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新たなスタート

頭がガンガンする。体がミシミシと痛む。ぼんやりとしていて思考がままならない。

さっきまでの事を思い出そうとするが、はっきりと思い出せない。何だか悪い夢か何かを見ていたみたいだ。

そう思い、ベッドから身を起こそうとした…が、そこにベッドはなかった。

どこだか分からない石畳の上に転がっていた。

急いで周りを見渡してみた。人が慌ただしく歩いている。しかし、何だか様子がおかしい。

まず服だ。周りは皆、なんちゃらクエストの村人や商人のような服装をしている。ポリエステルとかの概念がなさそうな、旧時代的な格好だ。

俺の服装は何故かスーツ。さっきまで眠っていたはずなのになぜ。そんな疑問はさておき、明らかに悪目立ちをしている。

街並みも明らかに近代的な匂いが感じられない。良く言って発展途上国の中規模の町くらいの家々が建ち並んでいる。

しかし、どうしたらいいのか、何も当てはない。ゲームならば、こういうときはまずは酒場にでも行って情報収集をするのだが…。

「よお、そこのイカした格好の兄ちゃん。そんなところで立ち止まって、何かお困りかい。」

身の丈が俺のふたまわりは大きいであろう屈強な男が声をかけてきた。その男は背中に体に見合った斧を背負っており、どう考えても俺がかないそうもなさそうであった。

そんな相手の機嫌を損ねたらどうなるか、俺は恐る恐る返答した。

「大丈夫です。お気遣いありがとうございます。この街に来たばかりで少し不慣れなだけですので。」

「奇遇だな。俺も今日この町に来たばかりだ。同じ冒険者として、そこらで一杯やらないか。もちろん、俺の奢りだ。」

俺が言葉に詰まっていると、男は沈黙を了承と解釈したのか、俺の肩に手をやり近くの酒場まで連れだった。

俺はこの男がどういう狙いなのか分からずらビクビクしながらついてくことしかできなかった。


店に着くと男は酒を二人分頼みつつ、こう切り出した。

「まずは自己紹介からしとかねえとな。俺の名前はバータル。元アルタン王国の兵士だ。今は冒険者をやっている。昨日、この町、ツェツェグに来たばかりだ。歳は二十九歳、独身だ。趣味は相棒の整備ってところかな。」

そう言いながら男は、机にもたれかけさせた長斧を愉快そうに撫でた。

相手が自己紹介をしたのであれば、こちらも答えなければ気が済まないのが、会社員時代に染み付いた癖というもの。

ついつい、名刺がないかポケットを探りながら、場をつなぐために言葉を発した。

「私の名前は神田祭と申します。まだこちらに来たばかりで分からぬことも多々ありますが、どうぞよろしくお願いします。」

「おいおい、兄ちゃんそれだけかよ。緊張してんのか。もうちょっと何かあるだろう。どこから来たとか、何をやってるかとか。」

ひとまず当たり障りのないことを言ってみたが、男からツッコミが入ってしまった。しかし、その後なんて言ったものか…。目が覚めたら違う世界にいましたなんて言っても信じてもらえるわけがない。目の前のデカイが気の良さそうな男の素性も分かったものではない。

あれやこれやと逡巡しているうちに、手にあの感触がした。そう、あの感触だ。俺をこんな目に合わせた元凶。あのハガキがまだ内ポケットの中に入っていたのだ。

俺は恐る恐る取り出した。

「田中太郎様 第一の実験が開始されました。アルタン王国の危機を救うのがクリアの条件です。実験に先立ちまして、物資を3点支給しました。これらを活用しクリアを目指してください。田中太郎様への物資は下記のとおりです。

1.スーツ

身体能力向上。言語自動翻訳。

2.目薬

リミッター解除。

3.支度金

以上」

なんの冗談だろうか。これでは、まるでゲームのクエストだ。

急に手紙を取り出した俺を不審がったのか、男が声をかけてきた。

「兄ちゃん、その紙はなんだ。見たこともない文字か絵が書いてるみたいだが。その珍名な格好といい、いったいどこから来たんだ。」

「先ほど頭を打ったのか、少し記憶が混乱しているみたいで、ここがどこだか分かりませんので答えようがありませんが、ずっと遠い国からやって来ました。この服は祖国の制服みたいなものです。もしも、宜しければこの国のことを色々教えてくれませんか。何か思い出すかもしれませんので。」

手紙を完全に信じたわけでもないが、どうやらこの男と言葉が通じているのも、今着ているスーツのおかげと言うのは実感できた。店の中にある見慣れないはずの字も、俺は難なく読むことができたが、男は俺の手紙を読むことができなかった。

とりあえず、他に手がかりもないので、手紙にも書いていたアルタン王国軍出身というこの男から色々聞き出すことにした。


この選択が一つの転機となった。

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