第1話「日常の終幕」
初作品です!
許して
毎朝6時半に起床し、窓から見える神社にお祈りをする、それが七津未結の日課だ、
と言ってもなんと無くで始めた物が欠かせなくなってしまっただけで、良い一日になるようお願いするだけ、俗にいう験担ぎのような物だ。
日課を終えてからは、水玉模様の寝間着から制服へ着替え、肩まである黒髪を後ろで結って、リビングへ赴く
「おはよう未結、早いわね〜」
七津未菜、未結の母親、父が事故で死んでしまった3年前、この翠木町に引っ越して来て、それからはずっと2人で暮らしている。
朝食は調理済みだったようで、たった今配膳が完了したようだ
「うん、早起きするのって気持ちがいいから」
「去年までは毎朝遅刻ギリッギリで大変だったのに、人って成長するのね」
両手を組み頷く美菜
「えへへ...ご迷惑をおかけしました...」
「自覚があるなら良しとするか、さっごはん食べちゃいましょ」
「はーい、いっただきまーす!」
母と2人きりの食卓、たわいない話で盛り上がる、母の愚痴を聴くのも彼女の日課だ。
「ふ〜ごちそうさまでした、じゃあ私行くね」
「行ってらしゃい、背中ブスッとされないよう気を付けなさいよ〜」
「お母さん、発想が怖いよ...」
朝食が終わると未結は直ぐさま家を出る、学校に向かうには少し早いが、彼女には寄りたい場所があった。
「おはよう、サブロー今日もモフモフだね!」
学校に行く道中にある神社、この場所が最初の目的地。
そこに住み着く猫と戯れるのが、彼女の原動力になっている、実はこれが理由で早起きを始めた、
母の苦労は一匹の猫によって救われたのだ。
「ん〜このポテポテしたお腹、癒されるよ〜」
猫、もといサブローは、スフィンクスのような体制で、彼女の慈愛を受け止める。
「あっもう行く時間だ、ここに居るとあっという間に時間が過ぎちゃうなぁ...じゃあねサブロー明日も来るよ」
ミャーと鳴き、未結の手を舐めた、これは来ても良いと言うサブローなりの合図なのだ、実際には定かではないが、少なくとも未結の中ではそうだった。
毎朝の充電が終わると、駆け足で学校に向かう、
神社から数分で着くというのは、時間を忘れて遊んでしまう彼女にとって、喜ばしい事だった。
ーー翠木中学校
それが未結の通う学校、2年ほど前、彼女の入学直前に建て変えられた校舎は、以前綺麗で美しい。
未結が上履きに履き替えていると、1人の少女に話しかけられた。
「おはようみっちゃん、今日も元気そうだね」
「ゆっみーおはよう!元気元気!MAXエネルギーだよ!」
未結のクラスメイトであり、親友でもある湯城祐美、仲良くなる前は、未結の元気さに押されていた祐美だったが、今ではそれが心地よい
「ふふ、みっちゃんのエネルギー切れ、見た事ないや、」
「切れない用に充電してるんだよ、今日も寄ってから来たんだ〜」
「国祀神社でしょ?...私あそこ苦手なんだよね...なんか嫌な感じがする」
「そうかな?小さい時から行ってるからよく分からないや」
「小さい時?」
「うん、幼稚園ぐらいかな?おばあちゃんと一緒に行って、境内の掃除とかしてた、最近はサブローに会いに行くだけだけど」
「へぇ偉いねみっちゃん」
などと言ってる間に、教室だ、扉に手を掛けようとすると、背後から担任に話しかけられた。
「おはよう七津さん、湯城さん、....大事な話があるから直ぐ席に着いてもらえる?」
「「はーい」」
しっかりとした返事で答え、窓際の席に着く。
「みんなおはよう、....突然でごめんね、この学校は今から、避難所になります、教室から出ないようにして下さい」
「避難所?地震でも来るんですか?」
クラスメイトの1人が皆の疑問を問いかける。
「実は私もよく分かってないの...ついさっき防衛省なら連絡があって、校内放送と担任の先生から、みんなにそう伝えてくれって...」
担任がそう言い終えると、丁度放送が入った、内容は変わらず避難所になる事、教室から出ず動かない事、2回程繰り返して途絶えた
「...お母さん大丈夫かな」
「大丈夫大丈夫!みっちゃんのお母さんなら...!みっちゃん外見て!」
未結が外を見ると、勢いよく手を振る母がいた。
「おー!って...お母さん必死になり過ぎだよ〜そんなテンション上げなくていいのに」
必死の形相で未結に何かを訴えかける母、常に冷静な母にしては異常な行動だった。
「...ねぇみっちゃん...あれ手を振ってるってより手招き見たいじゃない...?こっち来いって言ってるみたい」
「....窓開けてみる」
未結が窓を開け、母に向けて手を振った
「おーいー!お母さんー!どうしたのー!!」
『逃げろ未結!!早く!!』
「...逃げろって...でも動いちゃ駄目なんじゃ」
【《ーーーーーー!》】
「...っ...何この声..!」
謎の叫び声、それを聞いた者たちは様々な苦しみを浮かべ倒れ込む、異質な力が学校全てを包み込んだ。
「...みっ...ちゃん!何っ...これっ..」
「わっ...かんない!...うぐぅ...お母..さん」
「未結!!」
一瞬、天より現れた巨大な口によって、翠木中学校は、そこに在った全ての生命は、
神によって失くされた。