他人からの高評価を重要視しない場合の著作の私的意義
脳内の抽象的な世界が具体により近づいたとき、表面張力を保ったまま記憶を並べ立てることを試みる
溢れんばかりの空想を湛えた海馬はその重さに耐えかねてはき出す世界を見つめているのはなんのためか
執着心は悪との考えに納得する理性と聞く耳持たぬ本能の狭間に無意識は苦しめられ
身体は無駄と判断したエネルギーの消費先を閉じる
好奇心は追求を求め、より具体性のある空想を発見するとここぞとばかりに追いかける
好奇心の置き土産、こぼれさせては勿体ないとばかりに必死になるのをどこか遠くで嘲笑する自分がいたように感じる
抽象を具体の代名詞とでもいえるような記号の文字列に変換するお前はなにに追われているのか
慣れ切った規則を当たり前のように使いこなして注ぐ器は無尽蔵
根拠もなく、しかし確実に予期していた心地良さに浸りひたりほどけていく空想の荒波も静まり返り
エネルギーの奔流に押し出されるように現された文体にどうやって続けようか喜んで頭を悩ませる
あてもなくひた走り、それでも決まったルートを流れていくように感じるのは波のおかげか錯覚か
終点が見えるような終焉のない球体を時には春の草原、時には肌の焼けるような活火山帯、時には立ち止まりたくなるようなノスタルジックな銀世界を駆け抜けて
減速しながらぴたりと終わりにたどり着くものもあり、一気に完走を意味する帯を切りその後もゆっくり走りながら余韻を楽しむものも、そもそもたどり着かないものもある
そうして長く短い具現の旅は目標を無くす
それでもまた、この高ぶりを味わうために無意味で素晴らしい目標を見つけるのだろう
私の唯一の世界より文学へ愛をこめて