰った──押し付けられたともいう──下着の様な運動着を身につけなければならないのだ。

 ちらりと周りを見ると、皆エレンの言葉通りに着替えを再開している。発言者の自分が遅れるわけにはいかない。

 ……しかしながら、皆が平民の仕事着や戦闘実習なので軽鎧を身につける中で、下着同然の格好をするのは、中々に勇気が必要だ。

 しかし、コレはルシアナからの命であり、軽々しく「何でもする」などという約束をしてしまった自分への罰なのだ。

 基本的に真面目なエレンは覚悟を決めてその衣装を身にまとい、外に向かう。


「え、エレン様!? そのままお出になるのですか……!?」


 更衣室から出る直前、クラスメイトの驚きの声が上がる。

 それはそうだろう。エレン自身も昨日はこの上に何かしら身につける下着だと思ったのだ。

 だが、エレンの耳は聞き逃さなかった。


「イマドキブルマとか……」


 そんな呟きを発した娘がいたことを。

 残念ながら、誰が言ったのかまでは特定できなかったが、この衣装が古いものではあるが、ちゃんとした運動着であるという確信が持てたのだ。


「ご心配なく。コレはこういうモノですのよ」


 そう言って胸を張り、堂々と更衣室を出た。


嬉し恥ずかしお着替え&下着見せシーン(ただし男)でした。

次回13日です

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