誰が為に人は動く 1-6
6
悪魔は人間より戦闘力がはるかに高い。巨体から放たれる拳や蹴りもそうだが、豪腕を使い大剣や斧を振られては並みの防御では歯が立たないどころか話にならないのは明確である。
そんな事実の下、この世界は動いている。
はずなのだが…
とある樹海で13体ほどの悪魔に囲まれていた1人の人間はいつの間にか9体の悪魔を殺し、4体の悪魔に囲まれている1人の人間になっていた。
その常識を覆している少年、レオナルド・カイは無傷で疲れた様子もなくゆっくり自分についた返り血をぬぐっていた。その手で殺した1体の悪魔に腰を掛けて。
周りにはまだ4体の悪魔が戦闘態勢でいるのだが…
「ふいー。あと4体ねぇ。早くしないと舞に怒られるかな…。」
と言いながら血をぬぐい終わると
「次はどいつ?すぐ終わらせよう。」
と、簡単に言ってしまう。
相手、つまり悪魔のリーダーはもはや挑発ではなく警告だと感じていた。ありえない現状を見ればしょうがないことなのだが。
「気をつけろ!!来るぞ!!互いが互いをサポートする形で対処するんだ!!」
というのに対してカイは
「はぁ~。さっきの馬鹿どものように突っ込んできてくれないのか。じゃあ、こっちからいかないとだめだね。」
と残念がって言うとカイはその重い腰を上げた。そして目つきを変え終焉を告げる。
「覚悟しろ。人間の強さを甘く見たお前らの負けだ。」
そこからは早かった。気が付けばリーダー以外の三体の悪魔を殺し、そのリーダーを地に伏せさせて、カイはそれに馬乗りになり頭に銃を突きつけいつでも殺せる状態を作り上げていた。
「なんか言い残すことは?」
「じゃあ、お前にとっていいニュースを教えてやる。さっきも言ったが第二増援部隊がここに駆け付けるだろう。20くらいだけどな。」
カイはめんどくさそうにため息をつきながら
「ありがたいが、バッドニュースだよ。仕事が増えた。」
悪魔は血を吐きながら
「ははっ…お前がそんなので死ぬわけ…ないか…最後に一つ。ここまで常識を覆したお前は何者なんだ…?」
「……俺は…誰も守れない、不完全な最強だよ。」
「…」
最後に悪魔は何かを悟ったように
「お前はきっと強くなる。悪魔なんて目じゃない化け物に…」
といった。するとカイは
「ありがとよ」
と一言だけ言ってその引き金を引いた。その後カイは黙祷を捧げその場を立ち去った。
響いていた銃声が収まり、樹海はいつもの静けさを取り戻した。
その後、別の場所で応援に駆け付けた悪魔達をカイは目の前にしていた。
また悪魔に囲まれたカイはとある印を組み、今度は顔くらいの黒い球状を取り出し放り投げた。間髪を入れずに火を放出したあの銃を二丁呼び出し、実弾銃を印を組んで元の場所へ転送した。先の戦いとは違って、今度は黄色の試験管を両方の銃をセットした。そしてその一つを黒い球へ、その一つを地に向けた。
カイは引き金をひく。
ズバチィというようなすさまじい放電音と共に目の前の世界が閃光に包まれる。
そしてまた、この森には静寂が訪れる。